◎心と体がハンマーと一体になる
ハンマー投げの室伏広治は、ある時からハンマーを磨き始め、ハンマーと向き合い、ハンマーの気持ちになることができるようになった。やがて心と体がハンマーと一体になるようになって、それから記録がどんどん伸びるようになって、ついに2004年アテネオリンピックで金メダルを獲得できた。彼は、練習の終わりにいつも5分間ハンマーを磨いていたという。
禅の世界では、瓦を磨いて鏡にすることで悟りを開こうとした南嶽がいる。それを見て馬祖が「瓦を磨いても、鏡などできないでしょう。」と問うた。
南嶽、「それならば、坐禅してどうして仏になれようか?」と返されて、馬祖は何も言えなかった。
禅では、一人の僧が御簾を巻き上げるのはダメとされたが、別の僧が御簾を巻き上げるのは可とされた。同様に坐禅中にある僧が居眠りしていたら棒でたたかれたが、臨済は坐禅中に居眠りしても咎められなかった。
5分間ハンマーを磨いた誰もが金メダルを取れるわけではない。
そこには、道具を大切にするとかゾーンに入るということとは、別種の何かが存在している。