ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

河合隼雄・谷川俊太郎『魂にメスはいらない-ユング心理学講義』1993・講談社α文庫

2024年10月04日 | 河合隼雄さんを読む

 2021年10月のブログです

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 河合隼雄さんと谷川俊太郎さんの『魂にメスはいらない-ユング心理学講義』(1993・講談社α文庫)を読みました。

 文庫本で読むのは初めて。

 単行本は1979年に朝日出版社から出ていて、じーじは家裁調査官になってすぐに買って読み、すごく勉強になりました。

 以来、何回か読ませてもらったのですが、引っ越しなどのせいか、いつの間にか行方不明になってしまいました。

 最近、また読んでみたくなり、本棚をあちこち探したのですが、例によってやっぱり見つかりません。

 それで清水の舞台から飛び降りる覚悟で(おおげさかな?)、この文庫本を購入しました(奥さんには内緒です)。

 読んでみると、やはりすごい本です。

 谷川さんの質問が、詩人の立場からの深い質問ばかりですごいせいもあるのですが、それを河合さんがユング心理学にそってわかりやすく説明されて、その結果、お二人が、こころのあり方について見事に深く語りあっておられます。

 有名な箱庭療法を初めとして、ユング心理学のいろいろな考え方を学ぶのに最適ですし、初学者が学習を深めるきっかけにもなりそうです。

 印象的だったのは、河合さんがユング派の資格を取りながらも、ユング教徒にはならないと話されているところで、臨床家は教条的になってはならず、常に創造的でなければいけないのだろうな、と改めて思いました。

 いずれまた、再読をして、理解をさらに深めたいと思います。      (2021.10 記)

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 2024年1月の追記です

 この本を読むと、お二人の予断のない、真摯な対話の様子に、感激させられます。

 すごい人たちは、分野を超えても、本当にすごいんだな、とこころから思います。      (2024.1 記)

 

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郷静子『れくいえむ』1975・文春文庫-軍国少女の健気さと迷いと青春を描く

2024年10月04日 | 小説を読む

 2024年10月のブログです

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 郷静子さんの『れくいえむ』(1975・文春文庫)をすごく久しぶりに読む。

 じーじが持っている文庫本は1976年の本で定価180円。

 おそらく郷さんが芥川賞を受賞して、それで大学生の時に読んだと思うが、なんと50年ぶりだ。

 なんとなく重たい小説、という印象を持っていたので、再読が遅くなってしまった(郷さん、ごめんなさい)。

 今、読み返してみると、確かに重たい内容の小説だが、端正な日本語で書かれているので、なんとなく透明感のある素敵な小説に思える。

 あらすじは例によってあえて書かないが、太平洋戦争中に健気に生きた軍国少女の真面目な考えと行動、そして、その中での迷いなどを描く。

 真面目な少女の実直で賢明な姿が描かれ、親友との交友や文通では健気さと正直さが際立つが、少女特有の青春のときめきなども初々しい。

 しかし、そんな普通の少女が、国家権力による間違った思想を信じてしまう怖さについても考えさせられてしまう。

 少女は日本が戦争に負けても、降伏することはない、と信ずる。

 それは戦争中に政府や軍部から言われつづけていたことだ。

 降伏をするくらいなら、皆で死ぬ。そう信じて疑わない。

 しかし、爆撃で家族が死に、苦しいさなかに、日本の攻撃で同じように苦しんだであろう国々の人々のことも想う。

 道端で兵士が話す中国戦線での虐殺の話を聞き、皇軍に疑問を抱く。

 反戦を声高に叫ぶことはなく、少女は結核で死ぬが、その余韻はとても大きい。

 おとなのずるさを鋭く告発する。

 少女のすがすがしさがとても哀しい小説だ。       (2024.10 記)

  

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