アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

危機感の薄い日本人に求められるもの

2023-08-01 12:37:39 | 丹田禅(冥想法8)neo

◎どこかでどん底まで落ちるしかないのかも

(2012-02-21)

 

嶋野栄道氏の続き。これは阪神・淡路大震災後に日本人の無覚醒を憂えた文。

 

『危機感の薄い日本人に求められるもの

 

こんなに文明が発達し、こんなに物質的に恵まれた時期がかつて世界の歴史の中であっただろうかと思うほど、現在の日本は成熟しています。

 

日本に帰ってきて新幹線に乗るといつも驚かされます。十五分ごと、時間どおりに発着して、しかも実に丁寧なアナウンスがあります。あまりにも丁寧すぎて、もうやめてくれと言いたくなるほどです。とにかく、きれいで、速くて、素晴らしい。私が知る限り、物質的にこれだけの文明を有する国はありません。アメリカにもヨーロッパにもない。日本だけです。

 

その半面、日本人はアメリカの悪い面ばかりを真似しているように見えます。自国にある素晴らしい文化的伝統を躊躇することなく捨ててしまっているように感じられてなりません。「捨てるべきもの」を間違っているのです。

 

先に情緒の話をしました。言葉にはできないけれど、感情が伝わってくるというのは、日本人に独特のものでした。しかし最近の人たちは、日本人でありながら、情緒というものがわからなくなっているようです。それは日本人が自国の文化の集大成である古典を読まなくなったこととも関係しているかもしれません。

 

私は長く日本を離れていた分、余計に日本を愛しています。それは愛国心というより祖国愛です。それだけに、この素晴らしい国がいつまで続くのだろうかと心配します。同時に、

一禅僧の目から見て、日本人の心が枯れてしまっているのが気がかりです。日本人にはそういう危機感があまりに少なすぎるように思うのです。もし日本人が今のまま目覚めないとすれば、どこかでどん底まで落ちるしかないのかもしれません。

 

一九九五年に阪神・淡路大震災があった時、たくさんの方がお亡くなりになりました。その時に被災者の方たちは、地震のすごさを体感されました。頭で理解したのではなく、目で見ただけでもなく、まさに身をもって感じたのです。地震に遭遇した方にお話をうかがうと、今でも大きな音を聞くと、思わず身構えてしまうそうです。

 

天災は避けようとして避けられるものではありませんが、一度ああいう極限状態を体験すると、それ以前とそれ以後とでは人間が変わってしまいます。それまでは何でも買い集めていた人が、一遍上人のように「捨てて捨てて」という気持ちになったという話も聞きました。

 

本当は、日本人自らが気づいて自分たちのあり方をあらためるのが一番なのですが、もしそれが不可能ならば、いつ何らかの力によって厳しい状況に遭遇することになるやもしれないということを肝に銘じておくべきでありましょう。そうなる前に、なんとか日本人が目覚めることを願います。』

(愛語の力/嶋野栄道/到知出版社P232-235から引用)

 

自分も今の日本が恵まれていることには、相当に見方が甘かったことは自戒したい。心ある日本人のみるところ、「日本は、いままでが良すぎた。それを当然・普通と思っている。」という声をしばしば聞くようになった。

 

そこに来て東北関東大震災があって、日本人はどんぞこまで一回落ちないとという嶋野さんの懸念が現実化しつつある。

 

中国人の悪いところは目につきやすいが、アメリカ人の悪いところは宣伝・マスコミ対策のせいかわかりにくくなっている。その延長線上に、つまりアメリカのカルチャー、音楽(ヒップポップ、ラップ、ロック)、映画、核家族なライフ・スタイル、ファースト・フードの受け入れは盛んである一方、日本の情緒的な映画、演歌、大家族なライフ・スタイルはどんどん捨て去られていく。

 

一言で言えば、アメリカン・カルチャーは愛の薄いドライなカルチャーで、日本の文化は、愛あふれる情緒的なウェット・カルチャー。日本がそれを捨てすぎれば、源流は枯れる。それでも日本がどんぞこまでいくのであれば、その落ち目の運命は、政治家や官僚だけのせいではなく、われわれ自身のせいであることに間違いない。

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仏法東漸してニューヨークに到る

2023-08-01 12:33:31 | 丹田禅(冥想法8)neo

◎愛語の力(嶋野栄道/到知出版社)

(2012-02-20)

 

嶋野栄道氏も三島の龍澤寺出身。中川宋淵老師の膝下で修行を積み、昭和39年ニューヨークに渡り、文字通りの無一物からニューヨーク禅堂を開いた。文字通り異郷の菩薩である。

 

嶋野氏は渡米時にはまだ修行中の身であったが、山本玄峰に頭をさわってもらったり、中川宋淵に自分の遺骨を米国に埋めることを頼まれたり、相当な役回りのできる高徳の人物であることがうかがえる。実は、一宗の命運を託されるその様子は、古神道の笹目秀和氏と似たようなところがある。

 

歴史学者のアーノルド・トインビーが、数百年後に評価される20世紀最大のイベントは、人類月に立つでも2つの世界大戦でもなく、仏法東漸であるといったそうだが、禅が米国で芽吹くというのは、禅も亡国日本とともに滅び、やがて米国で花を開くということか。それを予期した上で中川宋淵は自分の遺骨を米国に埋めることを嶋野氏に託したのか。だとすれば、これには一種のご神業の風光がある。

 

仏法が東漸するとは、日本からアメリカに到ることであり、更に21世紀最大のイベントは、フロリダの先に再浮上するネオ・アトランティスに仏法が東漸することに違いない。(古神道はモンゴルへ。)

 

愛語の力(嶋野栄道/到知出版社)は、とても読みやすい本だが、書いている中身は凄味がある。

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無学祖元

2023-08-01 06:38:34 | 達磨の片方の草履

◎人空にして法も亦(ま)た空

 

無学祖元は宋末の禅僧で、元による難を避け日本に渡来してきた。彼は、蒙古の第2回侵寇弘安の役(1281年)の二年前、執権北条時宗に招請されて来日。鎌倉の円覚寺の開山。

 

中国の政権の瓦解が見えてくると中国の宗教者や青年が日本に渡って来るものだが、今回はどうか。青年はいるが宗教者はいないのだろう。

東洋経済online2023年07月31日10:30の“結婚が「10年で半減」中国で何が起きているのか”という記事では、中国の婚姻件数は9年連続で減少し、10年足らずで半減し、2013年の約1350万組から2022年約680万組となった由。これもその前兆である。

一方五公五民の日本では、若者が子供二人もまともに育てられない人生設計にしかならない日本に見切りをつけ、海外移民を目指すシーンも出てくるのではないか。生活の場として、日本が良くて中国が悪いというのは、もはや現実ではなく単なる先入観かもしれない。

バブル期に日本が良くなりすぎ、30年の無成長の結果、重税・重社会保険料・重い再エネ賦課金により、いつしかジリ貧国家となり、若い日本人が日本を見切る時節も見えて来た。

 

無学祖元は、元寇対応で有名な北条時宗の禅の師として有名である。13歳で父を失い出家、杭州径山寺の無準和尚に参じ、無字の公案を与えられた。七年後、寺僧の打つ木版の音を聞いて開悟したが、無準老師は、これを小悟と退けた。

無準遷化後も無学祖元は、さらに十数年も冥想修行を継続、36歳の時、道端で井戸水を汲む轆轤(ろくろ)がくるくる回っているのを見て、廓然として大悟した。

 

折しも元兵の兵難に追われ、浙江省台州真如寺から温州能仁寺に移ったが、そこにも元兵が乱入してきた。無学祖元は、ただ一人坐禅していたが、首に刀を当てられたところで、一偈を唱えた。

 

乾坤弧笻(こきょう:竹の杖)を卓(た)つるに地無し

喜び得たり人(ひと)空(くう)にして法も亦(ま)た空なるを

珍重す大元三尺の剣

電光影裡に春風を斬る。

 

大意:

天地の間に竹杖一本を卓てるところはない、喜ばしくも気づいてしまった、人は空であり法もまた空であることを。

大元の三尺の大剣を有難く受けよう

(私を斬っても)春風を一瞬にして斬り裂くようなものだ。

 

気押された元兵は去って行った。これは、辞世の偈である。『喜び得たり人(ひと)空(くう)にして法も亦(ま)た空なるを

』とは、首に剣を当てられて、もう一度大悟したということだろうか。恐怖の恵み。

 

『春風』という軽さが、彼のいた境地の本物であることを示しているように思う。

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