ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談・研究しています

下坂幸三『フロイト再読』2007・金剛出版-丁寧でこまやかな精神分析的面接に学ぶ

2024年10月23日 | 心理療法に学ぶ

 2019年のブログです

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 精神科医で心理療法家、家族療法家の下坂幸三さんの『フロイト再読』(2007・金剛出版)を再読しました。

 もう何回目になるでしょうか。

 本の中は何種類かの付箋とアンダーラインで大変なことになっています。

 下坂さんの晩年の論文が載っていますが、学ぶことばかりです。

 今回、印象に残ったことを二つ、三つ。

 一つめは、理論は繰り返し脇のほうに押しやることが大切で、それでも押し戻してくるものが重要、との指摘。 

 初心者のうちは、じーじもそうですが、つい理論に左右されがちですが、理論を忘れたくらいのところで勝負をすることがいいようです。

 たしか、精神分析のビオンさんも同じようなことを言っていたように思うのですが…。

 二つめは、言葉に安易に納得しないことの大切さ。

 同じ言葉でも、人によっては込められた意味がまったく違うので、徹底的にその意味するところをきいていくことが重要になります。

 それが即心理療法になるといえそうです。

 本書ではその具体例がたくさん示されていて、勉強になります。

 三つめは、心的現実の扱い方について。

 心的現実を尊重することは重要だが、全面的に肯定をすることの危険性も指摘されます。

 よくきくが、大きく頷くことはしない、という冷静な対応が、クライエントの歪んだ考えを少しずつでも訂正していく、との指摘は卓見です。

 統合失調症の患者さんの妄想のきき方にも通じそうです。

 最後、症例論文のクライエントさんの許可の問題。

 世の中、許可を得ることが流行となっていますが、その弊害を指摘します。

 まったく同感です。

 精神分析の藤山直樹さんも同じようなお考えだったと思います。

 プライバシーの保護というのなら、許可を求める行為自体がプライバシーの保護を侵害することになりえる可能性も考慮しなければならないだろうと思います。

 難しい問題ですが、クライエントさんの本当の意味での保護と尊重ということをもっともっと深く考え、議論していかなければならないと思います。

 いずれにしても、まだまだ力不足であることを痛感します。

 さらに勉強を深めたいと思います。         (2019. 2 記)

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 2024年10月の追記です

 理論をいったん脇に置く、とか、忘れる、とかいうことの大切さは、その後の読書経験でも、精神分析や心理療法の大家のみなさんがよくおっしゃっていることのように思われます。

 じーじなどは、これが逆転移か?とか、これが投影同一化か?とか、どう対応したらいいんだろうか?などと、余計なことを考えがちですが、あまり頭でっかちにならずに、目の前のクライエントさんの不安や怒りなどに、自分も身を浸してみて、感じたり、考えたりするような作業のほうが大切なんだな、といつも反省させられます。         (2024.10 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ  

    1977年、ある四流私立大学文学部社会学科を卒業、浦和、新潟家庭裁判所などで家庭裁判所調査官として司法臨床に従事する  

    2014年、定年退職間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士)を修了 

    2017年、臨床心理士になる

 仕事 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています

 学会 精神分析学会、遊戯療法学会会員

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区・北海道東川町(夏期)

 mail  yuwa0421family@gmail.com    

 

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樋口有介『風の日にララバイ』(新装版)2013・ハルキ文庫-柚木草平シリーズの「原点」の作品らしいです

2024年10月23日 | 小説を読む

 2024年10月のブログです

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 樋口有介さんの『風の日にララバイ』(新装版・2013・ハルキ文庫)を久しぶりに読む。

 単行本は、文庫本の解説によると、樋口さんの3冊目に書かれた小説で、樋口さんの有名な柚木草平シリーズより早いが、出版社の都合で柚木草平シリーズより遅れて1990年に刊行され、柚木草平シリーズの「原点」というべき作品らしい。

 確かに、主人公は柚木草平を彷彿させる中年男子であるし、『風の日にララバイ』という題名も、口に出すと少し恥ずかしい気がするほど若々しいが(樋口さん、ごめんなさい)、内容はなかなか素敵だ。

 本の帯には、39歳、子連れ、バツイチ、無職、-ときどき探偵、とあるが、いい味を出している小説だ。

 あらすじは例によって書かないし、探偵小説なので書くのはルール違反と思うので遠慮するが、別れた奥さんが殺され、娘の名誉を守るために真相を探るくたびれた中年男子の物語、というところだ。

 相方に、柚木草平シリーズに出てくる小高直海という小生意気な女の子(直海ちゃん、ごめん)を思い出させる女子大生が登場するなど、樋口さんらしい物語でもある。

 あらすじはなんとなく記憶にあったような気がしたが、読んでみると、だいぶ違っていたし、小説の細かい描写がやはり樋口さんらしくとても素敵で、楽しく読ませてもらった。

 やはりうまい小説家だなあと思う。

 おとなの生きる辛さと哀しさと小さな喜びといったものと若者の元気さや無邪気さなどがうまく書けていると感心する。

 そういえば、小説家は時代を感じるカナリヤみたいな存在だ、と言われるが、ここでも同性愛が出てくる。

 柚木草平シリーズでは面会交流がテーマの一つになっているし、樋口さんは本当にカナリヤちゃんだったのかもしれない(?)。

 何回読んでも読みごたえのあるおとなの作家だなあと改めて思う。

 秋の日にいい時間を過ごさせてもらった。      (2024.10 記)

 

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