私の故郷、岡山県では聞きませんが、隣の広島県の方言に「がんす」があると新聞のコラムに載っていました。
それによると、「がんす」は主に広島県安芸地方の方言と言いますから、広島県の西半分にたる地域の言葉のようです。
その使用法は「おめでとーがんす」「えー天気でがんす」などと使用される敬語表現で、標準語の「~でございます」「~です」に当たります。
この言葉は、元々は室町末期に使用例が見られる「ござります」だそうで、その後「ござんす」から「がんす」と変化したということです。
一方、同じ広島県でも東半分に当たる備後地方では「ありがとーでやんす」のように「~やんす」を使用するということです。
この「がんす」という言葉は全国各地の方言に残っているようで、東北では「おばんでがんす」や「がんすねー(ありませんね)」のような用法もあるということです。
広島の方言が全国に広まったのでがんすね。
「広島のソウルフード がんす」
ところで、この方言を商品名にしたソウルフードが広島県の一部地域にあるそうです。
以前、日経新聞の食紀行の中に「広島のがんす」が特集されており、その記事には次のように書かれていました。
『広島県には知る人ぞ知る食べ物がある。その名も「がんす」。魚のすり身にパン粉をつけ、油で揚げた食品だ。最近になって注目が集まり、都内の土産物店でも人気が高い。
「がんすの」の名前は「~でございます」という広島の方言に由来する。広島でも局地的な食べ物だ。
(以下略)』
この「がんす」は、戦後の混乱期に広島県呉市広地区でよく食べられていたといわれています。
現在でも地区内で秋祭りが行われた際にはおでんの具材として食べられるなど、地域にとってはおなじみの味として親しまれているそうです。
・これが「広島のソウルフード がんす」です。
「がんす娘」
「がんす」の誕生には諸説あります。
草津にあった網節商店(廃業)が生み出したという説のほか、呉市広地区で生まれたという説もあります。
呉市にある三宅水産はトウガラシ入りの「がんす」を1950年の創業当時から作っていたと言われていますが、広島県内でもさほど知られていなかったようです。
その「がんす」の知名度をアップさせたのが、三宅水産の三宅社長の娘の結花さんです。
彼女は約15年前から大きなコック帽をかぶり「がんす娘」として奮闘しているそうです。
お客さんに「ありがんす」とお礼をいう試食販売は呉市や広島市のスーパーなどから引っ張りだこであり、1カ月に23件の試食販売をこなしたこともあるといいます。
・「がんす娘。」として活動する三宅水産の三宅結花さん
最近では練り物需要が減っているそうですが、「がんす」は若者を引付けやすい揚げ物である点などから、若者の間に人気が出ているということです。
更に、そのままお酒のつまみになったり、カツ丼のカツの代わりに使ってもおいしいなど、どのような料理にでもアレンジできることが魅力だということです。
しかし、がんす娘の三宅さんによれば、大多数の広島人にとっては、がんすは「名前を知らない食べ物から、名前は知っているが、食べたことがない食品に昇格した段階」だということです。
「がんす」はまだ広島県安芸地方のローカルフードのようですが、その内、皆様のお近くのスーパーにお目見えするかも知れません。
その時にはご試食してみては如何でしょうか。