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防衛大学~「小原台の青春」

2012-11-12 | 自衛隊

やたらあちらこちらに出向いてはそれについて報告しているので、

「エリス中尉はいつこんな長文のブログをアップしているのだろう」

と不思議に思われる方もおられるかもしれません。
ブログを書くことが生活の全てではありませんので、
当然のことながら家事一般や雑用をはじめとする『主婦仕事』、
息子の勉強を見たり(数学と漢字は毎日)学校の送り迎えをしたり公文に連れて行ったり、
果ては自分のピアノとチェロとオルガンの練習、息子のチェロの練習のピアノ伴奏、
早朝には身体を鍛えるためにウォーキングとバスケットボール、
最近は乗馬をはじめたうえ、あろうことか「日米海戦戦略ゲーム」のソフトを送ってくるヤツもいて(←)

・・・・書いてみると自分でもこのクソ忙しさ(お下品?)に唖然とするのですが、
さらに、よくまあ毎日こんなだらだらと長文を、しかも写真の加工をしたり絵も描きながら、
ブログをアップし続けているものだと思います。

しかも、わたしがこの三年足らずの間に、何となく実社会において
「海軍、海自および自衛隊好き」
であるという認識がじわりじわりと周りの人々に伝わった結果、

「お好きでしたらこんなものもありますけど・・・」

というお誘いや情報を頻繁にいただくようになりました。
そして今回、ある防衛大卒の方が
「防大開校記念祭があるので是非行きましょう」
とお誘い下さったのです。

ああ、また書かねばならないことが増える・・・・。




横須賀は「三笠」を観たときにいきましたが、この浦賀は初めてです。
京急の浦賀駅の近隣のコインパーキングに車を留め、タクシーで防大へ。



この日はいいお天気でした。学園祭日和です。



ところで・・・・・。
皆さん、ご存じでした?
防大の制服って、海軍兵学校のあの制服とそのまま同じだって。
違うのは校章だけ。
前テープや、短ジャケット、あのスマートな兵学校の制服全くそのままです。
これを実際に見ると感動しますよ。

何か足りない、と思ったらそれは腰の短刀ですが、これは仕方が無いとして。




今までで防大の制服で街を歩いている人間を一人しか観たことがありません。
しかもそれは女子学生だったので、(男子生徒と全く同じスタイル)
「あれ?あの子いったい何のコスプレしてるんだろう?」と思ってしまったくらいでした。

この制服を制定するに当たっては
「海軍兵学校と学習院の制服を参考にした」と資料館の説明にはありました。
しかし、なぜそんな余計なことを書く?
学習院はあまり関係ないでしょ?
昔から海軍将校の軍服と同じ、ということで知られているスタイルではありますが。

このスタイルを防大設立当時から採用したのは、戦前から評判が良く、
世間の憧れの的だったところの兵学校の制服をそのまま残したいと皆が望んだからこそでしょ?

旧軍のだろうが何だろうが、美しいものをそのまま残して何が悪い。
そして、誰に対してしているのか分からないけど(分かるけど)要らない言い訳などしなくてよろしい。

「行進曲軍艦」も「陸軍分列行進曲」も「海軍旗」も、
どれもこれも「その美しさゆえ無くしてしまうに忍びない」から今日も残っているのです。
兵学校の短ジャケットの制服またしかり。

想像ですが、旧軍の海軍軍人で、戦後防大に息子を入れた父親、
あるいは夫の兵学校時代を知っている母親は、息子がこの制服に身を包んだ姿を見て
ひとしおならぬ感慨を持ったのではないでしょうか。


さて、この日の目的は防大生の実態を観察することではなく、
もっと重要なイベントがここに行くメインではあったのですが、
到着してみると、りりしい兵学校の制服を着た学生が、



学祭らしく、青春を謳歌している様子が大変目に付きましたので、
本日は「防大生の青春群像」的な観点から撮られた写真を中心にお送りします。
顔が分からないように加工してませんので、写真は小さめで。

防大生はご存じのようにここ小原台で宿舎生活をしてますから、
家族は勿論、ガールフレンドにも滅多に会うことはできません。
だからこそ、記念祭に訪れた彼女とこうやって連れだって歩いている学生は

非常に多し。

彼女も、彼氏の制服姿を見てドキドキ、と言うところでしょうか。
わかる!その気持ち分かるぞ。
コスプレじゃなくてなにしろこちらは本物でございますから。



なんて立派なプールでしょう。
なんと飛び込み専用プールまであります。
江田島と違って戦艦の上から海に飛び込むなんてことはしなくていいわけです。
体育の時間で、彼らは軍事教練は勿論、高飛び込みなんかもやってしまうんですね。
彼らと普通の大学生とで決定的に違うのは、制服があることと、
そして、勉強しているだけでなく、身体鍛錬とリーダーシップの育成、
三位一体の修養をしなければならないことです。



この日、昼過ぎに行ったら訓練展示が終わって後片付けをしていました。
これと観閲式、そして棒倒しが記念祭のメインイベントです。



構内のあちらこちらではこのような学生のプロフィールの書かれたボードを持って、
人々に見せながら歩いている学生あり。
どうやら最終日のダンスパーティに「ダンスを申し込むためのeメール」を
ゲットするためのもののようです。

わたしの場合はむしろ「ご子息の入学案内説明会コーナー」に行く、
と言う方が立場的にも年齢的にも相応しいので、当然ながら詳しく見なかったのですが。
このボードに見入っているお二人は、もしかしたら息子さんの写真を探していたりして・・・。



この部屋(これも海軍と一緒で分隊制)の紹介はやたら凝っています。
こんな各自の写真がボードに貼られているわけです。
因みにこれはエリス中尉が個人的に「確かに最も好青年」だと納得した、
石原、じゃなくて石川慎太郎学生の紹介。
かれはどうやら儀仗隊のメンバーのようですね。



ほうきを持たせたら小原台一の男。だそうです。



もしかして、ガールフレンドを真剣に求めてますか?
「ガチです・・・・ガチンコです」
だとしたら、その表情とポーズはいかがなものか。



こ、この顔文字は・・・・。
留学生は最初にがっつりと日本語を勉強するそうですから、
当然このような顔文字も使うのでしょう。



校舎内に入ってみたら、分隊のメンバー表がありました。


兵学校方式で、1年から4年まで二、三人ずつが一部屋で居住するようです。
ポンラワット、ガントーン。
留学生は、フィリピン、タイ、モンゴル、ベトナム、韓国などから来ているようです。
かれらは文化紹介のコーナー、民族的なフードのブースを開いていました。




米軍基地から遊びに来ているらしきネイビーさん発見。



これもネイビーのようですが、奥の私服の人は、
どうやら奥さんが日本人ですね。



校内暴力禁止。
上級生が下級生に鉄拳制裁で「修正」などもってのほかです。
それは明確に「犯罪」だと言うことになっているようです。
しかし、こういうポスターがあるということは、もしかしたら時折
そういった事件も起こったりするということなのでしょうか。



人混みの中を歩いてくる怪しい一団。


特設ステージでダンスショーを行う学生たちでした。



延々とショートコントのようなダンスが繰り広げられました。
どう反応していいかわからないパフォーマンスでしたが、何しろ膨大なダンスを
全て一糸乱れずやってのけるだけの練習を積んだことは確かで、努力賞です。

その彼らの演技を冷ややかに?見物する防大生たち。
彼らの会話を小耳に挟んだところによると、去年も同じようなパフォーマンスがあり、
それはYouTubeに出ていたそうです。
今年のがアップされているかどうかは分かりませんが、興味のある方は検索してみて下さい。
取りあえず、防大生たちからは終わってから「今年は微妙だな」という一言が聞かれました。





こんな感じのショーです。



彼女と見物している学生もあり。
その前では脚を怪我したらしい学生もあり。
この日、松葉杖を突いている学生を二人も見ましたが、日頃の訓練はこのような
けが人をしょっちゅう生むほど厳しいのでしょうか。



兵学校と同じスタイル、ではありますが、短ジャケットなのにベントがあって、
そのベントにもブレードがありますね。
この「裾ブレード」が、もしかしたら学習院風、と言い張る?部分なのかもしれないと思ったり。
あと、背中ダーツの入り方を見て下さい。
肩胛骨のラインに沿うようなカーブを描いたダーツ。
さすがに兵学校のはこういう仕様ではなかったように思われます。(たぶん)
このダーツの入れ方は、スタイルが良く見え、また動きやすいカッティングです。
(昔、洋服を自分で縫うのに一時ハマったことがあるエリス中尉です)

 夏服は金ボタンを廃止したのでかなり雰囲気が違います。



一人カメラ目線。
撮られていることに気づいたか?



この奇妙なダンスの後、出てきて自分たちの分隊のパフォーマンスの方が
ずっと面白い、と力説する山之口学生。
(この写真はアップすると名札も鮮明にわかるのです)
どうでもいいけど、この二人の学生、イケメンですね-。
因みに、彼の袖に桜のマークが3つ入っていますが、これは4年生の印、
一年生には桜はありません。
防大生の一人を捕まえて聞いてみたところ、
「一年生は、1ではなくゼロ、ということなんです」
とのことです。

「つぎのステージはイチロクイチゴからです!」
後ろの学生が一言声を掛けて
「失礼しました。4時15分です」
と言い直していました。

みんながエリス中尉みたいなヒトじゃないからね。



おなかが空いたのでお好み焼きのコーナーに並んでみました。
慣れない手つきで一生懸命やいているのはほとんどが一年生のようです。



味は・・・まあ多くを語るまい。



こういう「肩車」をあちらこちらで見たのですが、まさか息子じゃないですよね?



いきなり学生が制服で行進しているのに遭遇。
大講堂で講演が始まるので、それを聴講するためそちらに向かっています。
これが、エリス中尉が今回お誘いを受けてここに来た最大の目的、
五百旗頭(いおきべ)真氏の講演でした。



講演のことについてはまた日をあらためますが、この二人は、
居並ぶ学生に座ったままで気をつけさせたり休めさせたりする係。
これだけの学生の前に立つのですから、優秀な学生なのに違いありません。
左の女子学生は、もの凄い迫力がありました。
将来の女性艦長かもしれません。

 

講演が終わって外に出ると、少林寺拳法クラブの演舞がありました。
全国的にも非常にレベルの高い部だそうです。

 

どうやら一番の手練れと見た。

全くこうしてみると、普通の大学とかわりない雰囲気で、
彼ら防大生が大いに充実した学生生活を過ごしている様子がよくわかりました。



件の五百旗頭氏の講演ですが、防大の創立とその社会的意義について歴史的な観点から
これからの防衛までを語っていくという講演内容の中で、氏が

「防大の採用人数を決めるとき、上方修正を『あと40人』と申請したところ、
20人しか認めてくれなかった。
しかし、結局のところ、最初に40人を増やしたところで

最終的には20人くらいはいなくなるから

結局20人は最初から水増し分で治まるということでよしとなった」

ということを述べたとき、会場からは笑いが出たけど、学生たちは笑いませんでした。



一学年に20人の脱落は想定内、と言うことなのでしょうか。
学生生活における訓練の厳しさも一因でしょうが、やはり自分は自衛官になれない、
と学生生活中に何かの理由で思い至る学生も毎年確実に出るのでしょう。

ところでこの防衛大学ほど、医学のような専門大学ではなく普通学を学ぶ大学として、
(一般教養において博士課程のある士官学校は世界で防衛大だけだそうです)
将来の学生の目標が歴然とその学生時代から決まっている学校は他にないのではないでしょうか。

この日見かけた防大生たちは、若者らしく青春のまっただ中にあり、
その学生生活を大いに楽しんでいるかにも見えましたが、
自衛隊という名の「国防軍指揮官」、つまり「戦闘指揮官」への道を歩もうとする彼らには、
日々、我々には計り知れない厳しさに耐えることが要求されているのが現実です。
普通大学の学生とは全く違う、彼らならではの苦悩や挫折も、多々あるに違いありません。

「プリティ・リーグ」という映画で、監督のトム・ハンクスが、その辛さを訴える女子野球の選手に

「そういうものだ。でなきゃ皆がやる」

というシーンがあります。


彼ら防大生たちにも、ここで学んだものにしか見ることのできない世界が用意されているのです。
この大学の門をくぐり、この制服を身につけたいと思った日の自分の選択を最後まで信じて、
その世界を是非自分自身の目で見て欲しいと願います。