ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

赤い魚の夫婦

2022-01-05 18:29:58 | 読書
 グアダルーペ・ネッテル『赤い魚の夫婦』



 2つめの短編を読みながら、この人の小説をもっと読みたいと思った。

 5つ全部を読み終え、さらに思った。もっと読みたい。

 メキシコ生まれの作家が書く物語だが、舞台はフランス、アメリカ、デンマーク、カナダと広い。登場する人もさまざま。


 表題作「赤い魚の夫婦」は、パリに暮らす若い夫婦の話。

 妊娠中の妻がオレンジを欲っすると、これからお金がかかるのに贅沢だと夫は非難する。

 たかがオレンジくらいで、なんでそんなきつい言い方をするのかと、妻は傷つく。

 小さな齟齬が重なり、妻は不満を募らせていく。

 子どもが生まれたあとも、二人の距離は広がるばかり。

 妻は、飼っている金魚に、自分を重ね合わせる。

 闘魚と呼ばれるその魚は、メスに求愛が受け入れられないとオスは攻撃的になるという。

 妻はメスの恐怖、オスの傲慢さを感じる。

 どこか病的にも思える妻の感覚は、ストレスが限界に達しているからだろうが、おそらく夫は気づいていない。

 同じものでも見る部分が違うと夫婦はすれ違う。

 きっとこの夫の視点で語られたら、何事もない平穏な日常なのかもしれない。


 装画は澤井昌平氏、装丁は桜井雄一郎氏。(2021)


コメント
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