ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

ちいさなポニーと馬の物語~チッチとサリー

2012-11-23 | つれづれなるままに

彼は馬。
馬としては平均身長だが、成り行き上「のっぽのサリー」から
「サリー」と名付けられた。
小さな彼の恋人は、ポニーのチッチ。

サリーはある日、トレーニングのため、千葉の馬場から
富士山ろくのこの乗馬クラブにやってきた。
厳しいトレーニングを積んで数か月。

ある日この乗馬クラブに彼の千葉での恋人、チッチの姿があった。































註:彼、マックスはこの馬房で唯一のスタリオンである。
牝馬が近くに来ようものならもう大変なのである。

















よくわからない理屈だが、サリーはこの一言で覚悟を決めた。
馬とポニー、しかも去勢された馬とポニーは決して結ばれることはない。
そんな過酷な運命もまた甘んじて受けるのもまた人生。じゃなくて馬生。

馬生というと、読者の中には馬刺しを連想する者もあろう。
この馬刺しというのは文禄、慶長の役当時、
補給線を絶たれ食料が底をついた加藤清正軍がやむを得ず軍馬を食したのが始まりである。

「腹が減っては戦ができぬ・・・・ゆ、許してくれ!」
「馬を食べるなんて外道だがやむを得ん・・もぐもぐ」
「あれ?これ意外とウマくね?」「ウマー・・・・って誰がウマいこと言えと」
「ちょ・・・・・もう一頭追加で」「くーっ、これにしょうゆとワサビがありゃあなあ」
以後、生で馬を食うという馬にとってははななだ迷惑な食文化が日本に根付くことになる。

閑話休題。
とにかく、彼はそんな諦念に至ったのである。









千葉の馬場経営、ケンは日本語がペラペラであるが、
こういうときにはつい英語になってしまうのである。
日本人読者のために説明しておくと、「Holy Cow!」は「聖なる牛」ではない。
「おったまげた!」というときにこの世でアメリカ人だけが使用する言葉で
「聖なる」の後に「神」とか「ジーサス」というのは畏れ多いのでとりあえず「牛」にしているのである。
ちなみに筆者は空港でターンテーブルから出てきた荷物があまり多いので、
「Holy Moly!」
と隣のおばちゃんに驚かれたことがある。









結局彼が車に乗ったのは一時間後のことであった。

現在、サリーは千葉の馬場で立派に仕事をこなしている。
そして馬場の隅には彼の姿を見守るチッチの姿が今日も見られるという・・・・・。




お断り この話は実話をベースにした創作です。