アンドレア・バイヤーニ『家の本』
構成が独特だ。
文体も変わっている。
家が、住人について語る。
「私」を中心とした物語。
「私」が生まれた家、「私」が仮住まいをした家、「私」が見上げる恋人が住む家。
それらの家々が、「私」と「私」を取り巻く人々について語り続ける。
ときに家は、車だったり、銀行口座だったり、電話ボックスだったりもする。
語られる時代はバラバラで、はじめのうちは物語の流れがつかめない。
さらに困惑するのは、謎のような文章だ。
『「永久(とこしえ)の家」は環状にできている。それは結婚指輪の形態と性質を備えた家だ。建築上の工夫について言うなら、そこには最先端のテクノロジーが用いられている。』
これは何について書かれているのか、しばし彷徨う。読み進めるうちにわかってくるのだが、78つの章がほぼこんな感じなので集中力と想像力が必要だ。
小説は何を書くかではない、どう書くかだ。
そんな言葉を聞いたことがある。
時系列に並べられた物語だったら、もう少し読みやすかっただろう。
でもこの読みにくさが、この小説の魅力にもなっている。
装画はいとう瞳氏、装丁は緒方修一氏。(2023)