スローモーションは、被写体を際立たせる。
笑う、泣く、叫ぶ、といった喜怒哀楽の表情。
走る、投げる、殴る、などのアクション。
火を噴く銃口、銃口から飛び出す弾丸。
飛び散る水滴。
手から零れ落ちる砂。
瞳のまたたき。
・・・シーンが「象徴的」に見えてくる。
昔から、多くの映画監督が作品にインパクトを加えるため、
この技法を用いて撮影してきた。
「黒澤 明」、「サム・ペキンパー」、「ジョン・ウー」ら、
巨匠たちによるスローの名シーンは数多いが、僕の個人的ナンバー1は、
「マーティン・スコセッシ」がメガホンを握った映画「タクシー・ドライバー」だ。
ほんの手すさび、手慰み。
イラスト連載、第百十六弾は「ベッツィーの登場」。
アメリカ大統領候補の選挙事務所から、彼女は出てきた。
純白のドレスに身を包み、ニューヨークの雑踏に降り立つ様は、
まさに「掃きだめの鶴」。
そこに主人公のナレーションが重なる。
単語1つ1つを噛み砕くように。
“They- Can- Not- Touch- Her.”
(誰も-彼女に-触れることは-でき-ない)
ゆっくりとした動きの中には、潔癖、透明感、高貴、気品が漂っていた。
スローモーションの原理は実に単純。
高速度撮影した映像を、通常速度で再生するもの。
映画は1秒間で24コマ、TVは1秒間で30コマが一般的。
だが、スローモーション動画の1秒間には、
それらの何倍もの情報が詰め込まれている。
だからこそ、力強く雄弁に、創作者の意志を物語るのだと思う。
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