2018年のブログです
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河合俊雄さんと田中康裕さんが編集をした『大人の発達障害の見立てと心理療法』(2013・創元社)を読みました。
なかなか難しい本でしたが、かなり刺激的な本で、勉強になりました。
お二人ともユング派の分析家ですが、ユング心理学だけにこだわらずに、精神分析や心理療法全般にも目配りがなされており、バランスのいい本です。
発達障碍、と聞くと、空気を読めない、とか、自己流とか、マイペース、とかいったイメージが湧いてきますが、河合さんは、それらよりも、主体のなさや主体の未成立がその本質ではないか、という仮説を持っていらっしゃいます。
主体が未成立だからこそ、状況に関係なく、刺激に流されてしまい、状況と関われないのではないか、とおっしゃっているように思います(間違っていないと思うのですが…)。
したがって、主体を確立することが大切なことになるようです。
そして、分離、発生、誕生などといった言葉や概念がキーワードになるといいます。
そのうえで、発達障碍の人の心理療法においては、まず、周りとのずれの気づきが重要で、それも内省としてではなく、具体的なことがらからを通しての気づきや実感が重要になるようであり、そういう点で従来の心理療法と少し違う工夫が大切にだろうといいます。
主体のなさの例証として、風景構成法という心理テストで、普通は10歳くらいの子どもに見られる、川が立つ、という描き方が、発達障碍の人では遅くに出現するという現象が挙げられていて、とても示唆的でした。
いずれまた、近いうちに再読をして、さらに深く読み込んでいきたいなと思う本でした。 (2018. 10記)
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2019年11月の追記です
発達障碍のかたは、悪気がないだけに、とても傷ついている人が多いと思います。
まずはその怒りやうらみの受けとめが大切になりそうです。
そのうえで、周囲とのずれの明確化や直面化を一緒に考えていくことになるのでしょうか。 (2019. 11記)