計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

偏微分方程式を通じて局地気象を理解する・・・

2008年01月12日 | 計算・局地気象分野
 C言語も漸く入門者レベルに達した所で、再び理論研究に戻っている最近です。

 これまでずっと引きずっている境界条件の問題は、「異なる方向の流れが多重構造を形成する場合の乱流解析」へと発展し、もはや境界条件だけの問題にクローズすること自体がナンセンスではないか、との心境に達しています。むしろ根本的に、そもそもどのように解析を進めるか、そしてそれは数学的に問題は無いのか?これは究極的にはNavier-Stokes方程式の厳密解が得られなければ分からないのかもしれません。しかし、それを待っていたのでは目の前にある問題はいつまで経っても解決しないでしょう。限界があるかもしれませんが、その中で最大限の活路を見出すしかない、という訳である意味、新たな悟りを開いたような感じです。

 その際のヒントが得られるかどうかは分からないのですが、今頃になって?偏微分方程式を解くと言うことについて勉強し直しています。偏微分方程式の解き方(計算方法)という事ではなく、それよりも偏微分方程式を解析的に解くと言う事について理解したいと思っています(そもそも計算方法については、ぶっちゃけ離散化して差分スキームを組んでプログラミングすれば数値解は求まるので、それほど重要かつ緊急の課題ではありません)。

 これまでの研究を振り返ってみると、特定の偏微分方程式(Navier-Stokes方程式)を解く事に莫大なエネルギーを注いできたので、もう少し一般的な偏微分方程式についても勉強したいとかねがね思っていました。確かに、Navier-Stokes方程式を解く事で偏微分方程式に関する基本的な事項は勉強できています。従って、その途中で取りこぼしてきた部分をしっかり固めたいのです。もしかしたら、そこにヒントがあるかも知れないからです。

 本来、私の目指している研究は、局地気象を解き明かす事によって気象予測の面から社会に貢献する予定なのですが、皮肉な事に?その局地気象を解き明かす以前の問題で相当な苦戦を強いられている形になっています。

 無論、局地気象の研究も続けているのは言うまでもありません。今年の日本気象学会の春季大会は無理でも、秋季大会には何らかの研究成果をぶつけたいと思っております。なぜなら、秋季大会は仙台(=つまり東北地方)で開催されるから・・・。さすがに現在抱えている境界条件の問題は出せませんが(爆)。

 偏微分方程式の数値解析というのは、これまたとんでもない分野に手を出してしまったものだ・・・そう思うときも正直、あります。しかし、現在の天気予報は詳細な観測データと莫大な数の連立非線形偏微分方程式の数値解析(=数値予報)に支えられているのは揺ぎ無い事実です。これらの解析結果を基に、人間が未来の現象を判断するのです。

 気象予報士に対するイメージとしてお天気キャスターを連想する人は少なくないと思います(このブログの読者に限っては、少なくなってきたかと思いますが)。しかし、そのお天気キャスターやお天気お姉さんの予報、解説を、偏微分方程式の解析が支えているという事実(と書くと、極論にも感じられるが)はどこまで広く知られているのかは謎です。別に、知らなくても実際には全然、困りません。本当に独自の局地予報を行うための技術開発なり研究開発に従事する、ごく一部の技術者がしっかりしていれば、ほとんど問題ありません

 私の場合は、難解な偏微分方程式を解く事を通じて、局地気象に関わり続けているのです。境界条件をどのように与えるか、個々の流れをどのように与えるか、一つ一つの現象をどのようにモデル化(単純化・抽象化して表現)するのか、これらの問題は気象学と密接に関わってきます。むしろ、他とは違う角度から局地気象を見ることが出来るのです。誰も知らない局地気象の一面を見続けているのかもしれません。

 一連の研究を開始した当初は、3次元乱流解析を実現すれば後は独自予報の実用化は十分可能だろう、と考えていましたが・・・甘かったですね。今、こうやって境界条件や初期条件など、偏微分方程式を取り巻く諸条件についての研究に重点をシフトしてみて初めて、見える、分かる事(もしくは感覚)が多々ありました。これらは天気図からは見る、知ることの出来ない新たな一面です。これが以前にお話した「独自の自然科学的世界観」の形成につながっていくのかも知れません。

 そもそも数値シミュレーション自体がここ30~40年の間に急速に発展している事もあり、まだまだ未知の領域が広がっているのでしょう。解析の根本となる理論は何百年もの歴史を経て洗練されてきました。シミュレーションについてはまだまだ手探りの部分も多いのではないかと思います。今、まさに暗中模索のドツボに嵌まっています。

 でも、そろそろC言語の初級レベルの勉強もしなくては・・・。いっその事、これからの数値解析は全部C言語で書いてしまうのも良いかも(爆)。
コメント
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