岸田内閣の支持率が続落している。岸田文雄首相はマイナンバー問題をはじめ国民が懸念を抱く課題を巡り説明を尽くしてきたとは言い難い。国民の不安が見えず、傲慢(ごうまん)な政権運営を続けるなら、支持率回復は到底、望めまい。最新の共同通信世論調査で内閣支持率は34・3%と続落、内閣発足以来の最低に近づいた=表。
続落要因の一つはマイナンバーカードを巡る混乱だ。現行の健康保険証を来年秋に廃止してマイナカードに一本化する政府方針に76・6%が延期や撤回を求め、74・7%が政府による総点検では「解決しない」と答えた。
国民の不安を顧みず、首相は一本化に固執し、制度を見直そうとしない。河野太郎デジタル相はマイナカード返納の動きを「微々たる数」と切り捨てたまま長期の外国訪問に出かけた。こうした言動は、制度への不信を深める国民や総点検の実務を担う地方自治体にどう映るのだろうか。
首相は中東三カ国を歴訪中だ。日本は三カ国から国内消費量の八割の原油を輸入しており、首脳外交の意義は理解する。
しかし、秋田県など国内各地で豪雨被害が出ており、被災者らの命や暮らしを守ることを最優先すべきでなかったのか。出発に先立ち関係省庁幹部に対策を指示しただけでは十分とは言えまい。
岸田政権は先の通常国会で、防衛関連予算の倍増に向けた財源確保特別措置法や原発新増設に回帰するための関連法、難民申請中の強制送還を可能にする改正入管難民法を、国民が上げた反対の声を押し切って成立させた。政権発足時に掲げた「聞く力」が空虚に響くようになって久しい。
賃上げは物価高に追いつかず、国民の暮らしは苦境が続く。岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げるものの、実効性の乏しさが指摘され、少子高齢化が進展すれば、さらなる負担増は避けられないとの懸念も募る。
国民に信頼され、内閣支持率を回復する「即効薬」はない。国民の暮らしや将来への不安と誠実に向き合い、一つ一つ課題を解決していくほかに道はない。
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