水泳の世界選手権福岡大会は23日に競泳が始まる。女子の池江璃花子(横浜ゴム)は、白血病から復帰後初の世界選手権に挑む。昨年は心身の不調に苦しんだが、調子も自信も取り戻してきた。「この場所に立てることに誇りを持ち、レースしたい。ただいま、という気持ちで」とスタート台に上がるのを心待ちにする。
◆昨年は不調「突っ走ってきたツケが」
個人種目では初日の100メートルバタフライに始まり、100メートル自由形、50メートルバタフライ、50メートル自由形の4種目にエントリー。発症前の体力が戻ったとは言えず、短距離に絞った。決勝進出を目標に掲げ、注力するのは大会終盤に控える50メートルバタフライ。「タッチ差の世界。1ミリも気を抜ける瞬間がない」と闘志を燃やす。リレーを含めると厳しい日程になるが、「来年(のパリ五輪)に向け、タフなレースを積んでいきたい」と覚悟の上だ。
2019年に白血病を公表し、驚異的な回復で21年東京五輪のリレー種目に出場。昨年は一転、故障や体調不良が重なった。「病気をしてからずっと無理して突っ走ってきた感じがあったので、ツケが回ってきちゃったのかな」。気持ちが沈み、前向きな言葉を口にできない。「どんなに頑張っても、自分を肯定できない」とこぼしたことも。それでも、「世界で戦いたい」という思いは持ち続けた。
今年に入って好転し、福岡大会の代表選考会を兼ねた4月の日本選手権で4冠を達成した。5月には久しぶりに海外遠征へ。欧州で3戦をこなし、50メートルバタフライで表彰台にも上がった。「海外選手を見て、経験や学びが得られた。充実していた」とはつらつと振り返る。
東京五輪出場は「奇跡の復活」とたたえられたが、本人は満足していない。福岡大会は東京で見せられなかった「個の力」を世界に示すチャンス。「池江がちゃんと戻ってきたと証明できるレースをしたい」。焦がれた戦いの舞台へ、23歳の不屈のスイマーは爪を研ぐ。(兼村優希)
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