【速報】東北新幹線が走行中に連結外れ 東京駅-新青森駅の上下線で運転見合わせ けが人ないもよう|TBS NEWS DIG
安倍晋三政権が強行した安全保障関連法の成立から19日で9年。「存立危機事態」という新しい概念が導入され、「集団的自衛権の行使」により、他国同士の戦争への参加が可能になった。
さらに岸田文雄内閣は、歴代内閣が憲法が認める自衛のための必要最小限度の実力を超えるとして認めてこなかった「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」に転じ、日本が直接攻撃されていない存立危機事態でも他国領域への攻撃は可能との見解を明らかにした。
それでも政府は「専守防衛の範囲内で整合性が取れている」という。専守防衛とは「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使」する防衛政策。日本が直接攻撃されていない段階で他国領域を攻撃する反撃能力との矛盾は明らかで、戦争放棄、戦力不保持の憲法9条を蔑(ないがし)ろにするものだ。
◆存立危機想定した訓練
存立危機事態とは、米国など日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態を指す。他に適当な手段がない場合、集団的自衛権を行使して、自衛隊による武力の行使が可能とされた。
集団的自衛権の行使について、歴代内閣は必要最小限度の範囲を超えるため、憲法上認められないとの憲法解釈を堅持してきた。
安倍内閣が2014年、この解釈を一内閣の独断で変更し、翌15年に成立させたのが安保法だ。自衛隊は他国同士の戦争に法的には参戦できるようになり、日米の軍事的一体化はさらに進んだ。
米海軍が2年に1度、ハワイ周辺海域で主催し、自衛隊も参加する世界最大規模の海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」。22年から集団的自衛権の行使を想定した自衛隊との合同訓練が行われるようになった=写真は24年のリムパックに参加した輸送艦「くにさき」、相模湾で。
ただ、安保法成立当時、日本政府は長距離ミサイルなどの敵基地攻撃能力を、平素から保有することは認めておらず、安倍首相も国会で「敵基地攻撃を目的とした装備体系を整備することは考えていない」「米国の打撃力に依存しており、今後とも、日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていない」と答弁していた。
自衛隊が「盾」、米軍が「矛」の役割を担ってきた日米安全保障条約の役割分担を根本から変えたのが、岸田内閣による22年12月の「国家安全保障戦略」改定だ。
これにより自衛隊は、歴代内閣が認めなかった敵基地攻撃能力を平時から持てるようになり、長距離ミサイルなどの開発、整備のために巨額の防衛費が計上された。
「防衛力の抜本的強化」を掲げる岸田内閣は、23年度から5年間の防衛費の総額を43兆円とし、これまでの国内総生産(GDP)比1%程度から27年度には2%にまで増額させる方針を決定した。
第2次安倍政権前の12年度に約4兆7千億円だった防衛費は25年度の概算要求で約8兆5千億円に膨らんだ。財源の一部は所得、法人、たばこ3税の増税で賄う方針で国民に新たな負担を強いる。
◆周辺の緊張、逆に高める
敵基地攻撃能力の保有は、防衛費の膨張にとどまらず、日本が他国同士の戦争に参加する可能性により現実味を帯びさせている。
岸田首相が、日本が攻撃されていない存立危機事態でも「反撃能力の運用は、実際に発生した状況に即して個別具体的に判断する」と、認められるとの見解を明らかにしたからだ。
岸田首相は「(ロシアに侵攻された)きょうのウクライナはあすの東アジアかもしれない」と繰り返し、麻生太郎自民党副総裁は、中国と台湾が軍事衝突に至る台湾有事について「日本の存立危機事態だと日本政府が判断をする可能性が極めて大きい」と強調する。
集団的自衛権を行使する安保法に敵基地攻撃能力の保有が加わり日本が周辺地域での紛争に参戦する可能性は格段に高まった。
政府は、安保法で「抑止力はさらに高まる」、敵基地攻撃能力の保有で「武力攻撃そのものの可能性を低下させる」と繰り返すが、周辺情勢を見渡すと軍事的緊張は以前より高まり、軍拡競争を加速させる「安全保障のジレンマ」に陥っていると言わざるを得ない。
憲法9条に基づく専守防衛は、かつて戦争で国内外に多大の犠牲を強いた戦争への反省にほかならない。専守防衛を隠れみのに、際限なく軍備拡張を続けることをこれ以上、許してはならない。
他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法の成立から19日で9年を迎えた。同法などを背景に、自衛隊と他国軍の共同訓練は、成立前と比べ3倍以上に増加した。防衛省は日本への攻撃を思いとどまらせる抑止力向上を狙いに挙げるが、識者は「日本の動きがかえって周辺国との緊張を高めている」と懸念する。(大野暢子)
安全保障関連法 歴代政権が否定してきた集団的自衛権の行使の容認を柱に、安倍政権の2015年9月19日、与党などの賛成多数で成立した。日本が直接攻撃されなくても、米国など密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる場合を「存立危機事態」とし、他に適当な手段がないなどの要件を満たせば、日本が集団的自衛権を行使できると定めた。歴代政権は、集団的自衛権の行使は憲法上、許されないとの立場だったが、安倍政権が憲法解釈を変更した。
◆2024年「これほど多くの国の軍隊と交流する夏は初めてでは」
防衛白書で公表されている米軍との共同訓練は、安保法が成立する前の2014年度に25回だったが、増加傾向をたどって2023年度は82回に。3カ国以上で行う多国間訓練を含めると、42回から142回に増えた。
自衛隊は今夏、南シナ海などへの進出を活発化させる中国への対応を念頭に、北大西洋条約機構(NATO)加盟国との訓練を日本周辺で実施。7月にはスペイン空軍機が飛来し、空自やドイツ空軍と編隊飛行訓練をした。8月にはイタリアの空母も訓練で初寄港した。相手国はオランダ、トルコ、カナダなど8カ国に及び、防衛省関係者は「米国との訓練は珍しくないが、これほど多くの国の軍隊と交流する夏は初めてでは」と語る。
日本から遠く離れたNATO加盟国と連携を深める理由について、吉田圭秀統合幕僚長は記者会見で「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分になっている」と説明。ウクライナ危機に直面するNATO加盟国は共同訓練を通じてロシアと中国をけん制する一方、日本も抑止力を高める狙いがあるという。
◆防衛白書「安保法関連の自衛隊活動」の掲載を取りやめ
防衛省はNATO加盟国などとの共同訓練を対外的にアピールする一方で、集団的自衛権の行使を想定した訓練かどうかは明らかにしていない。「手の内を見せないようにしている」(木原稔防衛相)として、2022年にハワイ沖で行われた多国間演習を除き、どの訓練が安保法に関連したものかを非公表としている。
毎年刊行される防衛白書も、2024年版から安保法関連の自衛隊活動の掲載を取りやめており、同法で新たに付与された自衛隊の任務や活動の変遷は、より見えづらくなっている。
中京大の佐道明広教授(安全保障論)は「これだけ多くの国の軍隊が日本周辺で訓練していれば、対中国や北朝鮮で集団的自衛権の行使を想定しているとみるのが自然だ」と指摘。「抑止力に頼りすぎると、歯止めなく軍拡が進み、地域のリスクはかえって高まる。周辺国を刺激するだけではなく、有事には同盟国・同志国から訓練と同等の任務を求められ、他国の戦争に参加させられる懸念も強まる」と語る。
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◆基地周辺の住民の不安「標的になるのでは」
安全保障関連法の成立から9年がたち、自衛隊は国内外で他国軍との共同訓練を増やしている。「有事には標的になるのでは」。訓練の実施は、会場となっている基地周辺の住民を不安にもさせている。
6月中旬、青森や東京など9都道県で、台湾有事などを想定し、日米の戦闘機が共同対処をする大規模訓練が展開された。訓練名は「バリアント・シールド(勇敢な盾)」。太平洋で2年に1度行われてきたが、米国が領域を広げた共同訓練を日本に提案し、今回初めて約4000人の陸海空自隊員が参加した。
訓練拠点の一つとなった海自八戸航空基地(青森県八戸市)にも、米軍のF16戦闘機が飛来。同基地から8キロ南に住む元学校職員の中屋敷泰一さん(68)は「米軍三沢基地が攻撃を受けて使えなくなったら、米軍は八戸航空基地を使うはず。地域一帯が攻撃対象になるのではないかと不安だ」と気をもむ。
宮城県の王城寺原(おうじょうじはら)演習場=色麻(しかま)町など3町村=では、陸自とフランス軍による国内初の共同訓練が9月8日に始まった。仙台市の自営業立石美穂さん(64)は「事故が起こるリスクもあり、暮らしと実戦訓練が隣り合わせとなっている状況は放置できない」と、陸自に訓練を取りやめるよう要請した。
同県では空自松島基地(東松島市)も6月のバリアント・シールドの会場になっており、立石さんは「国民的な合意なく、日本の北大西洋条約機構(NATO)化が進んでいるようだ」と疑念を示す。「こうした訓練は周辺国との軍事的緊張を高めるだけだ」と訴える。