日本最大の労組団体の連合は17日、夏の参院選の基本方針を決定した。旧民主党時代から後押ししてきた立憲民主、国民民主両党を支援政党として明示せずに「連携」にとどめ、共産党との協力を拒否する姿勢を鮮明にした。「政権交代可能な二大政党制」を掲げてきた立ち位置は揺らぎ、1月に素案が判明した段階から、野党側に広がった波紋は収まる気配がない。(井上峻輔)
◆立憲民主党とは「連携」に後退
立民の泉健太代表は18日の記者会見で、連合の基本方針に関し「政党名が明記された。まさに連携していくということだ」と主張した。
立民が気がかりなのは、基本方針に書かれた「連合の政策実現に向けて、立民、国民と引き続き連携を図る」の一文。政党名すら挙げなかった素案段階より前進したが「立民を総体として支援」と明記した昨年の衆院選方針より後退しているからだ。連携はしても、支援するかは分からないとも読み取れる。
連合の芳野友子会長は17日の会見で「過去にも支援政党を明記しなかったことはある」と強調し、立民、国民との連携が基本になるとの認識を示したが、立民側には「連合は自民党に近づくのでは」(中堅議員)との疑念も消えない。
◆芳野新会長、自民と連携「全くない」というが…
背景には、傘下の全トヨタ労働組合連合会の衆院選での対応がある。自民を含め与野党を超えた議員と連携する方針に転換し、愛知11区で労組出身の前職の擁立を見送った。結果として不戦敗となり、旧民主党時代を通じ、この選挙区で初めて自民に議席を明け渡した。
さらに、会長に就任した芳野氏が自民党本部を訪問して茂木敏充幹事長と面会したり、1月の新年交歓会に招いた岸田文雄首相(自民党総裁)に野党党首を差し置いてあいさつさせたりと、自民と距離を縮めるかのような動きを続ける。
芳野氏は自民党との連携の可能性を「全くない」と否定するが、与党の協力を引き出せば、基本方針に盛り込んだ政策実現に近づくのは事実。立民関係者は「本当は自民と仲良くしたい傘下の労組は多いだろう」と危機感を募らせる。
◆共産への拒否感、1人区での候補1本化への障害に
「目的や基本政策が大きく異なる政党などと連携・協力する候補者は推薦しない」との方針も立民内の反発を誘発している。衆院選で小選挙区の候補者1本化を進めた共産を念頭に置いた表現で、参院選の改選1人区で1本化の障害になりかねないためだ。
連合の共産への拒否感は、昨年10月の就任以来「共闘はあり得ない」と主張し続けてきた芳野氏の意向が強く影響しているとみられる。中小の製造業などでつくる産業別労組「JAM」出身で、共産に近い労組と対立してきたという芳野氏。昨年の本紙の取材でも「共産主義と私たちの民主主義は違う」と断言した。立民のベテラン議員は「連合の問題でなく芳野氏の問題だ」と解説する。
ただ、基本方針は連合として決定した正式文書。泉氏は参院選対応で「候補者や選挙区を調整するのは政党同士の役割だ」と強調するが、例えば昨年の衆院選で共産と結んだ「(政権交代時の)限定的な閣外からの協力」の合意をどうするのか。立民が白紙としているのに対し、共産は維持したい意向が強く、調整が難航するのは確実だ。
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