ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

河合隼雄編『ユング派の心理療法』1998・日本評論社-ユング派の臨床に学ぶ

2024年12月17日 | ユング心理学に学ぶ

 2018年のブログです

     *  

 河合隼雄さん編集の『ユング派の心理療法』(1998・日本評論社)を再読しました。

 このところ、なぜかユング派が気になっていて、この本も本棚の隅に見つけて、読みました。

 ちょうど20年前の本で、じーじも2~3回読んでいるはずで(?)、付箋も2種類の付箋があちこちに貼られ、アンダーラインも引かれているのですが、例によって、記憶はあいまいで、またまた新鮮な(?)気持ちで読んでしまいました。

 面白かったです。

 古い本なので、今は大家になった人達の中堅時代の論文が多いですが、みなさん、当時は日本に13人しかいなかったユング派の資格を取った人たちで、当時の熱意みたいなものが伝わってきます。

 もちろん、中身もそれぞれ多彩で、深く、今読んでも勉強になりますし、いろいろと刺激されるところが多いです。

 今回、印象に残った第一は、人と人が傷ついて出会う、という視点。

 今はユング派でも、その後の展開がありますし、精神分析でも議論されていますが(北山修さんなども述べられています)、やはり大切な視点だろうと思います。

 それと関連しますが、第二は、転移と逆転移。

 互いに傷つきながら、治癒に至るという考え方は、なかなか意味深いです。

 第三は、イメージの重要性。

 無意識からのイメージに重きを置くユング派らしい論点だと思います。

 総じてユング派は、私見では、人間の自然治癒力や無意識の治癒力に重きを置いているように思いますが(もちろん、一方で、無意識の破壊力についても警告をしています)、安易に陥らない、真摯で全体的な無意識との対話が大切になってくるように感じられます。

 そして、ここには、精神分析がいうところのエロスや攻撃性との統合も含まれてくるのだろうと思います。

 読んでいると、本当にいろいろな意味で刺激を受ける本で、さらに深く考えてみたいと思いました。          (2018 記)

 

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伊坂幸太郎『サブマリン』2016・講談社-陣内くん、主任家裁調査官になる

2024年12月17日 | 小説を読む

 2017年のブログです

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 伊坂幸太郎さんの『サブマリン』(2016・講談社)を読みました。

 名作『チルドレン』に続く、家裁調査官の陣内くんと武藤くんの物語です。

 2016年3月出版の小説ですが、家裁調査官をやめてしまって情報に疎くなっていたのか、つい最近になってようやく、このすばらしい小説の存在に気がついて、読むことができました。

 おもしろかったです。

 笑ったり、泣いたりで、忙しい小説でした。

 あらすじは書きません。

 書く能力がないせいもありますが(?)、この小説はぜひ、自分でじっくりと味わってほしいと思います。

 いろんな人物が出てきます。

 復讐に燃えていた少年、パソコンでしか世の中が見えなくなっていた少年、その家族、交通事故の加害少年だった青年、主任になったもののマイペースの陣内くん、結婚をして小さな子ども二人の父親になった武藤くん、一見冷めている女性調査官の木更津さん、さらには、盲目の永瀬さん、永瀬さんと結婚をした優子さん、などなど。

 人の憎しみと救い、助けと喜び、罪と罰、善と悪、苦しみと愛、などなど、声高ではないですが、触れられているテーマは深いです。

 家裁調査官、その組織は、じーじには少し窮屈で、在職中はやや息苦しい思いをしていましたが、しかし、この仕事はとても大変ですが、やはり素敵だと思います。

 陣内くんや武藤くんのような自由で自立した調査官が活躍できるようなおおらかな家庭裁判所であってほしいな、と外野からも応援したいなと思います。         (2017 記)

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 2020年12月の追記です

 同じく家裁調査官補ちゃんの活躍を描く柚月裕子さんの『あしたの君へ』(2019・文春文庫)も面白いですよ。       (2020.12 記)

 

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