「ああ、それが分かれば!」
「最初に浮かぶのは復讐、ということではありませんか? 私の場合はそうでした。しかし、誰に復讐するのか? ド・シャルース伯爵? 彼は死にました。私の妻に? そうすべきかもしれませんが、私にはその勇気がない。残るはマルグリット嬢だ……」
「しかし彼女に罪はありません。男爵、彼女があなたに対しどんな悪いことをしたというのですか!」
この叫びは男爵の耳に届かないようであった。
「どうすればいいかだ」彼は言葉を続けていた。「マルグリット嬢に生涯最も惨めな人生を送らせるために何をすべきか……侯爵と結婚させるだけでいい……そうすれば自分が生まれたことの罪を残酷に贖わせることになる……」
「でも、あなたはそんなことはしないのです!」とパスカルは我を忘れて叫んだ。「それは最も恥ずべき行いです。僕が許しません。決して、決して、神に誓って言いますが、僕の生きている限り、ヴァロルセイはマルグリットを妻にすることはありません。僕が申し込む決闘で僕が命を落とすことはあるかもしれません。彼がマルグリットを教会まで引き摺って行くことはできるかもしれませんが、そこに僕がいます、武器を持って。僕が正義を行います。その後僕のことはどうにでもすればいいでしょう!」
男爵は尋常でなく心を動かされ、彼をじっと見ていた。
「ああ! あなたは人を愛することのできる方だ!」
それから、呟くように付け加えた。
「かつて私も、マルグリットの母親を同じように愛していたものだ!」
朝食はまだ片づけられておらず、テーブルの上に水の入ったピッチャーが置かれたままになっていた。男爵は大きなコップ二つに続けさまに水を注ぎ、ごくごくと飲み干した。それから部屋をむやみに歩き回り始めた。
パスカルは黙っていた。この男の頭の中で蠢いているものが自分の運命であるような気がしていた。彼が何を決定するか、に自分の未来が掛かっている……。審判を待つ被告人でもこれほどは、と思われるような苦しい時間が流れた。
一分ほどだったが、果てしなく思えた時間の後、ついに男爵は立ち止まった。
「これまで申したのと同じように、フェライユールさん」と彼はぶっきらぼうに言った。「私はあなたの味方ですし、あなたと共にあります……さぁ、握手してください……そう、これでいい! 悪党どもが勝ち誇っているとき、正直な人間はお互い助け合わねばなりません。10.7
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