つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

亡母とくぐった、幽玄隧道。

2021年11月21日 18時18分18秒 | 不可思議な光景
                     
母親が亡くなったのは、平成30年(2018年)11月4日。
ちょうど丸3年が経過した。
今回は故人との思い出を投稿してみたい。

--- そんな考えに至ったのは、ちょうど節目の時期であることに加え、
ここ最近、あるホラー映画の予告情報を目にするようになったからだ。



「清水 崇(しみず・たかし)」監督、2022年公開「牛首村」。
実在の心霊スポットを舞台にした人気ホラー連作映画、
“村シリーズ”の第3弾で選ばれたのは「北陸」だという。
当初は、作品名から津幡町のアソコを連想したが、
程なく別の場所--- 富山県・魚津の「坪野鉱泉」だと明かになる。
僕は心霊・オカルトに疎く、あまり詳しくない。
だが、お陰で幼いころの怖い体験を思い出した。



亡母の出身地は、津幡町「河合谷 牛首(かわいだに・うしくび)」。
かつては「牛首村」だった。
地名は神社の祭神「牛頭大王」に由来する、とか。
古地図や平家物語にも記載されている、とか。
倶利伽羅源平合戦に敗れた平家の落人伝説が残る、とか。
数々の謂れ(いわれ)と古い歴史を持つ山深い里。
それが「牛首」である。

そしてそこに在る「牛首トンネル」は、有名な心霊スポットらしい。
隧道内に安置されている首なし地蔵が血の涙を流す、
焼身自殺をした男性の霊が出没する、などと噂されている。



トンネルへ向かう細い山道は、何やら妖しい雰囲気が漂う。
牛首の集落から、軽く息を切らして登ること15分あまり。
見えてきた!





牛首トンネルは石川県と隣接する富山県を結ぶ「県道74号線」の一部。
「宮島隧道(みやじま・ずいどう)」が正式な名称だ。
全長55m、中心部から石川県と富山県に分かれる。
道幅はおよそ3m、自動車のすれ違いはNG。
内部に照明はなく気持ちのいい感じはしない。



確か、僕が幼稚園に通っていたか、小学校に上がって間もない頃の話。
母親と連れ立って「牛首トンネル」を通り抜けなければならない局面があった。
山菜やキノコでも採りに行った帰りだったのか?
理由は記憶の底に埋もれ定かではないが、
ぽっかりと口を開けたこの暗い道を前に立ち竦んだことはよく覚えている。

湿った天井、壁面、路面。
全てを覆いつくす無数の百足(むかで)が這い回っていたのだ。

僕は恐ろしくて泣いたはずだ。
こんな所など歩きたくないと抗議したはずだ。
しかし、このトンネルを通らなくては彼女の生家に辿りつけない。
意を決し、ついに2人手を取り合って突進した。
走っている間、両目は固く閉じていたが足元の嫌な感触は避けられない。
生きた心地がしなかった。
無事に抜けた後、僕は涙と汗と恐怖で、得も言われぬ顔になっていただろう。





当時、随分長く感じた逃避行。
きのうの道行きは1分とかからなかった。
途中、花や供え物でいっぱいの首なし地蔵も見かけたが恐怖は感じない。
百足の大群の方が余程おっかない。

ゆっくり歩いてトンネルを抜けた僕は、木々と空を見上げ、
あの時の小刻みに震え汗ばんだ母の掌の感触を思い出した。
                    

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大人の階段を昇る舞い。 | トップ | 津幡町、山間の里。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿