私たちはあなたの名誉を回復させるのです!あの卑劣なコラルトの仮面を剥いでやりましょう。ヴァロルセイをやっつけましょう、もし彼が本当にあなたを陥れたおぞましい事件の首謀者ならば。
「なんですって! 彼と話した後でもまだ疑いを持っておられるのですか!」
男爵は首を振った。
「ヴァロルセイが破産状態であることは」と彼は答えた。「疑いの余地はありません。彼に十万フランを貸したとすればそれは返ってこないと賭けてもいい。指弾されているように、彼が自分の持ち馬以外に賭けて、自分の馬が勝たないように命じたということは断言してもいい」
「よく分かっていらっしゃるじゃありませんか……」
「ええ、ですがちょっと待ってください……あなたの非難と彼の言葉の間には大きな食い違いがあります。彼はマルグリット嬢のことなどどうでもいいと思っている、とあなたは仰いますが、彼は彼女を崇拝していると言う……」
「ええ、男爵、あの男は卑劣にもそう断言しました! ああ、自分の復讐が台無しになる心配さえなかったら僕は……」
「あなたの気持ちは分かります。しかし最後まで言わせてください。あなたは、マルグリット嬢には何百万という財産があると言う。ところが彼が言うには、彼女には十万フランの持参金もないと。どちらが正しいのですか? 私には彼が正しいように思えます。彼が十万フランを借してほしいと言ってきたことがその証拠です。それに、明日にもばれるような嘘をわざわざ今日言い立てには来ないでしょうから。つまり、もし彼の言っていることが本当なら、彼の結婚とあなたを陥れた奸計を彼の金銭欲で説明するのは不可能です」
この辻褄の合わなさは既にパスカルの頭にも浮かんでいた。が、だからといって彼を圧し止めることはなかった。彼は考え込み、彼にはもっともらしいと思える説明をひねり出した。
「コラルト氏とヴァロルセイ氏が僕を陥れる計画を立てたとき、ド・シャルース氏はまだ死んではいなかったのではないですか」と彼は言った。「つまり、マルグリット嬢はまだ何百万という財産を持っていた」
「それもひとつの答えですね……その企みが成った翌日、二人の共犯者たちは自分たちのしたことは無駄であったと知ることになる……あなたの考えを辿るとこうなります……ですが、それでも侯爵が固執したのは何故ですか?」
パスカルはその答えを探したが見つからず、黙っていた。10.8