ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

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木村敏『臨床哲学対話-いのちの臨床-木村敏対談集1』2017・青土社-精神医学と哲学の対話に学ぶ

2024年10月16日 | 精神科臨床に学ぶ

 2017年のブログです

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 精神科医の木村敏さんの『臨床哲学対話-いのちの臨床-木村敏対談集1』(2017・青土社)を読みました。

 木村さんの本を読むのは久しぶりでした(木村さん、ごめんなさい)。

 木村さんは名著『人と人の間-精神病理学的日本論』(1972・弘文堂)で有名で、当時、土居健郎さんの『「甘え」の構造』(1971・弘文堂)とともに一世を風靡しました。

 じーじは少し遅れて、1977年の就職後に、なぜか『分裂病の現象学』(1975・弘文堂)を読んで感動しました(こうしてみると、じつはこの頃から統合失調症に関心があったようですね)。

 そして、さらには『自覚の精神病理』(1970・紀伊国屋書店)などへと進んで、それからはずっと木村さんの著作と格闘しながら臨床をやってきた感じです(木村さんの本は難しいので、本当に格闘するという感じです)。

 今回の本は対談集なので比較的気軽に読めます。

 一番の収穫は、精神障碍者施設べてるの家のメンバーさんとの座談会の部分で、私はここで初めて、おそらくは木村さんのふだんの優しい、ていねいな精神科医ぶりを少しだけ拝見することができた感じがして、とても感動しました。

 高名な精神科医の先生ですが、さすがにその対話や面接の力量はお上手だなと感心させられました。

 また、同じく精神科医の中井久夫さんや安永浩さんとの鼎談も、三人三様のお人柄とお考えが垣間見られて、とても楽しく読ませていただきました。

 さらには、作曲家の武満徹さんとの対談では、それこそ木村さんの得意とする「あいだ」をめぐっての考察がくりひろげられ、知的好奇心をかき立てられました。

 ほかにも、有名な臨床家などとの対談があって、木村ファンには魅力的で、楽しく読める本だと思います。

 久しぶりに木村ワールドにひたって、知的な刺激をいっぱいいただき、元気になったような気がします。       (2017 記)

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 2024年10月の追記です

 口が悪いというか(?)、率直なお話をすることが多い精神科医で心理療法家の山中康裕さん(山中さん、ごめんなさい)は、名古屋市大時代に、教授の木村先生は面接が下手(?)なので、面接の上手な中井久夫さんを助教授にお招きした(?)、とある本で述べておられましたが、この本を読むと、木村さんの面接のうまさがよくわかりますね。       (2024.10 記)

 

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梨木香歩『雪と珊瑚と』2015・角川文庫-シングルマザーと赤ちゃんの小さな冒険の物語

2024年10月16日 | 小説を読む

 たぶん2015年のブログです

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 女性らしく、素敵で、読みごたえのある文章をたくさん書かれている梨木香歩さん、その梨木さんの小説『雪と珊瑚と』(2015・角川文庫)を読みました。

 久しぶりにいい小説を読んで、またまた泣いてしまいました。

 とてもいい物語です。

 シングルマザーの珊瑚さんとその赤ちゃんである雪ちゃんのお話。

 きれいすぎず、がんばりすぎず、力不足でたいへんなところもあって、等身大の若い女性の迷いと不安がさらりと描かれます。

 しかし、中身は深いです。

 周りの人間を含めて、弱さやずるさや何もかもが描かれます。

 救いはやはり赤ちゃん(とはいえ、赤ちゃんや小さな子どもさんの子育てはやっぱりたいへんですけどね)。

 赤ちゃんや子どもの存在というのは母親だけでなく、やっぱりおとな全体にとって大切なものなのでしょう。

 そして、子育てというのは、きれいごとではけっしてすみませんが、しかし、大きな営みなのですね。

 そのあたりの大変さや苦しさ、迷いなども丁寧に描かれていると思います。

 悪戦苦闘の、きれいごとでない、等身大のシングルマザーと赤ちゃんと周囲の人々の物語、いちど読んでみてください。

 きっと、生きていくこともいいものだな、と思うのではないかなと思います。

 たまに本を読んで涙を流すことも、こころのおそうじにいいことのようです。       (2015?記)

 

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