飛騨の山猿マーベリック新聞

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◆<東京新聞社説>週のはじめに考える クロヨンの時代は遠く

2023年06月04日 09時02分49秒 | ●YAMACHANの雑記帳
 長野、富山県境にそびえる北アルプスの峡谷に、巨大ダムが完成したのは一九六三(昭和三十八)年六月五日のことでした。立山連峰と後立山連峰に挟まれた黒部川に造られた四番目の水力発電所、通称クロヨン(黒四)です。
 七年に及ぶ難工事を乗り越えた落成の日、雨空に九百六十四発の花火が打ち上がりました。それから六十年。初夏のクロヨンを訪ねました=写真。ダムは鳥が翼を広げたような美しいアーチを描き潤沢に水をたたえています。ダム湖の先には北アの神々しい山々が連なります。秘境の地にできた壮大な人工美に引かれ、新型コロナの時期は別にして、年百万人超の観光客が国内外から訪れます。
 実名小説を原作に、三船敏郎や石原裕次郎が主演した映画「黒部の太陽」が六八年に公開され、その名は全国に広まります。多くの人が、大量の出水や土砂と苦闘しながらトンネル掘削に挑む作業員の姿を、戦後の焼け野原から復興へと立ち上がった日本の姿に重ねたといいます。

◆人跡未踏の地にダム

 黒部峡谷は長く人跡未踏の地でした。人が分け入った記録は戦国期に佐々成政が浜松の徳川家康のもとに駆けつけた「さらさら越え」や、加賀藩による「奥山回り」がある程度でした。電気事業が盛んになった明治以降、黒部川の豊富な水量と急流は水力電源の宝庫として一身に注目を集めます。
 終戦までに三つの発電所が完成しますが、そこから上流は、断崖絶壁。「黒部の父」と呼ばれた登山家、冠松次郎は「魔術のひもで手繰られるように、日を忘れ月を忘れてその神秘の奥を探りたくなる」と渓(たに)の魅力を記しています。
 戦後の電力需要激増を受け、関西電力は五六年、クロヨンの建設に乗り出します。「建設史」によると、年10%を超える勢いで需要が伸び、家庭や工場では使用制限を余儀なくされていました。時の太田垣士郎社長は「七割成功の見通しがあったら勇断をもって実行する」と語り、年間電気料収入の半分に当たる五百億円強を投じる大事業の着手を決めました。

◆発電所は地上にない

 経済や国力、給料や生活の質も右肩上がり。今日より明日、明日より明後日は素晴らしい−。クロヨンはそんな時代の産物でした。建設中のクロヨンを訪れた文化人類学者、梅棹忠夫は「現代技術と産業の偉大さを見て、次の瞬間にはそれはもう過去のものになっている。日本はすでにそういう社会」と書き残しています。
 とはいえ、無神経に秘境に踏み込んだわけではありません。クロヨンの発電所を実際に見た人は多くないでしょう。地上にはダムしか存在しないからです。予定地は国立公園内とあって、当時、環境破壊が叫ばれました。建設史によると、公園審議会委員らが現地調査した末、経済復興や観光地化によるプラス面を優先し、着工は認められました。ただし景観に配慮して発電所や変電所、水路はすべて地下に、となったのです。
 クロヨンが経済発展に寄与したことは疑う余地もありません。観光資源としても貴重であり続けるでしょう。しかし、決して忘れてはならないこともあります。「世紀の大工事」で転落や落盤、発破などにより、百七十一人の命が失われました。多くは地元や東北の農村出身者でした。ダム全体を望める高台に建立された慰霊碑には全員の名前が刻まれています。

◆南アルプスをも貫く

 クロヨンも「右肩上がり」の時代もはるか遠く、とうに先進国となった日本は今や、本格的な少子高齢化と低成長の時代を生きています。この時代に今度は南アルプスで巨大事業が進んでいます。東京と名古屋間を四十分で結ぶリニア中央新幹線の工事です。南アの地下深くを貫くトンネルの掘削は、大量の地下水流出が予想され、日本の土木史上、最難関工事になるとも言われますが、大井川の表流水や、ヤマトイワナ、ドロノキなどの生態系に与える影響を地元が危惧し、静岡工区の着工には待ったがかかっています。梅棹らとの共著「クロヨン」で冠松次郎は、手付かずだったころの黒部峡谷をさんざん懐かしんだ末、いささかの諦観をにじませながら「花より団子」だと締めくくっています。「よい風景を見ても腹はくちくはならない。それよりも産業を盛んにして国民の懐を豊かにしたほうがどれだけよいか。まったく、その通りである」これからの時代、リニアはそんな存在になれるのでしょうか。*無駄遣いだろう・多分(笑)

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