ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

松木邦裕ほか編『抑うつの精神分析的アプローチ-病理の理解と心理療法による援助の実際』2007・金剛出版

2024年10月15日 | 心理療法に学ぶ

 たぶん2017年のブログです

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 松木邦裕さんほか編集の『抑うつの精神分析的アプローチ-病理の理解と心理療法による援助の実際』(2007・金剛出版)を再読しました。

 この本もかなりの久しぶりで、抑うつの患者さんが多い世の中なのに、まったくの勉強不足だなと反省しきりです。

 本書は松木さんらのていねいで正確な全体的な論文と、豊かで深みのあるいくつかの事例論文からなっており、そのいずれもがのそれぞれに読み応えがあり、勉強になります。

 アンダーラインや付箋が賑やかな中で、今回、特に印象に残ったのは、松木さんの総説と鈴木智美さんの事例。

 松木さんの論文は初心者にもわかるようなていねいな論文で、しかも、内容は深く、何度も読む必要がありそうです。

 じーじは、この中でも、悲しみをこころに抱えることの大切さを論じたところに感動をしました。さらに読み深めたいと思います。

 鈴木さんの事例は、精神科医の抱える環境としての働きかけを、いくつかの事例を挙げて論じていますが、どの事例もすばらしい治療で感心させられます。

 そして、鈴木さんが、生まれ出たそのときから、死に向かっていく人生そのものが、悲哀を受け容れていく過程であり、同時に成熟していく過程ともいえる、と書かれているところに本当に感動をしました。

 同じようなことはなんども聞いていますが、今回ほどこころに迫ってきたのは初めてでした。

 それだけじーじが年を取り、死に近づいているせいもあるでしょうが、深く響く言葉でした。

 精神分析らしい言葉といえば、そうでしょうし、しかし、ここには、人生の深さと喜び、美しさが現れているように思えます。

 諦め、の深い理解とそれにまつわる生きることの深さや喜び、美しさ、そして、成熟が示されているように思います。

 まだまだうまくご紹介できませんが、さらに、勉強と努力を続けていきたいなと思いました。            (2017?記)

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 2020年12月の追記です

 こころの成熟とは悲哀を受け容れていく過程である、との言葉はやはり深いです。          (2020. 12 記)

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 2024年1月の追記です

 唐突ですが、(たぶん)高校の倫理社会で習った、仏教でいうところの、四苦、生老病死、という言葉を思い出しました。

 諦める、という言葉には、夏目漱石さんもおっしゃるように、仏教の、明らかに見る、という意味も含まれるのだそうですが、そうだとすると、上記のような悲哀の受容ということも含まれているのだろうな、と思ったりします。        (2024.1 記)

 

 

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瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』2015・新潮文庫-中学男子の生きにくさと友情と希望を描く

2024年10月15日 | 小説を読む

 たぶん2015年のブログです

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 瀬尾さんの中学男子を描いた小説、『あと少し、もう少し』(2015・新潮文庫)を読みました。

 またまた、泣いてしまいました。

 年のせいか、涙もろくなってきているようですが、いい小説です。

 中学男子の駅伝をめぐるひと夏の小説。

 スポーツ根性小説ですから、涙は必見でしょうが、予想を裏切りません。

 しかし、単なるお涙ちょうだい小説とは違います。

 まずはそれぞれの登場人物の抱えている「生きにくさ」。

 瀬尾さんの小説の登場人物にはこういう人たちが多く出てきますが、今回も、みんな等身大に悩み、苦しみ、もがいている中学生と、その周囲にいるおとなたちが描かれます。

 そういう「生きにくさ」を抱えている登場人物が、お互いの不器用な優しさや心配りで、傷つけあいながらも少しずつ変わっていきます。

 部活の顧問をまかされてしまった、ひ弱でちょっと場違いな美術女子教師も、それはおんなじです。

 また、中学生の母親やおばあちゃんなど、大人の人たちの姿もおんなじです。

 解説を書いている三浦しおんさんが、走ることを描いた小説は、なぜ、ひとの本質に迫るのだろう、と述べておられますが、まったく同感です。

 走ることを通じて、ひとが変わる姿が描かれます。

 みんなで走ること、それだけで人は変われるようです。

 走ることは生きることに繋がってくるようです。

 そして、走ることにその人の生きざまが現れるようです。

 友情、思いやり、がんばり、などなど…。

 久しぶりにこころが、すがすがしくなったような感じがします。

 いいですね、中学男子。

 そして、周囲のおとなたち。

 そういう人たちと一緒に生きていきたいなと思います。       (2015?記)

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 2019年4月の追記です

 瀬尾さんが本屋大賞を受賞されました。おめでとうございます。       (2019.4 記)

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 2024年10月の追記です

 上の孫娘が中学2年生になりました(じーじのブログのプロフィール欄の写真の中でおしりを向けているのが10年前の孫娘です)。

 瀬尾さんの描く中学女子の世界もなかなかいいですね。

 孫娘に勧めるかどうか、迷っているところです。        (2024.10 記)

 

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