ようやく名古屋市長選の構図が見えてきた。河村たかし市長は去就を明らかにしていないが、横井利明市議が出馬表明した。告示は四月十一日に迫っており、市民の選択には活発な論戦が必要だ。
署名偽造が発覚した愛知県知事のリコール(解職請求)運動を支援した河村市長への責任追及が市議会で続く。そのため、告示まで一カ月を切っても現職が出馬、不出馬を明らかにしないという異例の情勢の中で、事実上の選挙戦が幕を開けることになる。
自民党の横井市議は十六日、記者団に「東海地方のリーダーとしてけん引していく名古屋へと変える努力をしていきたい。民主主義を根底からくつがえす(リコール不正)問題にも危機感を持っている」と述べ、出馬を表明した。
市長選にはすでに、市民団体副代表の尾形慶子氏が立候補を表明している。十五日にあった立候補予定者説明会には、河村陣営や共産党などでつくる「革新市政の会」関係者らが出席した。
リコール不正も焦点となる選挙だが、四月二十五日の投開票日まで残された時間は少ない。
横井氏は当選八期目のベテランで、市議会の論客として、リコール問題でも市長の責任追及の先頭に立つ。十年前に河村市長が主導した市議会リコールの際には、議長として市長と対決した。
市長も市議も住民の直接投票によって選ばれるのが地方自治の「二元代表制」である。「庶民革命」を掲げた河村市政は、市議会を庶民の敵対勢力である既得権益層とアピールする政治手法をとってきた。もしも、河村市長が出馬するなら、河村流の手法が真に市民のためになる政治なのかどうか、大いに議論をしてほしい。
各候補者に聞きたいのは、街の未来像である。リニア中央新幹線の品川−名古屋間の開業は、当初予定の二〇二七年より遅れるのは必至だ。その影響をもろに受け、見直しも余儀なくされる名古屋駅前整備や、最大の繁華街である栄との一体開発などのビジョンを示すべきである。
リコール署名集めの不正は民主主義を揺るがす大問題である。河村市長がその運動に深く関わった以上、市民への説明責任を果たすのは出馬の大前提である。
河村市長には、連続三期を超える多選禁止の条例案を議会に提案した経緯もある。否決はされたが、あえて四期目に向けた出馬に踏み切るのなら、この点についても明確な説明が必要であろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます