◎全人民スマホ管理の結末
直前決算で中国事業で大赤字を出した複数の企業が、普段TVCMなど流さないのに、にわかに有名タレントを使ってTVCMを流すので、そういえば、中国関係で損失を出したのだなとかえって思い出されるこの頃。
『中国不動産バブル (文春新書)/柯隆』を読んだ。柯隆さんは、好漢である。
中国不動産バブルに関して、特に日本人にあまり理解されていない事がいくつか書いてあり、読書メモがてら、感じたことも書いてみる。
- 中国は三権分立ではない。三権を超える絶対的権力を中国共産党が保有している。
- 腐敗というのは賄賂とインサイダー取引のこと。
- 中国のサラリーマンの賃金水準は一般に日本より低いので、中国富裕層の収入は、賄賂とインサイダー取引と不動産投資で構成されているのだろう。中国富裕層は悪銭の人々か。
- 10年前で賄賂1千万円というのはチップ程度の扱い。本格的な賄賂は10億円単位なのだろうが、その規模だと案件そのものの採算にも影響大。昔、女優ファンビンビンが、上海の有名占い師に見料1件3千5百万円払ったと聞いて驚いたが、その金額は実は相場だったのか。
- 不動産開発で、賄賂のもらい手は中央および地方の共産党幹部と政府の幹部、銀行幹部。わいろは社会の潤滑油と呼ぶそうだが、この高額では、潤滑油どころではない。わいろの出し手は、直接的にはデベロッパーなどだが、もともとの金の出所は住宅ローンを借りている庶民。
- 中国と中国人は、契約を守るという慣習がない由。契約を一方的に破棄しても罪に問われないからの由。法律はあるが執行がダメな由。中国は、礼と道徳の国だと考えていたがそうではなかった。始皇帝の時代から韓非子の法家が重きをなしていたのは、約束や契約を守らないのが当たり前みたいな考え方だったのですね。国家間でも合意はするが履行しない例はいくつもあった。
- 中国では、最低限の私有財産権も、共産党の意向で踏みにじられることがある。それは、文化大革命とコロナ禍の地域隔離時に顕著だった。コロナ禍の地域隔離時には、官憲が個人の家に勝手に侵入し、ベッドの上に消毒剤をまき、犬猫などペットを殺してまわった由。法律の上に存在する共産党。
- 中国は、スマホにより全国民の思想、所在、住居、金銭の管理を現実化した。これは、ジョージ・オーウェルの小説1984年を上回る最先端の管理社会を、人類史上初めて実現したもの。その中で「人間」はやっていけるのだろうか。共産主義洗脳は、1940年代から日々繰り返し行われているが、その末路はどうなるのだろうか。
- 不動産バブルの崩壊は、不動産業、金融、行政、共産党の一党支配を脅かすかも。中国は、富が権力側に偏って集中していて、共産党指導者を中心とした特権社会であって、一体これが社会主義体制なのかと考えさせられる構造である。
- 中国共産党員は、約98百万人(2022年末)もいて、その賃金は膨大。日本の公務員数は、約3百万人で、その30倍。
- 中国では、軍事費より社会治安維持費用の方が大きい由。政府と国家は、人民の信用を失っているかららしい。
- 日本もバブルが終わってから20年経っても、それでも今後株価は戦後最高値をつけると信じている人が結構いた。いわんや中国人がにわかに不動産価格が下がるなどとは、頭でわかっていても、受け入れられないだろう。中国人は総じて強気の投資判断なのだろう。
- 不動産バブルの崩壊は、政権の致命傷となりかねないので、なんとかして不動産バブルを崩壊させまいとするのだろうが、手はあるのだろうか。1976年の文化大革命終了時も中国経済は破綻していたらしいが、それを改革開放で乗り切った。中国特有の、庶民の人権を軽視するという切り札があるので、何でもできると思っているのだろうか。恐ろしいことではある。上海のコロナでの地域隔離時に食料は途絶し、病院医療も崩壊した事例がある由。
- Win Winという言葉は、最近は普通に使われるが、元は中国から最近来た言葉と思う。日本には、三方一両損という美しい言葉がある。
- 中国農家のエンゲル係数は50%以上で、都市部住民の平均エンゲル係数は40%以上。庶民は、搾取され絞りつくされている。
- 中国の低所得層は、金がなければ、最低限の生活の権利を守ってくれる制度もないという恐るべき状態にある由。
- 絶対的権力は絶対的に腐敗する。
ダライ・ラマは、存命中での中国共産党の終了を予言。
ダンテス・ダイジは中国四分割を予言。