裁判官は、曇りのない目で証拠に向き合っているのだろうか。1957年に起きた砂川事件の裁判は不公正だったとして、元被告らが国に損害賠償を求めた訴訟。東京高裁は判決で訴えを退けたが、私は強い違和感を覚える。
砂川事件は、日米安全保障条約に基づく米軍駐留が憲法9条違反かどうかが争われた戦後の重要な裁判だ。東京都砂川町(現立川市)の米軍基地に立ち入ったデモ参加者らが起訴された事件である。
一審判決は米軍駐留を違憲とし、被告らに無罪を言い渡した。最高裁判決は合憲とし、一審判決を破棄して地裁に差し戻した。64年に被告らの有罪が確定した。
それから半世紀以上たって元被告らが「裁判は不公正」と国を訴えたのは、米国で見つかった複数の公電がきっかけだった。砂川事件当時の最高裁長官・故田中耕太郎氏が判決前に米国側と3回会い、事件について話したことが記載されていた。評議の秘密を漏らし、米国側の干渉を受けたなら大問題である。
今年1月の東京高裁判決は「裁判官は国民の信頼を損なわないよう慎重に行動すべきだ」と田中氏の言動を不適切としたものの、評議内容や心証、判決内容を伝えたとまでは言えないと判断した。
しかし、田中氏の心証が米国側に伝わったのは公電で明らかである。米国の駐日大使が国務長官に送った公電の一部を示したい。
(1)「田中氏と砂川...
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