ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

神田橋條治『精神科講義』2012・創元社-患者さんを大切にする精神科医に学ぶ

2024年12月19日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2017年ころのブログです

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 精神科医で精神療法家の神田橋條治さんの『精神科講義』(2012・創元社)を再読しました。

 神田橋さんは、じーじが若い頃、名著といわれている『精神科診断面接のコツ』(1984・岩崎学術出版社)や『精神療法面接のコツ』(1990・岩崎学術出版社)などという面接技法の本を読ませていただいて、心理療法の勉強をさせていただいたかたで、じーじにとっては、土居健郎さんや河合隼雄さんなどとともに重要な先生です。

 その神田橋先生の精神科医療についての本で、この本もじーじにとっては中井久夫さんの精神病についての何冊かの本と並んで大切な本です。

 今回がたぶん3回目の再読ではないかと思うのですが、アンダーラインでにぎやかなだけでなく、付箋があちこちにあって、本がだんだんと膨らんできてしまいました。

 それでも、今回、初めて気づいた箇所もあったりして、あいかわらず自分の読みの甘さを反省させられましたし、何回読んでもいい刺激になる大切な箇所もいっぱいあって、勉強になりました。

 今回、印象に残ったことのひとつは、他の大家もよく言われていることですが、心理療法において、わからないところをきくことの大切さ。

 すぐにわかった気にならないで、不思議なところ、よくわからないところをていねいにきくことの重要性を指摘されています。

 そして、共感というのは、わからないところをきいて、双方がわかるからこそ共感が生じる、と述べています。

 また、治療者が、ああでもない、こうでもない、といろいろきいているうちに、患者さんもそういうやりとりの中で気づきを得るからこそ、患者さん自身の気づきになる、ともおしゃっています。

 さらに、この時に、治療者の理解はできるだけがまんをして言わずにいて待つと、それが患者さんの気づきを得られやすくする、とも述べられています。

 このあたりは、治療者が事態を理解するだけでなく、患者さんも事態を理解できる道筋が示されていて、たいへん勉強になりました。

 他にも、相手を大切にすることが即自分を大切にすることになること、看護においては意見の統一より個性をいかすことが重要、パワーポイントの功罪と双方向の議論の大切さについて、などなど、勉強になることが多くありました。 

 なにより読んだ後にすがすがしい気分になれて、本当にいい本だと思います。

 いつかまた読んでみたいなと思いました。           (2017?記)

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 2024年3月の追記です

 今ごろ気がついたのですが、神田橋さんも、わからないことに耐えることの大切さ、を述べておられました。       (2024.3 記)

 

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村上春樹『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』2012・文春文庫-その2・インタビューの楽しみ

2024年12月19日 | 村上春樹さんを読む

 2019年のブログです

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 久しぶりに村上さんの『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです-村上春樹インタビュー集1997-2011』(2012・文春文庫)を再読しました。

 村上さんが夏目漱石さんの『坑夫』が好きだ、というお話をどこかで読んだ気がしていて、それでじーじも60を過ぎてから『坑夫』を読んだくらいなのですが、どこで読んだのかはっきりしなかったのですが、やはり本書だったようです(先日、ご紹介をしたジェイ・ルービンさんの本でもそのようなお話が出てきます)。

 本書はインタビュー集ですが(副題が『村上春樹インタビュー集1997-2011』)、じーじは島森路子さんと古川日出男さんのインタビューが個人的には好きです。

 お二人とも、村上さんのことや村上さんの作品をよく理解されたうえで、お話をお聞きしている様子が見えて、読んでいてとても心地いいです。

 村上さんも比較的リラックスをされてお話をしている感じがします。

 いいインタビューだと思います(じーじもこういうインタビュー、面接が目標なのですが…)。

 前回も書いたように、いろいろと大切なことが述べられていますが、あまり堅苦しく考えずに、楽しみながら読むことが一番良さそうに思いました。

 大切なことは自然にこころに入ってくる感じがします。

 いつかまた読みたいと思いました。        (2019.3 記)

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 2024年12月の追記です

 その後、漱石さんの『坑夫』を読みました。

 たしかに不思議な小説です。

 情けない男子の情けないお話なのですが、周りの登場人物がうまく書けているせいか、不思議と読ませます。

 意外といい小説なのかもしれません。        (2024.12 記)

 

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