ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

家の本

2023-07-15 16:02:24 | 読書
 アンドレア・バイヤーニ『家の本』



 構成が独特だ。

 文体も変わっている。



 家が、住人について語る。

 「私」を中心とした物語。

 「私」が生まれた家、「私」が仮住まいをした家、「私」が見上げる恋人が住む家。

 それらの家々が、「私」と「私」を取り巻く人々について語り続ける。

 ときに家は、車だったり、銀行口座だったり、電話ボックスだったりもする。

 語られる時代はバラバラで、はじめのうちは物語の流れがつかめない。


 さらに困惑するのは、謎のような文章だ。

 『「永久(とこしえ)の家」は環状にできている。それは結婚指輪の形態と性質を備えた家だ。建築上の工夫について言うなら、そこには最先端のテクノロジーが用いられている。』

 これは何について書かれているのか、しばし彷徨う。読み進めるうちにわかってくるのだが、78つの章がほぼこんな感じなので集中力と想像力が必要だ。


 小説は何を書くかではない、どう書くかだ。

 そんな言葉を聞いたことがある。

 時系列に並べられた物語だったら、もう少し読みやすかっただろう。

 でもこの読みにくさが、この小説の魅力にもなっている。


 装画はいとう瞳氏、装丁は緒方修一氏。(2023)