ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

カウンセラーが、生き残ること、ということについて考えてみる-精神分析に学んだこと、一つ、二つ

2024年12月02日 | 心理臨床を考える

 2024年10月のブログです

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 カウンセラーが、面接場面で、生き残ること、ということについて、少し考えてみる。

 カウンセリングや心理療法が始まると、初めは、クライエントさんがカウンセラーに信頼感を寄せて、面接場面でも良好な関係ができる。

 しかし、面接が進んで、クライエントさんが、なんでも話しても大丈夫、と安心ができると、次第に、クライエントさんの困っている人間関係や悩んでいる人間関係のあり方が面接場面に出現してくる。

 クライエントさんは、ふだん抱えている不安やおそれ、怒り、攻撃など、日常生活の中で周囲の人に出すと危険な感情をカウンセラーにぶつける。

 その時、カウンセラーは、面接場面で、クライエントさんの感情に巻き込まれ、フラフラの状態になりながらも、言い逃れや報復などはせずに、生き残ること、が大切になる、と精神分析は説明する。

 カウンセラーが、クライエントさんの激しい感情の渦の中に巻き込まれながらも、専門家として、辛く、苦しいであろうクライエントさんの心情を少しでも理解をして、その場に、生き残る、ことが重要な仕事になる。

 クライエントさんは、ふだんは周囲に感情をぶつけて、失敗し、傷ついている経験が多いだろうが、面接場面でカウンセラーに感情をぶつけても、人間関係が壊れないことを経験する。

 クライエントさんが日常生活で、フロイトさんのいう、反復、をしてきた人間関係の破綻が、面接場面では破綻しないことを経験することで、クライエントさんの辛く、苦しい反復に変化が起こる可能性が生じる。

 ここが、カウンセラーの堪えどころであり、勝負どころだろう。

 カウンセラーが、面接場面で生き残ること、は、カウンセラーを護ると同時に、クライエントさんをも護る。

 クライエントさんは、その護りの中で、それまでの辛く、苦しい反復を少しだけ変化させ、日常生活での人間関係が変化することに繋がるかもしれない。

 カウンセラーが、面接場面で、生き残ること、は、このようにクライエントさんの心的成長にとても大切な仕事なのだろうと思われる。      (2024.10 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 1954年、北海道生まれ  

 1977年、家庭裁判所調査官として司法臨床に従事  

 2014年、放送大学大学院(臨床心理学プログラム)修了  

 2017年、臨床心理士

 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の相談・援助などを研究

 精神分析学会、遊戯療法学会会員

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006、『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011、『遊戯療法学研究』)ほか 

 新潟市西区・北海道東川町(夏期)

 連絡先 メール  yuwa0421family@gmail.com  

 

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沢木耕太郎『深夜特急3-インド・ネパール』1994・新潮文庫-ひとり旅を読む

2024年12月02日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2018年のブログです

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 沢木耕太郎さんの『深夜特急3-インド・ネパール』(1994・新潮文庫)を再読しました。

 先日、ロンドンに着いた第6巻を読んだ後、次はどこに行こうか(?)どっちを読もうか、と迷いましたが、結局、第3巻の本書を読むことにしました。

 沢木さんのインドの旅は、忘れっぽいじーじでも、なんか悲惨な印象が薄っすらと残っていて、やや敬遠していたのですが、ネパールの旅に興味があって読んでしまいました。

 読んでみると、やっぱりインドの旅はかなり悲惨で、しかし、それを冷静に描写する沢木さんのすごさを感じました。

 インドの悲惨さの中で、唯一、希望が感じられたのが、アシュラムという孤児院の存在。

 日本からボランティアで来ていた大学生らとのインドの子どもたち相手の生活は、その地の自然の美しさとともに印象深いものでした。

 希望を失い、無感動になっている子どもたちが、だんだんと子どもらしくなる姿は感動的です。

 特に、小さな女の子が、小さな髪飾りを見て、生き生きとして感情を取り戻していくさまは素晴らしいものがありました。

 おとなが逆に子どもに、大切なものを教えられるところがすごいですし、それを文章にできる沢木さんの感受性がすばらしいと思いました。

 一方、ネパールは予想どおり、日本に似て、インドに比べると温和な土地のようですが、あまり大きなできごとはなく、通過します。

 そして、再度のインド、やはり強烈です。

 しかし、病気で倒れ、宿がなく、やむなく安宿の女性用の部屋で寝ていた時のできごとは美しいです。

 沢木さんを心配したフランス女性が静かに眠るために向こうのベッドで洋服を脱ぐ場面は、映画を観るように美しい描写で、じーじでもその想像の美しさに息をのんでしまいました。

 旅はやはりハプニングがあるから面白いですよね(もっとも、じーじのひとり旅では、財布を落とすような事件はあっても、美しい女性との思い出などはまったく起こりませんが…)。

 また、旅に出たくなりました。

 その前に、第2巻を読まねばなりません。

 そして、行方不明の第1巻を探さねばなりません。

 年を取っても、結構忙しいじーじの毎日です。        (2018.11 記)

 

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