計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

2022年12月中旬の大雪

2022年12月20日 | 気象情報の現場から
 2022年12月18日夕方から20日朝にかけて、新潟・山形・福島の3県を中心に大雪に見舞われています。長らく続いている「ラニーニャ現象」に「負の北極振動」が重なり、さらに「日本海寒帯気団収束帯」が新潟県に延びたことが主な要因とみられます。

 第1図は、2022年12月18日15時における数値予報図です。
 日本海では等圧線が幾重にも(ひらがなの)「く」の字に折れ曲がっています。そこでは日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が形成されており、その向かう先で大雪の傾向があります。


第1図・12/18の15時における数値予報図(気圧配置と降水量)


 第2図も、2022年12月18日15時における数値予報図です。
 この図では風向風速に注目してみます。北半球では、気圧の高い側から低い側に向かって、等圧線を右斜めに横切るように風は吹きます。また、等圧線も密集し、気圧の傾きが大きくなっています。日本海上の等圧線が「く」の字に折れ曲がる線(黄色破線)を境に、その北側では北西寄りの風、南側では西よりの風となっています。この2つの流れが日本海上で線状(帯状)にぶつかる領域が「収束域(収束帯)」です。


第2図・12/18の15時における数値予報図(気圧配置と風向風速)


 第3図は、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の模式図です。
 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)は、朝鮮半島北部の山脈(約2700m級)によって寒気の流れが二分され、日本海上で合流する際に形成される風の収束域(収束帯)のことです。要は、二つの流れが合流する帯状(線状)の領域とイメージすると良いでしょう。
 各々の季節風の流れに伴って生じた雪雲が、この収束帯上に集まり、その延長線上の下流側に向かって移動します。まさに、雪雲が大群を成して押し寄せるようなものです。


第3図・日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の模式図


 第4図は上空寒気のパターンの模式図です。上空の寒気に注目すると、日本付近に非常に強い寒気が流入しやすい条件が揃っていました。
 ヨーロッパから日本付近にかけてトラフーリッジートラフの位相(波列)となる「正のEUパターン」が形成されたため、日本付近では寒気の南下しやすい位相となっています。
 さらに「負の北極振動」に伴って北極付近に蓄積された寒気が中緯度地方に放出されやすい状態が重なったため、「最強寒波」と呼称されるような非常に強い寒気の南下につながったと考えられます。


第4図・上空寒気のパターンの模式図


 第5図は新潟県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図です。
 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が県央~中越地方北部に向かって延びた影響で、この地域を中心に集中的な降雪域が見られます。一方、中越地方南部の南魚沼市では目立った降雪は見られませんでした。


第5図・新潟県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図
※20cm以上を等値線の対象


 第6図は山形県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図です。
 山形県は日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の北側に当たり、北西寄りの風が強まりました。このため、朝日連峰と飯豊連峰に沿って降雪量の極大域となっています。山形県では西置賜から最上地方を中心に積雪の増加が見られました。

第6図・山形県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図
※20cm以上を等値線の対象


 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)については「こちらの記事」でも詳しく述べています。また、類似の事例として、2021年1月の上越の大雪も日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が関与しています。
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