マイナ保険証離れの決定打となりそうだ──。政府はマイナ保険証1枚でデータに基づくより良い医療を受診できると散々アピールしてきた。しかし、マイナ保険証では受診できない医療機関が少なくないことが発覚。厚労省は新たな書類を交付する方針だ。マイナ保険証の保有者はマイナカードとは別に、もう1枚持ち歩くことになる。
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マイナ保険証はオンライン資格確認システムが導入された医療機関や薬局で利用可能だ。このため、今年春にシステム導入が原則義務化された。しかし、レセプト(診療報酬明細書)を作成するシステムを使わず、紙のレセプトで請求している医療機関などは義務化の対象外とされた。
23日の立憲民主党のヒアリングで対象外の件数を問われた厚労省の医療介護連携政策課長は「8月13日時点で医療機関・薬局は22万9336施設あり、義務化の対象は21万516施設。その差分(1万8820施設)が対象外だ」と明らかにした。全体の8%にあたる1.8万施設でマイナ保険証が利用できないとは驚きだ。
もし、マイナ保険証の保有者がこの1.8万施設を利用する場合、どのように保険資格を示すのか。国民健康保険課長は「マイナンバーカードの券面には被保険者番号などが書かれていない。(マイナ保険証の)新規資格取得時や負担割合の変更時などに保険者から『資格情報のお知らせ』を交付することにしている」と新たな対策を示した。
岸田首相が廃止方針にこだわる限り矛盾は拡大
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「お知らせ」とはどんなものなのか。長妻昭衆院議員が「カードで来るのか」と問うと、国民健康保険課長は「保険者の判断になるが、一般的には“お知らせ”なのでたいそうなものにはならないと想像している」と答えた。どうやら、プラスチック製のガッチリしたカードではなく、ペラペラの紙切れ1枚となりそうだ。
雇用者保険の場合、転職しなければ、同じ健保組合に属し、保険資格に変更はない。高卒で入社し、65歳の定年まで同じ会社で働いたとすると、47年間、負担割合が変わることはなく、マイナ保険証の保有者なら、半世紀近くも「お知らせ」というペラペラの紙切れを持ち続けなければならないのだ。破れたり、黄ばむのは避けられないだろう。
柚木道義衆院議員は、「お知らせ」ではなく「今の健康保険証を持参すればいいように対応できないのか。(来秋の)廃止を延期すればできる」と迫った。
医療介護連携政策課長は「先生のおっしゃることは理解しますが、当然、私どもは今、政府の一員として仕事をさせていただいておりますので、大きな政府の方針にのっとって取り組みを進めていく」とポロリ。官邸から“やらされている感”をにじませた。
「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏が言う。
「すでに破綻が明らかなマイナ保険証の弥縫策に追われる官僚が気の毒でなりません。さまざまな問題が起きていますが、現行の健康保険証を存続させれば解決する問題がほとんどです。岸田首相が廃止方針にこだわる限り、矛盾は拡大し、『お知らせ』のような誰が見てもおかしな対策を繰り返すことになるでしょう」
ペラペラの紙切れを半世紀も大切に保管するなんてゴメンだ。
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