計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

帝国は戦争によって発展し、戦争によって衰退する

2023年09月27日 | 何気ない?日常
最近(8月から)少しずつ読み進めていた本です。


山﨑圭一 先生, 2018:一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書.SBクリエイティブ,351pp.

 膨大な内容をコンパクトに圧縮しつつも、歴史の流れが掴みやすく解説されています。各章の初めに歴史全体の流れ図が掲載され、また文章の途中にも判りやすい解説図が挿入されるなど、著者である山﨑先生の豊富な経験に基づいた工夫が随所に見られます。

 また、本の記述に加えて「映像授業」を平行して受講することで、理解を深めました。
高校 世界史 映像授業 Try IT(トライイット)新里将平 先生

 こちらは「372本」の動画で構成されています。動画は1.5倍速で視聴すると丁度良いスピードです。詳細な部分についても、ユーモアも交えつつ丁寧に解説されています。このような動画を手軽に受講できるのはありがたいですね。

 世界史(通史)の範囲を「何とか一巡しただけ」なので、まだ語句や名前を覚える所までは達しておりません。ただ、とりあえず歴史の大まかな流れは掴めました。

 振り返ってみると、世界の歴史上、様々な帝国が興亡を繰り返しています。そのプロセスに目を向けると、一つの法則(のようなもの)が浮かび上がってくるのです。それが、今回の記事のタイトル「帝国は戦争によって発展し、戦争によって衰退する」です。

 強大な力を持つ「帝国」は戦争を繰り返すことで「領土」や「植民地」を拡大し、多様な民族を内包して発展します。しかし、ある程度(限界)を超えると、戦争を繰り返す度に国内は疲弊し、財政を圧迫し、さらには内政もぐらつき始めます。やがて、敗戦もしくは国内の革命勃発により、政権の崩壊を迎えるのです。但し、帝国そのものが滅亡するとは限りません。しかし「存続」はしつつも、その影響力は衰えてゆくのです。

 さて、労働組織については「ピーターの法則」が良く知られています。これは、簡単に言えば「能力の限界まで出世すると、そのポジションで無能化する」というものです。

 帝国の発展と衰退についても、ピーターの法則のような「歴史の法則」があるのかも知れません。そういえば、平家物語にも「盛者必衰の理」「たけき者もつひには滅びぬ」とありますね。
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波形の重ね合わせ

2023年09月12日 | 計算・局地気象分野
 ニューラルネットワークで多く用いられるシグモイド関数を組み合わせると、三角関数のような波形を作り出すことができます。次の図のように、基準となるシグモイド関数(黒)を、x軸方向に正の方向()と負の方向()にそれぞれ平行移動して、その両者を線形結合(重ね合わせ)することで、新たな単発パルス波形()が得られます。



 さて、「フーリエ級数展開」で知られるように、一般的に「任意の関数は三角関数の線形結合で表現(近似)できる」ので、上記のシグモイド関数()の波形でも同様のことができるかも知れません。そこで、三角関数の波形シグモイド関数の単発パルス波形の重ね合わせにより、それぞれ矩形波の近似関数を作ってみました。


 左が三角関数を5つ重ねた波形、右が単発パルス波形を5つ重ねた波形(シグモイド関数は10個に相当)です。右(シグモイド関数)の場合は、左(三角関数)ほどではないにせよ、それなりに「矩形波」を表現(近似)しています。なお、適用区間は「-2≦x≦2」に限定しています。

 ここで、重ね合わせに用いた波形(成分)を列挙してみましょう。まず、三角関数については、下記の5種類の関数を重ね合わせました。


 続いて、シグモイド関数については、下記の5種類の単発パルス波形を重ね合わせました。



 従って、シグモイド関数を幾つも重ね合わせることで(線形結合)、近似関数を作り出すことができます。

 ニューラルネットワークでは、多くのシグモイド関数を段階的に重ね合わせることで、その関数近似能力を高めているのです。しかも、機械学習のプロセスにおいては、個々のシグモイド関数の重みを「自動的に」調節しているのです。
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今年(2023年)の8月は「記録的猛暑」だった。

2023年09月05日 | 山形県の局地気象
 先日(8月25日)の記事「今年(2023年)の猛暑を甘く見てはいけない」でも述べましたが、今年の8月は「猛暑日」が頻発しました。

 山形県内4地点(酒田・新庄・山形・米沢)における8月の日最高気温の推移(1976~2023年)を調べました。日最高気温は「猛暑日」「真夏日」「夏日」「夏日未満」の4階級に分け、各々の出現回数を表示しています。今年(2023年)は「夏日」が各地とも「1日だけ」ありましたが、残りは「真夏日」と「猛暑日」でした。






 ちなみに、8月の山形県内の熱中症による救急搬送状況は下記の通りです。今年(2023年)の8月の暑さの影響の大きさがうかがえます。

・2023年:523名 (7/31 - 8/26) ※速報値
・2022年:139名 (8/ 1 - 8/31)
・2021年:238名 (8/ 1 - 8/31)
・2020年:387名 (8/ 1 - 8/31)
・2019年:447名 (8/ 1 - 8/31)
・2018年:196名 (8/ 1 - 8/31)
・2017年:103名 (8/ 1 - 8/31)
・2016年:177名 (8/ 1 - 8/31)
・2015年:142名 (8/ 1 - 8/31)
・2014年:167名 (8/ 1 - 8/31)

【出典】総務省消防庁のホームページ(2023年09月05日・閲覧)
救急搬送状況 令和5年の情報
過去の全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表一覧


 続いて、山形県内4地点(酒田・新庄・山形・米沢)における8月の降水量の推移(1976~2023年)を調べました。年毎にバラツキはありますが、「今年(2023年)の降水量が少なかった」ことは明らかです。前年(2022年)とのコントラストが顕著です。また、各地の今年(2023年)8月の降水量を平年値と比較してみると、次のようになります。

・酒田:13.0mm (平年値:205.6mm,平年比: 6.3%)
・新庄:53.0mm (平年値:196.4mm,平年比:27.0%)
・山形:60.5mm (平年値:153.0mm,平年比:39.5%)
・米沢:57.5mm (平年値:151.4mm,平年比:38.0%)

 今年(2023年)8月の降水量は、平年の4割に満たないことが判ります。



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エネルギーと質量の等価性

2023年08月31日 | 物理学の基礎
 前回の記事では「ローレンツ変換」を導入しました。今回はその続編として「エネルギーと質量の等価性」を導いてみます。

 ここでも、前回と同様に2つの慣性系としてK系とK'系を導入し、それぞれに観測者A、Bが存在すると考えます。また、K系は静止する一方、K'系は(K系に対して)一定の速度vで運動する状況を想定しています。


【等速運動する慣性系における物体の衝突】

 今回は、等速運動する慣性系(K'系)の中で2つの物体を衝突させてみます。この2つの物体は同じ質量を持っており、互いに同じ速さ(向きは逆向き)で等速運動して衝突に至ります。



 この場合、K'系の観測者BとK系の観測者Aでは、現象の見え方(認識)が異なります。まず、観測者Bから見ると「同じ質量m'の物体が、同じ速さu'で逆向きに運動して正面衝突し、衝突直後は静止状態に至る」と認識します。

 一方、観測者Aから見ると「物体1と2は互いに同じ向きに、異なる速さu1,u2で等速運動しており(u1>u2)、物体1が物体2に追いつくように衝突し、衝突直後は(慣性系K'と同じ)速度vで運動する」と認識します。

 また、観測者Aから見ると、ローレンツ変換によってK'系内の時間と空間が変化しているので、2つの物体の質量m1,m2についても「互いに等しい」と認識できるとは限りません。



 そこで、K系の観測者Aの視点で、K'系内の2物体の運動量保存則、および各物体の速度のローレンツ変換の式と立て、2物体の質量比(m1/m2)を導きます。

 本来、2つの物体と同じ慣性系に存在する観測者(この場合はB)から見れば、質量比は「もちろん1」となるのですが、異なる慣性系の観測者(この場合はA)から見ると「必ずしも1とは限らない」と考えるのです。


 ここで、この質量比(m1/m2)2の式は、運動量保存則とローレンツ変換の式から「u'とvを消去する」ことで導かれるのですが(教科書には「この記述」しかなかった)、このやり方には「コツ」があります。当初、独力ではなかなか導けなかったので、ネットで調べて漸くそのテクニックを見つけました。


 (※予め「1-u12/c2」と「1-u22/c2」を計算しておいて、後からまとめて代入するのです。)


【相対論的質量】

 続いて、K系とK'系のそれぞれに物体を置いた場合を考えてみます。今度は、物体1はK'系において静止状態にあり、物体2はK系において静止状態にある状況を考えます。

 この場合、観測者Bから見ると物体1は静止状態として認識されます。一方、観測者Aから見ると物体1は(K'系と同じ速度)vで等速運動していると認識されます。



 さて、そもそもの前提として、物体1と物体2は同じ慣性系においては同じ質量を持っています。そこで、物体2を物体の本来の質量m0、物体1をK'系において変化したかも知れない質量mと考えて、質量比(m1/m2)を求めてみます。


 この結果、K'系内における質量はmは、本来の質量m0のγ倍に変化していることが判りました。この変化した質量mを「相対論的質量」と言います。


【相対論的力学】

 古典力学における「運動量」は質量と速度の積で定義されます。また、「ニュートンの運動方程式」は、「運動量の時間微分が外力に等しい」という形で表されます。

 これを踏まえて、相対論的質量と速度の積を「相対論的運動量」と言います。また、「相対論的運動量の時間微分が外力に等しい」という形で表される方程式を「相対論的運動方程式」と言います(次の式では速度と外力をベクトルで表記しています)。



 ここで、エネルギーの変化は外力による仕事によってもたらされると考えると、エネルギーの微小変化(dE)は微小仕事(F・dr)で表されます。後はひたすら数学の問題です。



 両辺を速度0からvまで積分すると、エネルギーの変化と質量の変化の関係(エネルギーと質量の等価性)が導かれます。



 ここで「右辺」の積分には、これまたちょっとした「コツ」が必要となります。こちらもネットで調べて漸くそのテクニックを見つけました。


 (※要は「(1-v2/c2)-3/2=(d/dv)(1-v2/c2)」を発想できるかどうかがポイントです。)
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ガリレイ変換とローレンツ変換

2023年08月31日 | 物理学の基礎
 先日の記事でも述べましたが、この夏の暑さは異常です。外に出るのも儘ならず、インドアで過ごすことが多くなりました。

 そこで、この8月中はスキマ時間に「特殊相対性理論」の解説を読み返しておりました。工学部(機械系)で特殊相対性理論を履修したのは、約四半世紀前の大学1年(教養部)の頃です。使用された物理学の教科書では僅か「10ページ前後」の記述でしたが、なかなか難解でした。あらためて理解したイメージを「メモ書き」として記事に残しておきます。


【異なる2つの空間(K系とK'系)】

 まずは一連の話の前提として、異なる2つの空間を導入します。一方の空間をK系、もう一方の空間をK'系と呼ぶことにしましょう。

 K系は静止状態にあり、この中には観測者Aが存在します。また、K'系は一定の速度で動いており、この中には観測者Bが存在します。K系が駅のホームだとすると、K'系はホームを通過する新幹線のようなイメージです。



【慣性系】

 ここで、K系とK'系のそれぞれに座標を設定します。これらの座標系は「慣性系」と呼ばれます。慣性系とは、慣性の法則が成立する座標系の事です。慣性の法則は「静止している物体は静止し続け、運動している物体は一定の速度を保ちながら運動を続ける」と言う法則です。

 つまり、座標系は静止しているか等速運動をしているため、その加速度は常にゼロであり続けます



【ガリレイ変換】

 K'系内における点Pに着目し、この点Pの位置を観測者A、Bのそれぞれから見た場合の見え方について考えてみます。点Pの位置(座標は)は、観測者Aからはxの位置に見えます。そして、この位置xは時々刻々変化します

 一方、観測者Bからはx'の位置に静止しているように見えます。観測者Aの立場から言えば「観測者Bもまた点Pと共に同じ速度で動いている」のです。

 この関係を等式で表し、時間微分を施すと、位置の関係から、速度や加速度が導かれます。その結果、運動方程式はK系、K'系で同じ形となります。


 すなわち、一つの座標(慣性系)で成立する力学の原理は、これと等速運動する他の座標系(慣性系)についても成立します。従って、力学現象の基礎として絶対速度を測定する方法は無く、ただ相対速度のみが測定できる、と言うことです。これを「ガリレイの相対論」と言います。


【非慣性系と慣性力】

 ここで、もしK'系が慣性系ではなかった場合を考えてみましょう。つまり、K'系が一定の「加速度」を持って運動している状況です。この場合、K'系は「非慣性系」と呼ばれます。



 先ほどのガリレイ変換と同様に、K'系内における点Pに着目し、この点Pの位置を観測者A、Bのそれぞれからの見え方(位置)について式を立ててみます。時間微分を施すと、位置の関係から、速度や加速度が導かれます。


 その結果、K'系の運動方程式の中に「-ma」と言う項(慣性力)が現れました。非慣性系の運動では、座標系自身の加速度に伴う「みかけの力」が新たに加わります。


【K'系における光の往復(1)】

 ニュートンの運動方程式と慣性系の関係を概観した後は、マクスウェルの電磁方程式と慣性系の関係を見てみましょう。ここでは、運動する座標系(K'系)の中で光(電磁波)を往復させ、その様子を外部の静止系(K系)の観測者Aの目線で考察してみます。

 まずはK'系の中で、光を(K'系の)進行方向に沿って、距離lだけ往復させてみます。



 K'系では「光源から反射板までの光の速度はcであり、また反射板から反射される光の速度もcと認識される」と考えられます。

 一方、K系では、K'系自体の速度vも加わるため、「光源から反射板までの光の(相対)速度はc+vであり、また反射板から反射される光の(相対)速度もc-vと認識される」と考えられます。

 この結果、K系の観測者Aから見た場合の光の往復に要する時間t1が求められます。



【K'系における光の往復(2)】

 続いて、K'系の中で、光を(K'系の)進行方向とは垂直に、距離lだけ往復させてみます。

 K'系では「光源から反射板までの光の速度はcであり、また反射板から反射される光の速度もcと認識される」と考えられます。

 一方、K系でも「光源から反射板までの光の速度はcであり、また反射板から反射される光の速度もcと認識される」と考えられます。


 ただし、K'系自体の速度vの影響で、「光の進み方は『真っ直ぐ』ではなく『斜めに傾く』と認識される」と考えられます。

 この結果、K系の観測者Aから見た場合の光の往復に要する時間t2が求められます。



【2種類の光を合わせると】

 ここで、上記の2つの光(1)(2)を合わせた場合を考えてみます。

(1) K'系の進行方向に沿った方向(往復時間:t1)
(2) K'系の進行方向に垂直な方向(往復時間:t2)

 当初、2つの光は時間差「Δt = t1 - t2」に相当する干渉を生じる(時間差がある=光路差がある)と考えられました。しかし、実際には観測されなかったのです(あれっ?)。

 K系とK'系との間で「ニュートンの運動方程式」は変わらず適用できますが、「マクスウェルの電磁方程式」の場合はちょっと勝手が違うようです。そこで、次のような要請(アインシュタインの要請)が基本原理に組み込れました。

(1)1つの慣性系で成立する物理法則は、これと等速運動する他の座標系(慣性系)に対しても同じ形で成立する。
(2)真空中の光の速度は、光源および観測者の運動とは無関係に、常に一定である(光速不変の原理)。

 つまり、光速が変化するのではなく、K'系の空間が歪む(縮む)ことで「Δt = t1 - t2 = 0」、つまり「t1 = t2」となる(←辻褄が合う)と考えます。この時、K'系の空間は元の長さlからl'に変化すると考えます。この結果、「t1 = t2」が実現すると考えると、次のような式が得られます。


 このように、慣性系の速度に応じて内部の空間が縮むことを「ローレンツ収縮」と言います。


【ローレンツ変換】

 ローレンツ収縮の概念を拡張してみます。 

 改めて、K系(静止)に光源を設置し、K'系(運動)の中にある点Pに向かって光を発射する状況を考えてみます。

 ここで、K系とK'系の時刻をそれぞれt,t'と表すことにします。また、K系とK'系の座標をそれぞれx,x'と表すことにします。

 初期状態(t = t' = 0)の時、K系とK'系は重なっており、この瞬間にK系の光源(x = 0)から光を発し、同時にK'系は速度vで動き出すものとします。



 ある程度の時間(K系ではt、K'系ではt')が経過した後の様子を考えてみます。ここからは、座標系の取り方とは無関係に一様に流れる「絶対時間」という考え方を捨てて、各慣性系毎に異なる時間を考えます。

 改めて、光の経路上に点P1、点P2、点P3を置いて考えてみます。P1~P2間はK系のみ、P2~P3間はK系とK'系が重なっている区間となります。



 ここで、K系に固定された光源(点P1)から発せられた光は、点P2を経てK'系内に入り、点P3に到達したとします。

 観測者Aの視点に立って、P1~P3間の距離を考えてみると、P1~P2間の距離は「時間tにおけるK'系の移動距離」であり、P2~P3間の距離は「K'系内を通過した距離」となります。

 一方、観測者Bの視点に立って、P2~P3間の距離を考えると、やはり「K'系内を通過した距離」となります。

 ここで、P2~P3間の距離について、2人の観測者の認識が異なります。観測者BはP2~P3間の距離をx'と認識しています。しかし、観測者Aはx'からローレンツ収縮した長さを認識しています。K'系内は空間そのものが収縮しているので、観測者Bも一緒に収縮していることになります。もちろん、観測者Bは自らの収縮を認識できません。

 従って、観測者Aの認識をベースに、観測者Bが認識する空間x'と時間t'を表現すると、次のようになります。


 つまり、K系とK'系では「空間の大きさが変わるのと同時に、時間の長さも変わる」ということです。この変換を「ローレンツ変換」と言います。また、この逆変換は次のようになります。



 ここで、ローレンツ変換の式を基に、空間と時間の微小変化を考えてみましょう。



 時間と空間の微小変化を基にして、速度成分のローレンツ変換の式を導くことができます。



 この続きとなる「エネルギーと質量の等価性」は、こちらです。

 ちなみに、現実の世界で身近な物理現象を考える際は、運動速度vは光速cよりも圧倒的に小さく「古典力学(ニュートン力学)」で十分対応できます。ローレンツ変換の式で「(v/c)→0」の極限を取ると、ガリレイ変換の式と一致します。

 一方、「光速に近い速度で運動する、または天体のような巨大な質量を扱う」ような物理現象を扱う際には、この知識は必要になると学びました。今後の人生において、そのような現象を扱うことが「全く無い」とは言い切れないので、念のため勉強しておきます。
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今年(2023年)の猛暑を甘く見てはいけない

2023年08月25日 | 気になるニュース
【2023年08月25日(TUY / Yahoo!ニュース)】
救急車到着後も練習継続 体育祭の練習中に熱中症で中学生13人搬送

 先日、同じ山形県の米沢市で悲しい出来事があったばかりです。その教訓が全く活かされていないようです。

 山形市における8月の日最高気温の推移(1976~2023年)を調べました。日最高気温は「猛暑日」「真夏日」「夏日」「夏日未満」の4階級に分け、各々の出現回数を表示しています。今年(2023年)は24日までの集計ですが、「猛暑日が14日、真夏日が9日、夏日が1日」と、特に「猛暑日」が多く現れています。


 続いて、山形市における8月の降水量の推移(1976~2023年)を調べました。年毎にバラツキはありますが、平年の月降水量「153mm」に対し、今年の降水量は24日までで「60.5mm」(平年の4割程度)に留まっています。ちなみに、新潟県新潟市(観測・新潟)では24日までの時点で「0mm」の状況です(図略)。


 山形では1933年7月25日に最高気温「40.8℃」が観測され、その後「2007年8月16日」に更新されるまで、実に「74年」もの長きに渡って「国内最高気温」の記録を守り続けました。幾ら「北日本」と言えども、ひとたび「フェーン現象」が牙を剥くと気温の上昇は顕著となります。

 先日の記事でも言及しましたが、今年(2023年)の夏は「暑さが際立ちやすい」状況となっています。学校関係者各位が中学生だった頃の「昔の夏」の感覚とは(少なくとも今年の夏は)「別物」であると言えるでしょう。「意識」のアップデートが必要です。

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猛暑日が目立つ夏

2023年08月23日 | 気象情報の現場から
 この夏は(2023年)、いつもにも増して「暑さが際立っている」ように感じます。

 まずは、8月14日の14時30分時点での新潟県内の気温と風の様子です。台風7号の北上の影響で(図略)、北陸地方では南東の風に伴うフェーン現象が顕著に現れました。この夏は、このような高温の日が多いのが特徴です。




 そこで、新潟県内4地点の8月の日最高気温の推移(1976~2023年)を調べてみました。日最高気温は「猛暑日」「真夏日」「夏日」「夏日未満」の4階級に分け、各々の出現回数を表示しています。今年(2023年)は20日までの集計ですが、「真夏日」と「猛暑日」しかありません。また、「猛暑日」の出現回数が顕著です。






 さらに、上空の天気図を見ていると、「いつもの夏とはちょっと違う」と感じることがあります。一般的に、太平洋高気圧の目安としては500hPa面の「5880m」等高度線(ジオポテンシャル高度)に着目します。

 しかし、最近の数値予報図で暖湿気(高相当温位)の流れを見ていると、「5880m」等高度線の縁辺ではなく、むしろ「5910m」等高度線の縁辺を回り込んでいるように見受けられます。つまり、ここ最近については、太平洋高気圧の目安として「5880m」よりも「5910m」を見た方が良さそう(要は、高気圧の指標が平年よりも高め)と言うことです。

 次の図は2023年8月18日の模式図です。



 これら一連の背景を理解するために、最近(2023年8月中旬)の特徴をラフに描きました。南の活発な対流に伴って、偏西風や太平洋高気圧は北に偏り、日本付近における高温域の広がり(気温の底上げ)を招きました。

 また、偏西風の峰(リッジ)に伴い、高気圧の中心も東に偏り、日本付近では南風が目立ちました。この南風に伴うフェーン(風炎)現象が日本海側の高温に拍車を掛けた(さらに気温が上がる)ため、猛暑日の日数が増加したと考えられます。

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7月の日最高気温の推移

2023年08月03日 | 山形県の局地気象
 今年(2023年)は梅雨明けしてから、非常に厳しい暑さが続いております。その背景については、グローバルな視点から前回の記事でも触れました。

 フィリピン付近の対流が活発で太平洋高気圧が強まりやすい傾向(正のPJパターン?)であり、さらに台風などの影響も加わって、特に「暑さ」が増す傾向にあります。

 そこで今回はローカルの視点で、山形県内4地点(酒田・新庄・山形・米沢)の7月の日最高気温の推移(1976~2023年)を調べてみました。グラフでは、日最高気温を「猛暑日」「真夏日」「夏日」「夏日未満」の4階級に分け、各々の出現比率(100%が31日に相当)を表示しています。

 この結果、「夏日未満」の出現比率(日数)は年を追って減少する傾向がある一方、近年は「猛暑日」がより現れやすくなっている様子が窺えます。




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梅雨明けした途端・・・暑い。

2023年07月26日 | 気象情報の現場から
 7月20日頃から厳しい暑さが続いております。当地も「北陸地方の梅雨明け」発表直後から連日のように「真夏日」が続いております。水道の蛇口を捻っても、出てくるのは「水」ではなく「お湯」といった有様です。この背景を図に描いてみました。


 フィリピン付近の活発な対流や台風5号に伴う上層発散場が、日本付近の偏西風を押し上げているようです。この結果、日本付近ではリッジ位相が顕著となり、太平洋高気圧が強められると考えられます。また、台風は高気圧の縁辺を北上しており、互いに影響を及ぼし合っています。

 さらに、台風は顕著な「上昇気流」です。対流圏界面付近まで達すると、以降は水平に広がり(発散)やがて「下降気流」に転じます。この「下降気流」が太平洋高気圧の勢力を強める働きをします。下降気流に伴って空気が「断熱圧縮」されるのに伴い、その温度は上昇します。つまり、「暑さ」が増すのです。

 適度な冷房の使用や、水分・塩分の補給を心掛けるなど、熱中症の予防を心掛けて下さい。
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梅雨末期の前線の動き

2023年07月19日 | 気象情報の現場から
 7月も半ばを過ぎて、梅雨末期となりました。この時期は梅雨前線の北上に伴い、東北・北陸地方を中心に大雨に対する注意が必要となります。

 先日・15日(土)~16日(日)の週末は、秋田県を中心に東北地方の北部で大雨に見舞われました。また、梅雨前線の南側では気温の上昇に伴う猛暑が顕著となりました。

 そこで、7月16日の主な特徴を模式図に表してみました。


 太平洋高気圧の北上に伴って、梅雨前線も東北地方まで北上しています。太平洋高気圧の縁辺に沿って、梅雨前線に向かう顕著な暖湿気の流入が持続しています。この構造が大雨をもたらす背景の一つとなりました。

 また、850hPa面の18℃等温線も北上しています。850hPa面は上空1500m付近に相当し、気温減率を6.5℃/kmと仮定して地上気温に換算すると「18℃ + 6.5℃/km × 1.5km ≒ 27.8℃」と「30℃」近い暑さに相当します。

  7月16日正午の新潟県内の気温と風の分布を見ると、標高補正値で「34~35℃」と非常に気温の高い地域が見られます。


 このように、梅雨前線の近くでは大雨に、また梅雨前線の南側では猛暑に、それぞれ注意が必要な状態です。

 そして、7月19日(水)の特徴を模式図に表してみました。梅雨前線が日本海を通って東北地方に延びており、前線上には低気圧も発生しています。また、太平洋高気圧の縁辺流に伴う暖湿気の流入も持続しており、大気の状態は不安定になっています。


 今後の前線の南下や低気圧の接近に伴う影響も気掛かりです。降水量が増えた場合は、土砂災害や河川の増水・低い土地での浸水のおそれもあるので、最新情報の確認を心掛けましょう。
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引っ越しました

2023年07月03日 | 何気ない?日常
 2005年8月下旬から約18年に渡って住んでいた集合住宅(間取り1K・17.37m2)を退去し、新たな場所に移りました。引っ越しの日の朝、すべての荷造りを終えたので写真を撮りました(※実際にはさらに洗濯機が加わります)。



 「過去の記事」でも書いていますが、携帯電話の電波の不調が目立つようになりました。この建物を取り巻くように高層ビルが次々に建てられた影響が大きいようです。また、この建物(旧居)の通信環境もVDSL方式なので、速度上の限界も見えていました。

 今回の場合は「引越し」と言っても、転勤や転職のためでは無く、あくまで「職住近接」です。線路の反対側に移動しただけで、旧居と新居は徒歩20分程度の距離です。しかし、職場への通勤時間を比較すると、旧居からは徒歩30分弱、新居からは徒歩10分弱と言った感じです。

 荷ほどきも途中で「至る所に物が散乱している」新居ですが、とりわけ課題なのは「洗濯」です。洗濯機を持ってきたまでは良かったのです。洗濯機の搬入・設置、排水ホースの左右反転、アース線、排水ホースの取り付けまでは何とかできました。

 問題は「給水ホース」です。旧居でも使用していたものを改めて、新居で接続してみると・・・継ぎ手(写真の矢印の箇所)で水漏れが生じました。何度かやり直してみたものの・・・漏れ出してきます。


 どうやら、ホース自体の経年劣化の様でした。この洗濯機自体、既に2~3年は使用されているものを譲り受けたので、通算で20年以上は使い込んでいるものです。さすがに寿命なのでしょう。予め通販で取り寄せておいた「予備の給水ホース」を接続した所、水漏れは止まりました。

 しかし、これで「一件落着」とは行きませんでした。今度は給水側の「水道の蛇口」から水漏れが発生しました。蛇口のハンドルのすぐ下から水滴が垂れて来るような感じです。これは不動産会社を通して大家さんに報告し、専門のプロの方に修理して頂きました。

 これで安心して洗濯できるかと思いきや・・・「洗濯機本体」の真下でまた、ポタリ、ポタリ・・・。「心が折れる」とはまさにこのことでしょうか。ここは潔く、洗濯機を買い替えることにします。

 それでは、現在の洗濯はどのように行っているのか?もちろん、洗濯しないわけにはいきません。極めて原始的です。風呂場(3UB)で「手揉み洗い」です。

 この他にも課題が山積しており、私の「引っ越し」はまだ終わっていないのです。
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一方向に伝わる電磁波

2023年05月03日 | 物理学の基礎
 前回の記事では、マクスウェル方程式のイメージを概観した後、真空中の条件下における電場と磁場の波動方程式を導出しました。



 今回は簡単のため、電磁波が「1方向(z軸方向)にのみ」伝播する場合を想定します。つまり、電場と磁場は位置(zのみ)と時間(t)の関数として扱われます。この時、電場と磁場のベクトルの発散と回転は次のように求められます。



 この結果を「マクスウェル方程式(真空中)」に代入すると、電場と磁場の成分について次のような関係式を得ます。


 上記の赤字で示したように、電場と磁場のz方向(波の進行方向)成分は変化しません。つまり、電磁波は横波であることが判ります。

 また、「電場のx成分と磁場のy成分」および「電場のy成分と磁場のx成分」が互いに影響を及ぼし合う関係(波動方程式)が導き出されます。電場の波と磁場の波は互いに直交することが判ります。



 そこで、新たに「電場はx軸方向にのみ変化し、磁場はy軸方向にのみ変化する」と仮定しましょう。また、電場の波動方程式の解を「sin(ωt-kz)」の関数と仮定します。ここで、ωは角振動数、kは波数です。

 なお、初期時刻(t=0)の原点(z=0)では電場・磁場ともに変位を生じない(E=H=0)ものとします(初期条件)。



 計算の結果、磁場の波動方程式の解も「sin(ωt-kz)」の関数で表される事が導かれました。すなわち、電場と磁場の波は同位相で伝わることが判りました。

 この場合の電場と磁場の波のイメージをCGで描いてみると、次の図のようになります。



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電磁場のマクスウェル方程式

2023年05月02日 | 物理学の基礎
 実はここ数年、集合住宅の居室内で携帯電話の電波の不調が目立つようになりました。高層ビルが「雨後の筍」の如く周囲に出現していることも一つの要因ではないか、そうだとすると物理学的な背景は何か?と考えています(そもそも、電波環境の良い所に引っ越しを検討する方が先かも)。

 そこで、ここ最近は電磁気学を勉強し直しています。工学部(但し「機械系」)で電磁気学を履修したのは、約四半世紀前の大学1年(教養部)の頃です。当時は「ベクトル解析」に不慣れなことに加え、「電場と電束」「磁場と磁束」の概念を混同しておりました。改めて学び直すことで、ようやくイメージが掴めてきました。


 電磁気学の諸現象は「マクスウェル方程式」から出発して導くことができます。そして、この「マクスウェル方程式」とは電磁気に関する次の4つの方程式から構成されます。


 (1)(2)は各々「電場と磁場の特徴」について記述しており、(3)(4)は「電場と磁場の相互作用」について記述しています。

 この記事では、マクスウェル方程式の「イメージ」を概観した後、電磁波の「波動方程式」を導き出します。より深い専門知識については、多くのサイトで解説されているので、ここでは割愛します。


(1)電場に対するガウスの法則

 電気を帯びた物体があると、その周りでは電気的な力(静電気力)が働く空間が生成されます。この空間のことを「電場電界)」と言います。電場の強さは、その影響によって生じる電気的な力(静電気力)のベクトル量で表されます。

 電気には正(+)負(-)の2種類の電荷があり、電場によって生じる力は正から負の向きに働きます。この分布を図で表したのが電気力線電束線です。いずれも「+極」より出でて「-極」に至るのが特徴です。そして、正(+)と負(-)は各々単独の電荷(モノポール)として存在できます。

 これらの線は途中で枝分かれすることは無く、また互いに交わることもありません。また、正(+)の電荷からは線が湧き出し負(-)の電荷によって吸い込まれます。この様子を簡単に表したイメージが下の図です。さらに、電荷の絶対値が大きくなるにつれて、湧き出しや吸い込みの対象となる線の本数は増加します。



 正(+)と負(-)の2つの電荷を左右に置くと、正(+)の電荷から電気力線(電束線)が湧き出し、負(-)の電荷に吸い込まれます。電気力線や電束線を描くことで、電荷の周囲に現れた電場の分布が可視化されます。

 しかし、この図だけでは「電場(電気力線)」と「電束(電束線)」の違いが判りません。そもそも、学生時代を振り返っても、電場については「電気力線」で説明されることがほとんどで、「電束線」を使った記憶がありません。

 そこで、こんなことを考えてみましょう。一様な電場の中に(帯電していない)物体を挿入した場合、物体内ではどのような電気的な変化を生じるのか

 平行平板状の電極を用意して「左側を正(+)、右側を負(-)」に設定すると、極板間では左→右の向きに一様な電場を生じます。この中に、未だ帯電していない物体を挿入します。


 ここで、物体を構成する物質には「電気を通しやすいもの(導体)」と「通しにくいもの(絶縁体)」があります。従って、2つの場合を考える必要があります。

 もし、挿入する物体が「導体」の場合は、物体内の負電荷キャリア(自由電子)が左側、正電荷キャリアが右側に引き寄せられることで物体表面が帯電します(静電誘導)。これに伴って、物体内部では「右→左」の向きに電場を生成し、外部から加わる電場と相殺します。この結果、両者の電場は打ち消し合うため、物体内部では「電場を生じない」状態が作り出されます。

 一方、挿入する物体が「絶縁体」の場合は、物体を構成する各分子内で負電荷が左側、正電荷が右側に少しずつ偏ることで、全体で電気的な偏り分極ベクトル)を生じます(誘電分極)。これに伴って、物体内部では「右→左」の向きに弱い電場を生成し、外部から加わる電場と相殺します。この結果、物体内部では「外部から加わる電場」が幾分弱まった状態で作用し続けます(これがコンデンサーでは重要な意味を持ちます→「誘電体」)。

 いずれの場合でも、物体の内部と外部では「電場の扱い」が異なります。簡単に言えば「物体の表面を境に、電気力線の本数が変わる」ということです。

 そこで、物体の内部と外部でシームレスに扱える物理量として考えられるのが「電束」です。真空中であろうとも、物質中であろうとも、その特性(物性)の違いを「誘電率ε」で吸収することで、シームレスに扱うことができます。つまり、「物体の表面を境に、電束線の本数は変わらない」ということです。ある種の「保存量」のように扱えるような、「利便性」があると言っても良いでしょう。


(2)磁場に対するガウスの法則

 磁気を帯びた物体(例えば永久磁石)があると、その周りでは磁気的な力(磁力)が働く空間が生成されます。この空間のことを「磁場磁界)」と言います。磁場の強さは、その影響によって生じる磁気的な力(磁力)のベクトル量で表されます。

 磁気にはN極(+)S極(-)の2種類の磁荷があり、磁場によって生じる力はN極からS極の向きに働きます。この分布を図で表したのが磁力線磁束線です。

 これらの線は途中で枝分かれすることは無く、また互いに交わることもありません。さらに、磁荷の絶対値が大きくなるにつれて、線の本数は増加します。この様子を簡単に表したイメージが下の図です。

 ここで、磁力線は「N極」より出でて「S極」に至るのに対して、磁束線は閉曲線となっています。これは、電荷とは異なり、「N極」と「S極」各々単独の磁荷(モノポール)として存在できないことに起因します。この図を見ると「磁束」の方が、物体の内部と外部をシームレスに扱う物理量として適しています。

 それでは、「磁場(磁力線)」と「磁束(磁束線)」の違いは何でしょう。この点を明らかにするために、こんなことを考えてみましょう。一様な磁場の中に(磁気を帯びていない)物体を挿入した場合、物体内ではどのような磁気的な変化を生じるのか

 幅の広い永久磁石を2本用意し「一方の右端がN極、他方の左端がS極」となるように向かい合わせ、間隔を開けて設置します。この時、2つの磁石の間では左→右の向きに一様な磁場を生じます。この中に、未だ磁気を帯びていない物体を挿入します。その後、挿入された物質は、磁場に晒される内に磁気を帯び(磁石の性質を持ち)始めます(磁化)。


 ここで、磁化に伴って「物体に生じる磁場」の向きによって、物体は「強磁性体」「常磁性体」「反磁性体」の3つの種類に分けられます。ここで、物体に生じる磁場のS極からN極に向かって「磁気分極」というベクトルを生じます。これが磁化の強さを示すものです。

 強磁性体常磁性体の場合、磁気分極の向きは「物体外部の磁場の向きと同じ」です。この場合、物体に現れる磁場は「外部磁石のN極と向き合う側の表面でS極、外部磁石のS極と向き合う側の表面でN極」となるような向きとなります。このため、物体は外部磁石に吸い寄せられます

 一方、反磁性体の場合、磁気分極の向きは「物体外部の磁場の向きと逆向き」です。この場合、物体に現れる磁場は「外部磁石のN極と向き合う側の表面でN極、外部磁石のS極と向き合う側の表面でS極」となるような向きとなります。このため、物体は外部磁石に反発します

 いずれの場合でも、物体の内部と外部では「磁場の扱い」が異なります。簡単に言えば「物体の表面を境に、磁場の様子が変わる」ということです。そこで、物体の内部と外部でシームレスに扱える物理量として考えられるのが「磁束」です。

 つまり、「物体の表面を境に、磁束の様子や磁束線の本数は変わらない」ということです。真空中であろうとも、物質中であろうとも、その特性(物性)の違いを「透磁率μ」で吸収することで、シームレスに扱うことができます。


(3)ファラデーの電磁誘導の法則

 磁束が時間とともに変化すると、その磁束を囲むような電場(誘導電流)が誘起されるというものです。中学校の理科でも「コイルに磁石を近づけたり、遠ざけたりする実験」でお馴染みですね。

 例えば、磁束が上向きから下向きに変化すると、その周りを取り巻くように反時計回りの電場が発生します。また、磁束が下向きから上向きに変化すると、その周りを取り巻くように時計回りの電場が発生します。

 磁束密度はベクトルで表されます。この時間変化を反転したものが、生成される電場ベクトルの回転(rot)に相当します。ベクトルの回転は「相対渦度」を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。

 なお、電流(電流密度)と電場(電場)の間には、「=σ」の関係(一般化されたオームの法則)があります(σは電気伝導率)。


(4)アンペールの法則

 続いては、電流電場)の周りで、その電流を囲むような磁場が誘起されるというものです。そして、この電流には「伝導電流」と「変位電流」の2種類があります。

 通常の電気回路で「電流」と呼ばれるものは、(切れて無い)導線を伝わる「伝導電流」です。中学校の理科でも「直線電流の周りに磁場を生じる」ことを学びますが、この電流も「伝導電流」です。このような電流は、電流密度で表します。

 ここで新たに登場するのが「変位電流」です。例えば、コンデンサーのような平行平板状の電極を考えてみます。この極板間は空洞ですので、導線としては「切断」されています。


 この両側に「直流」の電圧を加えると、短い時間の中で「極板間には電場を生じ、極版には電荷が蓄積」されます。しかし、その後何もしなければ、電荷の移動は生じません。つまり、電荷の移動という点では「膠着状態」です。

 一方、両側に「交流」の電圧を加えると、短い時間の中で「極板間には電場を生じ、極版には電荷が蓄積」されます。さらに、電圧や電流の大きさや向きは時間と共に周期変動します。つまり、極板間の電場(電束)が周期変動を繰り返すことになります。これに伴い、蓄電と放電が交互に繰り返されるため、(極板間は切断されているにも関わらず)その両側では電荷の移動が持続することになります(変位電流)。これが電流としての役割を果たし、その周囲に磁場を生じさせるのです。

 以上が、電磁場の基礎方程式である「マクスウェル方程式」のイメージです。


真空中の電磁波

 それでは、マクスウェルの方程式から「電磁波の支配方程式(波動方程式)」を導いてみましょう。今回は「真空中」を伝わる電磁波について考えてみます。外部に電荷や電流が存在しないため、電荷密度や電流密度は全てゼロとして扱うことが可能です。


 マクスウェル方程式の他に、構成方程式が3つあります。これは電束密度と電場、磁束密度と磁場、電流密度と電場を各々関係付けるものです。これらの式に真空中の諸条件を適用して、真空中のマクスウェル方程式を導きます。ここで、方程式のパラメータは電場Eと磁場Hで揃えておきます。

 続いて、電場の回転(×)の式の両辺に回転の演算(×)を施します。左辺はベクトル3重積の要領で展開し、電場の発散の式(=0)を適用することで、電場Eのラプラシアンを得ます。右辺は磁場の回転(×H)の式を適用することで、電場の2階時間微分に導くことができます。この両者を合わせると、電場の波動方程式が得られます。



 また、同様にして、磁場の波動方程式も得られます。



 こちらの記事では、さらに電磁波の特性にクローズアップしていきます。
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新潟県の冬の気象の数値実験

2023年04月28日 | 計算・局地気象分野
 今回は「新潟県の冬の気象の数値実験」の紹介です。日々の予報業務の合間を縫って、密かに進めていたものです。

 数値モデルは、「山形県の解析」で用いたものを「新潟県仕様」に書き換えたものです。季節風の向き(角度)や強さ(フルード数)を変えながら、相対的な降水量の分布を計算しました。この結果、佐渡島や能登半島に伴う島影効果に加えて、季節風の向きや強弱と降雪域の位置の関係も現れました。





 今後は日本海上に収束域が形成された場合についてもトライしたいです。
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高田城址公園の桜

2023年04月03日 | 何気ない?日常
 3月25日に上越市の高田城址公園でサクラの開花が発表されました。そこで、近年(2017~2023年)の高田の気温とサクラ開花日の関係について「2月1日を起算日、開花日を終算日」として、積算最高気温の推移をグラフにしてみました。この結果、積算最高気温が600℃前後に達する段階で開花となるようです。



 さて、新年度の最初の週末(4月2日)は「上越市・高田城址公園」の観桜会の様子を見てきました。この週末はサクラは満開で天候にも恵まれ、まさに「お花見日和」となりました。


 まずは、公園へ向かう道中に見た青田川沿いの桜です。綺麗な青空をバックに、川の水面を挟む両側の土手は緑色に染まり、その上で桜の淡いピンク色が鮮やかです。



 公園の入り口に差し掛かると、観桜会の看板が立っていました。日本三大夜桜としても名を馳せていますが、私は「お昼のみ」の観桜です。



 入り口から進んだ所で横に視線を向けると、遠くに見える紅の橋の欄干に向かって、桜のカーテンが広がっていました。早速、豪華絢爛の風景が迎えてくれました。



 極楽橋の上から望む風景は格別です。青空と水面、緑と桜のカラフルな共演は見事です。満開と好天の恵まれた週末と言うこともあり、多くの人で賑わっていました。お昼時の屋台は何処も長蛇の列となり、多くの人で賑わっていました。また、公園内ではブルーシートを広げて宴を楽しむ姿も多く見られました。



 高田城三重櫓も満開の桜で彩られていました。城の造形美と桜の自然の美が青空のキャンパスの上で共存しています。



 高田城址公園の城跡を巡る外堀には蓮が植えられています。この堀の蓮は東洋一だそうです。そして、この堀の取り巻くように桜のカーテンが広がっています。
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