99%のためのベーシックインカム構想(要約および本文)
朴勝俊(関西学院大学総合政策学部教授)
山森亮(同志社大学経済学部教授)
井上智洋(駒澤大学経済学部准教授)
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99%のためのベーシックインカム構想(要約)
ベーシックインカムは、全ての個人に均等に一定の金額を定期的に給付する制度です。これが他の社会サービスなどを補完することによって、「健康で文化的な最低限度の生活」や、個人的および社会的自由の保障に、現在より近づくことができます。
高度な生産力と貨幣発行権を持つ日本では、不況下において、政府が国債を市中に売却し、日本銀行がそれを買い上げるような方法で、現金給付が可能です。しかし経済が回復して物価上昇率が高まった場合に備えて、税制等によってそのおカネを回収する仕組みも必要です。
こうした認識から、私たちは2階建てのベーシックインカムを試案として提案します。2階部分は、政府と日本銀行の協調による貨幣発行(国債発行と日銀の買い入れ)によるもので、均等の給付を行うことで景気回復を促し、物価安定目標を達成することを目的とします。その金額は、政府や日銀が裁量的に決定しますが、経済が回復するとゼロに向けて縮小します。当面は深刻な経済停滞が続いているため、1人1月7万円の給付を想定します。
1階部分は、恒久的に安定的な給付額を保証するもので、この部分については税による裏付けを必要とします。新税の設置や、所得税等の増税によって確保できる税収額に応じて、それを人口と12ヶ月で割り算し、1人1月あたりの給付額が決められます。ちなみに、1億2600万人に1人1月あたり1万円を給付するためには、およそ15.12兆円の裏付けが必要です。その中心になるのは、所得税制の改革(所得控除の廃止と、税率の引き上げ)です。私たちの試算によれば、これだけで45兆円弱の増収が見込め、1人1月あたり3万円弱のBIが可能です。経済回復によってさらに増収となれば、BIの金額はもっと増やすことができます。それ以上に1階部分の金額を増やすことは、それ以外に様々な税金を新設・増税すれば可能となります。もし税収が不足することになっても1階部分の金額を減額することはないものとします。
BIを運営するために、BI特別会計を設置します。BIの裏付けとなる税収はこの会計に繰り入れて管理します。既存の社会保障制度との関係については、私たちは原則として既存制度に手をつけません。ただし、児童手当(約2兆円)については、BIがとって代わるものとして廃止し、この予算分をBI特別会計に繰り入れます。生活保護の現金給付については、1階部分を収入認定し、自動的に調整をします。その他、国民年金の基礎年金部分については、一般財源から国庫負担が行われていますので、それとの調整を検討する余地がありますが、私たちは現段階で、その議論には立ち入りいません。私たちの提案では、1階部分と2階部分の合計で、当面は1人1月10万円(三人家族で年額360万円)の給付が可能です。1階部分と2階部分を合わせても、現行の社会政策体系のもとではすべての人に生活に十分な金額を保障できるわけではないので、これはいわゆる「部分BI」と呼ばれるものに相当します。
【解説】 松尾匡(薔薇マークキャンペーン代表)
このベーシックインカム構想は、薔薇マークキャンペーン呼びかけ人である、朴勝俊関西学院大学教授、山森亮同志社大学教授、井上智洋駒澤大学教授の連名で発表されたものです。薔薇マークキャンペーンの組織的な意思決定にもとづくものではなく、個々の呼びかけ人・事務局員は責任を共有していないことにご留意ください。とても詳細に検討された案で、これからの叩き台として有益だと思いますので、本サイトの「反緊縮資料室」で公開するものです。
この構想は、現行の税制と社会保障制度の大枠には、あえて手をつけないことを大前提にして組み立てられています。これは、現行の税制と社会保障制度の大枠を変革すべきでないことを意味するのでは決してなく、これらの大枠を変革することによって、より理想に近いベーシックインカム制度をめざす立場——私自身もその立場にありますが——に対しても開かれているものです。
また同様に、この構想は、きたるべき総選挙に向けて、自公維と対抗する、政党などの政治勢力に参考にしてもらうことを意識していますが、これらの政治勢力が税制や社会保障制度についてこの構想の具体的扱いに則ることを主張するものでは全くなく、各々の税制・社会保障制度についての主張の上に、この構想を検討してもらうことを想定しています。
(ついでながら私見のコメントを加えると、税制については、インセンティブ操作の観点を強める方向が考えられます。たとえば消費税増税と所得給付の組み合わせは貯蓄への補助金となるので、不況克服にはマイナスで、加熱抑制にはプラスです。しかし景気加熱は通常設備投資拡大が主導するので、設備投資控除なき法人増税で設備投資にマイナスのインセンティブをつけることが有効かもしれません。)
子どもの命より五輪開催――。緊急事態宣言が発令されている地域の小中学校の運動会を巡る萩生田文科相の発言が保護者から大ひんしゅくを買っている。変異株が猛威を振るう中の運動会は、豪雨の川に遊びに行くようなもの。専門家は科学的な判断ができていないと指摘する。
◇ ◇ ◇
18日の会見で萩生田氏は運動会について「直ちに中止するのではなく、工夫してやる可能性を模索してほしい」と語った。
子どもにも感染する変異株が広がり、最近は小中学校のクラスターが多発。保護者は不安いっぱいで子どもを登校させている。学校の感染を警戒し自主休校する子どもも少なくない。
西村経済再生相も「屋外でマスクを着けていても感染が確認される事例の報告が相次いでいる」と警戒している。そんな中、運動会強行とは正気の沙汰と思えない。
日曜版23日号
高齢者ワクチン接種急げ
「せやろがいおじさん」の思い
新型コロナウイルスワクチンの高齢者への本格的な接種が始まりました。どうしたら安全・迅速な接種ができるのかを大特集しました。千葉県野田市の診療所長は実情を訴え、緊急事態宣言が発令された広島県の現状を大平よしのぶ前衆院議員がリポートします。
ユーチューブで時事問題を絶叫する「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さん。庶民目線で痛快に突っ込む動画が人気です。
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物価が下がっていないのに、今年度の公的年金額は0.1%削減。全国4000万人の年金受給者を直撃する大問題をカラー見開きで。
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細田博之「沖縄はコロナ対策を国に頼るな」、河野担当相「沖縄の若い人は甘えちゃだめ」…菅政権・自民党の酷すぎる沖縄いじめと責任放棄
河野太郎公式サイトより
新型コロナの感染拡大で沖縄県が危機に瀕している。新規感染者数は昨日19日に過去最多となる203人にのぼり、病床占有率はついに100%を超えた。菅義偉首相は明日にも緊急事態宣言を適用する方向だと伝えられているが、またも遅きに失したと言うほかない。
しかし、そんな沖縄に対し、元沖縄担当相でもある自民党の重鎮議員が、耳を疑うような暴言を投げつけた。
発言者は、自民党・安倍前首相の出身派閥の領袖で、兄貴分ともいえる細田博之・元官房長官。19日におこなわれた党の沖縄振興調査会役員会において細田氏は、18日に沖縄の新規感染者数が168人にのぼったことを「由々しき事態であり、沖縄県の観光産業にとっても大ダメージ」と述べたのだが、「緊急事態とか、まん延防止とか、そんなものに頼ったって全然駄目です。効果はありません」「県民自治を今こそ発令すべき」とし、沖縄や北海道は「特別」なのだから県外から移動する人を「全員検査」すべきと主張。そして、こうつづけたというのだ。
「これはまさに地方自治の本旨であって、国の政策に頼るなんて、沖縄県民らしくないじゃない、と」
「国がなんとかしてくださいなんていうことを言わないで済むようにしてほしい」
「沖縄県が自らこういう政策をとりますと、一国二制度でいいんですと」
「だから沖縄県はコロナ天国にしなさいと。一人の感染者もないようにできるのに、なんで168人も出るんだって。バカじゃないか。そうでしょ。旅行者が持って来るに決まってるんだから。米軍が持って来るわけでもないだろうし」
沖縄は国を頼るな。168人も感染者が出るのはバカじゃないか。細田氏はそう主張したのである。
まったく何から何まで酷い。そもそも、「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に効果はない」と言うのなら、まずは政権与党の議員として菅首相に対策の抜本的見直しを迫るべきだ。にもかかわらず、「国の政策に頼るなんて、沖縄県民らしくない」などと突き放し、挙げ句、感染拡大状況を「バカじゃないか」とまで言い放つとは……。
とくに聞き捨てならないのは、「国の政策に頼るなんて、沖縄県民らしくない」という発言だ。これは沖縄県民が米軍新基地建設反対を訴えていることを踏まえた嫌がらせ発言としか思えない。
県民を危険に晒す政府の政策に反対していることをもって、新型コロナ対策で「国に頼るな」と言い放つのは政府としての責任を放棄した「棄民」の発想であり、この緊急事態に「普段から言うことを聞け」と恫喝する行為ではないか。