ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』

これは小説なのか?
最初に読んだときは、ノンフィクションにしか思えなかった。
しかし、軽快にジャンプを繰り返してあちこちに飛ぶ話についていくうち、いつしか頭の中には史実の断片が散りばめられていて、こういったスタイルの小説なのだと気づいた。
そのときには、最初の短編「プルシアン・ブルー」を読み終えようとしていた。
少し時間を空けて、もう一度「プルシアン・ブルー」を読んでみた。
どこで話はジャンプしているのか。
注意して読んでみても、そのスムーズなスライドは、移る瞬間を見逃してしまうほど見事になされていて、あまりの上手さに唸るばかり。
ストーリーと言えるようなものは、あるけれどないようなもので、ここに書き連ねると科学の歴史を勉強しているノートのようになってしまうだろう。
では、真面目で堅物なつまらない小説なのかというと、そんなことはない。
退屈はしないし、有意義な時間になるのは間違いない。
こんな言い方では、この小説の魅力が伝わらない。
「恐るべき」小説なのだ。
これで伝わるだろうか。
装画はAdrián Gouet氏、装丁は緒方修一氏。(2024)