ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじの臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどを研究しています

「馬が合わない」人や「虫が好かない」人について考えてみる-ユング心理学に学んだこと、一つ、二つ

2024年12月08日 | 心理臨床を考える

 2024年12月のブログです

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 「馬が合わない」人や「虫が好かない」人について考えてみる。

 以前、河合隼雄さんがどこかに書いていたが、日本語でいう「馬が合わない」人や「虫が好かない」人は、「自分」が合わないのではなく、「馬」や「虫」が合わない、という表現をしていることが面白い、と指摘をされていた。

 決して、「自分」ではなく、「馬」とか「虫」という、なんだかわけのわからないものが合わないわけである。

 そして、河合さんは、これは、ユング心理学でいう「無意識」が合わないことを表している、と述べられている。

 ユング心理学では、こころは意識と無意識からなっていると考え、意識の中心を「自我」、無意識を含めたこころ全体の中心を「自己」と呼ぶ。

 そして、意識偏重、自我偏重の現代社会を危惧し、無意識を含めたこころの全体、自己を大切にすることを述べる。

 「馬」が合わなかったり、「虫」が好かなかったりする人は、なんだか理由はよくわからないが、こちらの無意識と合わない、なにか無意識が刺激をされている状態にある、と考えるわけだ。

 そして、河合さんは、こういうこちらの無意識が刺激をされる場合には、こちらの自分が人生で生きていない側面、自分が抑圧しているこころの側面を「馬」や「虫」が教えてくれている、と考えることが大切だという。

 このように考えてみると、理由がわからないのになんかギクシャクしている人間関係が、少しは冷静に、客観的に眺められるようになるのかもしれない。

 もっとも、これは、なかなか難しいことであるが、こういった視点を持っていることは大切だなあ、と思う。

 頭でっかちで、こころを大切にしない人たちが多い現代社会の歪みや人間関係を視るには、重要な視点の一つかもしれないなあ、と思ったりもする。

 今後は、「馬」さんや「虫」さんを大切にしていこう(?)と思っているじーじである。        (2024.12 記)

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 同日の追記です

 上記の文章を書いた後、河合さんの引用に間違いがあってはまずいと思い、じーじの本棚にある何冊かの河合さんの本をパラパラとめくる。

 すると、河合さんの初期の名作『コンプレックス』(1971・岩波新書)に「虫」さんのお話が、『大人の友情』(2008・朝日文庫)に「馬」さんと「虫」さんのお話が出ている。

 『大人の友情』には、「腹の虫がおさまらぬ」という表現も出てきて、「虫」さんが大活躍している。

 もの忘れのひどいじーじには、めずらしく、当たり!だったが、それだけ印象が強かったのだろうと思う。

 もっとも、ユング心理学の解説は、あくまでもじーじの理解によるので、もし間違いがあったら、じーじのせいだ。

 逆にいうと、じーじはユング心理学をこの程度にしか理解できていないということだが、この程度の理解でも結構役に立っているので、やはりユング心理学はすごいと思う。

 精神分析の一部の人たちには、実現すべき「自己」などはない、と厳しいことをいう人もいるが、じーじが素人なりに思うのは、精神分析とユング心理学は方法論が違うだけで、めざしているものは意外と近いのではないかなあ、という印象を受ける。

 いずれにしても、両者ともすごい学問だなあ、と改めて思うじーじである。

 

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あだち充『じんべえ』1997・小学館-血のつながらない娘を育てる中年男子とその娘の微妙な関係を描くおとなのマンガです

2024年12月08日 | 小説を読む

 2024年12月のブログです

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 あだち充さんの『じんべえ』(1997・小学館)を久しぶりに読む。

 今年の能登半島地震で崩れた本の山を積み直していると(今もなんと(!)作業継続中です)、下のほうに偶然、見つける。

 1997年の本で、その後、一度、読んだ記憶がかすかにあるが、すごく久しぶり。

 作業を中断して、読んでしまった。

 もともとは、「ビックコミックオリジナル」に連載されたらしい(「ビックコミックオリジナル」は『家栽の人』(知っているかなあ?)を連載していたことがあり、なかなかいいおとなのマンガ雑誌だ)。

 血のつながらない娘を育てる中年男子とその娘を描くおとなのマンガ。

 両者の微妙な心理がとてもうまく、丁寧に描かれていて、感心する。

 下手な小説より、心理描写が繊細で、すごいと思う。

 無理に例えるならば、荻原浩さんの小説をマンガにしたような感じ(荻原さんの小説を知らない人は、何のこっちゃ、と思うだろうが、知っている人はうなづいてくれるかもしれない)。

 中年男子の生きる辛さや哀しみ、優しさ、怒りなどと、少女の淋しさや哀しみ、喜びなどが、あだちさんの美しいマンガで、ユーモラスにうまく描かれる。

 名作だと思う。

 それにしても、あだちさんのマンガは、人間関係が複雑で、優しいが、哀しい物語が多い。

 まさか、売り上げを伸ばすためにあえて複雑な人間関係にしているわけではないのだろうが(多少、そういうこともあるのかもしれない(?)。あだちさん、ごめんなさい)、それにしても物語が哀しすぎる。

 まあ、人生は哀しいものだから(?)…ねぇ。

 こういう表現にしないと描けないものを、あだちさんがなにか人生に感じているのだろうなあ、と思う。

 いずれにしても、マンガではあるが、すごい名作だ。        (2024.12 記)

 

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