世界は様々な色に溢れていて、沢山の楽しみを与えてくれる。
しかし、目に映る彩(いろどり)を無くすと「想い描く色」が豊かになる。
階調の数が減る事で奥行きが生まれ、違う何かが見える気がする。
散歩中や旅先で撮影した画像を白黒に加工し、思考の旅に出かける試み。
不定期連載「monotone Journey」第八篇。
(※尚、今回はBGМを充ててみた。時間と都合が許せば聞きながらご一読を)
散歩中、住宅街のとある一角に残された空き家に出逢った。
構造や壁に目立った損傷はなさそうだが、
二階の窓にかかるカーテンの破れは、時の流れを物語る。
伸びるにまかせた雑草は、僕の背丈をゆうに超えていた。
覆い隠された一階部分は、容易に窺えない。
かつての駐車場らしき場所に横たわる廃車。
草の鎖で大地に繋ぎ止められた、鉄の虜囚。
おそらく、もうエンジンに火が入ることはないだろう。
僕は、人工物が朽ちてゆく様子に、ある種の美を見る。
それが打ち捨てられた当初は寂しさを覚えたとしても、
風雪に晒され、劣化が進む頃には、
対象の現役当時の面影や、係わった人影の輪郭は曖昧になってゆく。
やがて、自然に呑み込まれはじめると、そこには新しい空間が生まれる。
人は、発展し、進化してゆく姿に目を奪われがちだが、
退化し、衰退する様子にも目を向けてみたくなる。
見えない時が降り積もり成熟してゆくそれは、烈しく、切なく、美しい。
「滅美(ほろび)」とでも呼びたくなるのだ。
さて、最後にBGMの解説を少し。
有名な「ノクターン(夜想曲)第2番 変ホ長調」。
作曲は、ポーランドが生んだ“ピアノの詩人”「F.ショパン」。
作曲した当時、彼は故郷を離れ、独りウイーンの空の下。
思うように活躍ができず、失意の内にあった。
孤独にさいなまれ、望郷の念に駆られつつピアノと向き合い紡いだメロディは、
複雑な思いを込めた旋律は、今拙作の思考の旅に合うと考え、
輩(ともがら)としてみた次第である。
貴方は詩人ですね。 大好きなノクターン、昔ポーランドを一回りした時のことを思い出しながら聞いていました。とっても素晴らしいポーランド、コロナが終わったら一度行ってみてください。
白黒の廃屋とは正反対の戦火で崩れたワルシャワの復興のエネルギーに目を見張る事でしょう。
モノクロは、味がありますね。
モノクロは、カラーにはない想像力で広がる世界があります。
蛇足ながら、
宣伝ですが、弊ブログもやっと“今”に追いついてきました。近々に21世紀初頭の中国の写真(元々モノクロ)シリーズ仮称「人民中国の残影」をアップする予定です。乞うご期待!
では、また
ちょうど今、戦前~戦中のポーランドを舞台にした
小説を読んでいるところです。
ヒトラーに蹂躙されかかっているワルシャワで、
必死の抵抗を続ける市民を鼓舞したのは
ショパンのポロネーズだった。
--- との文を読み、僕は涙を流しました。
この後、さらに激しい破壊を経て、
ワルシャワ復興のエネルギーを感じる
ストーリーになればいいなと思っています。
ちなみにタイトルは「また、桜の国で」。
著者は「須賀しのぶ」氏。
もしまだ未読で、ご興味があり、
都合が許せば、ぜひ。
では、また。
久々の緊急地震速報対象になり、
ドキリとしました。
能登半島の突端が大きな揺れになりましたが、
幸いこちらまでは到達せず。
ご心配、ありがとうございます。
無事です。
「人民中国の残影(仮)」、
心から楽しみにしています!
一つ新たな生きがいができました。
では、また!