ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

横山知行「『正しさ』の向こうに」2012・遊戯療法学会ニュースレター

2024年10月28日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2012年のブログです

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 精神科医で新潟大学教授の横山知行先生のエッセイ「『正しさ』の向こうに」を読みました。

 いいエッセイだと思いました。

 ある意味、痛快な文章です(横山先生は温厚なかたですから、じーじのように過激な表現はなさっていませんが…)。

 エビデンスの必要性に触れながらも、エビデンスだけでは測れない大切なもの、実証的な「正しさ」だけでは測れない大切なものの存在、それを忘れないことの大切さを述べられていると思いました(間違っていないと思うのですが…)。

 そして、遊戯療法における「間」の重要性を指摘され、ホイジンガさんを引いて遊びの時空間の中で展開される豊かな世界を掬い取ることの大切さを述べておられます。

 ホイジンガさんは以前に読んでいたのですが、大切なところを読み落としていました。

 もう一度、じっくりと読み直そうと思いました。

 いい課題をいただけたと思いました。

 改めて、遊戯療法の、そして「遊び」の奥深さを知らされた一文でした。     (2012.12 記)

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 2023年11月の追記です

 今から11年前の文章です。

 ホイジンガさんはまだきちんと再読をしていません。勉強不足です。

 できればカイヨワさんとウィニコットさんもきちんと再読をしようと思っているのですが…。頑張ります。     (2023.11 記)

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 2024年10月の追記です

 横山先生はじーじの放送大学大学院の修士論文の指導教員をしてくださった方。本当にお世話になりました。

 初めてお会いした時に、面会交流や幼児のこころの発達について質問をすると、本棚から数冊の参考文献をさっと出してきてくださって、じーじは、大学院の先生というのはすごいな!とびっくりさせられました。

 同時に、横山ゼミの卒業生や在学生でやっている勉強会に誘っていただいて、そこには博士課程で勉強している臨床心理士さんや大学教員の方々もいらして、とてもレベルの高い勉強会で本当に役に立ちました。

 じーじの臨床心理士としての基礎はこの勉強会で養われたと言っても過言ではありません。

 横山先生には遊戯療法学会や県の臨床心理士会の研修会でも、勉強になるお話をたくさん聞かせていただきました。     

 最初は全くの偶然の出会いだったのですが、すばらしい指導者に出会えたことを本当に感謝しています。      (2024.10 記)

 

 

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樋口有介『雨の匂い』2007・中公文庫-おとなへの愛憎に冷静に対峙する青年を描く

2024年10月28日 | 樋口有介さんを読む

 2018年のブログです

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 なにか面白そうな小説はないかな?と本棚を眺めていたら、隅っこのほうに樋口有介さんの『雨の匂い』(2007・中公文庫)があったので、再読しました。

 2007年の本で、読むのはかなりしばらくぶりなので、たぶん2回目です。

 当然(?)なかみもほとんど忘れていたのですが、読んでみるととてもおもしろく、2日で読んでしまいました。

 少し暗い小説なので、60歳を過ぎた今のじーじにはちょうどいい小説なのですが、11年前のじーじには少し暗すぎて、本箱の隅に置いたのかもしれません。

 暗い小説です。

 有介版『悪霊』かもしれません。

 主人公の男子大学生が、癌で入院中の父の看病と在宅療養中の祖父の介護をするという、それだけでも暗い設定ですが、しかし、主人公はそれを淡々とこなし、そういう中でも女友達らと淡々とつきあって、有介ワールドの青春物語が進行します。

 しかし、父親と別れた母親が登場をして、金を無心するあたりから物語は暗転してきます。

 母親だけでなく、バイト先のいいかげんなおとなやその他のいやなおとなも登場して、淡々と生きている主人公を脅かします。

 そして、物語は『悪霊』の世界に。

 もっとも、こういう暗さは、今の年取ったじーじにはなじみのある(?)世界で、違和感はありません。

 むしろ、こんな中にこそ、人生の真実はあるのだろうな、と思います。

 生と死、生きることの苦しさと辛さ、切なさ、そして、生きる意味、などなど、考えることや感じることはたくさんありそうです。

 ストーリーを追うだけでなく、余白に漂うものを丁寧に感じることに意味があるのかもしれません。

 今、この時、この年齢で、この小説を再読できてよかったな、と思います(主人公は男子大学生ですが、若い人はもう少し年を取ってから読んだほうがいいのかもしれません)。      (2018.10 記)

 

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