天と地の間

クライミングに関する記録です。

小積谷偵察

2018年11月11日 | 開拓

土曜日、季節が良くなってきたので、一人で岩場の偵察に行くことにした。
場所は湧塚の南側に平行に聳え立つ岩塔。袖ダキの展望台からよく見える。湧塚を通るたびに見下ろし、いつかはと思っていた場所である。


袖ダキ展望台より撮影(数年前に撮影のもの)左に立っている岩が
目指す岩塔。右にやや傾斜している。

登山口に到着すると、近くに止めるところがないほど多くの車が駐車している。この時期の大崩はとかくお客さんが多い。
登山道を歩くこと1時間。小積谷へと分け入り、道なき道をさらに1時間20分。目的の岩塔にたどり着いた。
途中、滑りこけて顔面を打ったり、踏んだ石の近くの巨岩が崩れ落ちたりと、危うく映画127時間の二の舞になるところであった。原生林の中の谷はとかく危ない。ここでけがをすれば大変なことになる。ここはだれも通らない。
基部にはすぐに来れたが、開拓の可能性がある北面に回り込むのが一苦労。空身ではなんてこともない所でも時間がかかる。無理は禁物だ。


小積谷から望む小積はでかい。


岩塔基部より撮影。北面は傾斜している。無論、ルート取りは北面。
右にまっすぐに立っている樹木は10mほど。

北面を見渡すと、思った通り、可能性のあるクラックが走っている。下部はシンクラック、上部に行くにしたがいワイドとなる。3本ほど良いラインが引けそうだ。そして、どれも傾斜があるだけに難しそうだ。
気になるのは1点。北面だけに苔があり、掃除に時間がかかりそうだ。この時期に乾いていないのが気にはなる。
ここにルートを引いたとしても、誰も来るものはいないだろう。それでも取付く価値は十分にある。
この日は一応、試登もするつもりでギアとロープを担いできたが、試登するには難しすぎる上に、ギアも足りない、時間も足りない。諦めた。
結局、何より足りなかったのは・・情熱だったか。
その情熱が年々薄れていく。雲母が剥がれるかの如くに。

北面の基部全体を隈なく見て、写真に収めて下る準備にかかっていると、「上部から大丈夫ですか!」と声が聞こえてきた。振り仰ぐと袖ダキ展望台に4人のハイカーが小さく確認できる。おそらくは、私が迷っていると思ったのであろう。当然であろう。ここに来るものは誰もいない。
何れにしてもありがたいお声掛けである。すかさず、両手で丸を作って返した。


スカイラインの上段のテラスが袖ダキ展望台。3,4人確認できる。声をかけてくれた人だ。

谷に戻ると、歩きのトレーニングでもしようと、谷をつめ、湧塚と坊主尾根の間のコルに上がって、
坊主尾根を下った。


小積の頭より広タキを望む(中央右壁)。その直下はクロスケオテ谷。今年も狙っていたが、都合の合う
日は豪雨にみまわれ行けずじまいとなった。来年こそは行きたい。
左の壁は通称馬の背。登参口からおよそ40分で行ける。大崩では広タキに並んでアプローチの短い壁で
ある。壁はかなりでかい。弱点は少なく、ルートは1本のみ。6ピッチ最高グレード13Ⅽだったか。

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Ⅱ峰奥壁人形岩ルート、【ソーン・バード】公開

2017年05月28日 | 開拓

この手の開拓に入る人は少ない。とりわけ九州においてはドラッドクライマーは絶滅危惧種。何処に生息しているかほぼ分る。それゆえここの開拓も当初は単独で入った。

左が人形岩。肌色の岩の右手に二人取り付いているのが見えるだろうか。。 

 

1ピッチに取り付く堤。被りの基部を右に回りこむ。

私はマルチの開拓はグランドアップを基本としている。当然、怖い目も見た。2ピッチ終了点のトラバースでは、行けばカムを効かせられるだろうと、祈る気持ちで突っ込んだ。ホールドが欠けて吹っ飛んだこともある。

それでも頭部に立つまではと2度、単独で入った。だが疲労度がすさまじく、開拓のモチベーションは徐々に低下していった。その後、何人かの力を借りて昨年9月にやっと、頭部に立つことができた。それからフリー化のために訪れた今日まで8か月の空白がある。強力な助っ人Tがいるが彼の休みが平日とあって来る機会がめったになかったことによる。

2ピッチをフォロー中の堤。快適なピッチだ。景色も良い。

28日、土曜日はT氏と二人で入った。フリー化のために今日はドリルもバックロープも持たずに来た。当然今日は軽い。軽く3ピッチ目まで来れた。問題はここから。いろいろとムーブ解決に工夫を凝らしたがすぐに指力がなくなりT氏と交替。彼も同様のようだ。地上を離れてすでに3時間ぶら下がっている。パフォーマンスも低下する。ビレイだけでもきつい。くわえて日も差してきた。もうこれ以上は無理だろう。秋へと持ち越そうと。エイドで行くことにした。

3ピッチ出だしの私。被り気味で最も困難な箇所。

人形岩の肩に立って小休止したのち、ここだけは解決しようと取付いたが、あと一手がでない。13を数本落としている彼をもってしても難しいようだ。替わって私が取付いたが同じくあと一手というところ。ここへ来るまでに指はもとより全身を使って疲労している。久しぶりのクラックとあってか、情けないことに彼も私も指がこむら返しを起こす始末。地上にあるボルダーならこなせないことはなさそうだが。頭部も次回の課題とし、撤収することにした。

4ピッチ、頭部に取り付く私。背面右端はニードル。かなり下に見える。今いる場所は標高600m

今回、フリー化もせずに公開するに至った理由は、ひとえに難易度。私の能力をはるかに超えているということ。そしてトライできる機会が少なく、このままではいつフリー化できるか先が見えない。ということから決断した。さらには公開することによって、トラッドクライミングが少しでも活性化すればという淡い期待である。1,2ピッチはグレードは易しい。そこだけでも良い練習になるだろう。九州以外から比叡に訪れる人は、フリー化を楽しみの一つとしてほしい。

公開したとはいえ、我々はフリー化を諦めたわけではない。ボルダー能力を高めて秋に戻ってくる。

ルート名【ソーンバード THORN BIRDS】の由来

Thorn Bird(茨の鳥)とはニュージーランドの伝説の鳥。生まれた時から棘のある木を探し求めて飛び続け、最も鋭い棘のある木を見つけると、その木のトゲに飛び込む。そして絶命する時に世の鳥の中で最もきれいな声を発するという。

一方、我々はというと、クラックの中の茨や松の葉で顔や手を突き、なんど悲鳴を上げたことか。落ちる刹那に奇声を発したことは数知れない。

 

アプローチ紹介。

比叡山頂へと上がっていくと神楽面を刻んだという岩屋の看板がある。そこより左へと入るとⅡ峰奥壁へと行ける。ここまでトイレ駐車場から15分。人形岩の取付きは神楽面の分岐点からおよそ15分。取付きに入る10m先が急傾斜となっている。人形岩への入り口は右手に20cmほどの看板を下げた。また7cmほどの黄色い反射板を要所要所に下げている。

分岐点、左側にある標識。岩屋へと向かえばⅡ峰奥壁へと行ける。向かいに下部の標識有。

 岩屋へと入る分岐点右手にある標識。ここより左へと入る。

ルート紹介。

難しいところは2箇所がある。特に悪いところは3ピッチ出だし4mの箇所。フットホールドは乏しく、クラックはシンクラック。軽く12は超えているだろう。もう1か所は4ピッチめの頭部のフェース。これも12はありそうだ。

ロープ2本あれば懸垂1回で取付きまで下降可。頭部正面下部に懸垂用終了点を設置済み。

南面であるため、夏のクライミングは無謀かと思われたが風の通りがいいため、早めに取付き、昼までに切り上げれば夏でも十分に登れる。

使用ギアはキャメロット0.5~3を2セット。エイリアン青、緑、黄色。(青、緑は2セット)、ナッツ。

1ピッチ13m グレード9 各ピッチのmは目安

2ピッチ18m    10a

3ピッチ13m    12以上 想定

4ピッチ6m    フェースルート。上部はカム必要。 12以上 想定

ルート図については、後日掲載予定。

注意点・・・人形岩のフレークは欠けやすいため、要注意。頭部から肩へと下りる際は、反対側に下りて回り込んだほうが無難。(傾斜しているために懸垂時にスタックする可能性があるため。)

最後に・・・これまで開拓に入ってくださった皆さん。お疲れ様でした。今度はフリー化で訪れてください。

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比叡Ⅱ峰奥壁人形岩開拓終了

2016年09月11日 | 開拓
9月10日土曜、つつみ君が休みというので久しぶりに人形岩に開拓に行く計画を立てた。
この時期はまだ暑い、とりわけ人形岩は南面。もう少し待ちたいところだが彼と行ける日がいつになるかわからない現状にあっては行けるときに行っておくにこしたことはない。

8時過ぎ、取り付きに到着するとすでに岩は日差しを照り返している。これでは中途半端にムーブを解決していたら無駄に時間をかけてしまうだろう。
今日のところはムーブ解決は行わず、次回に開拓道具の荷揚げをしなくてもいいように最終ピッチの開拓を仕上げようと決めた。


グレードはたいしたことはないが、脆いためにより緊張する。

1ピッチはグレードは低いが久しぶりのクラックとあっては緊張する。
終了点にたどり着くとすぐに荷揚げにかかる。ホールバックがやけに重い。これを3回繰り返さなければならないと思うとため息が出る。
セカンドが上って来るとすぐに2ピッチ目に入る。荷上げ、ビレイと休む間はない。それでもソロでの開拓を思えばどれほど楽か。相方の存在は大きい。


最初は快適。

2ピッチ目は身体もなれたが、緊張感は変らない。特に終了点手前のトラバース部分はフォールした経験がるために緊張感が増す。暑さに加えて緊張もあり手がぬめる。左手アンダーから右手クロスで次を取った時、浅いところを取ったために、ぬめった手が滑りフォール。
4mほどフォールしただろうか。以前、ホールドが欠けてフォールしたことがトラウマになっているのか。バックロープで後ろに引かれる影響もあるのかもしれない。メインロープ、カムの重みも原因のうちかとわが身を慰め、体勢を整え再チャレンジ。何のことはない。すんなりいけた。たんなる思いきりのなさだ。
思えば、初めてここに来た時はソロだった。トラバースすればカムを噛ませられるだろうと出たと勝負で突っ込んだ。幸い、カムが効いてビレイ点を作ることが出来たが、今はその度胸はもうない。


ここからトラバースに入る。

3ピッチ目、ここのピッチが核心だ。それもしょっぱなに始まる。薄被りのシンクラック。指先半分が掛かればいいほう。今日はムーブは探らないと決めたものの、やはり試したくなる。何度かやったが、絶望的に悪い。あきらめてエイドで越える。越えてもシンクラックは数m続く。はたしてプロテクションを取る余裕があるだろうか。せめて足さえあればよいがそさえない。落ちれば確実にビレイヤーの下まで行く。グレードは12を軽く超えているだろう。


核心部を越えたところだが・・・

こんなところを行けるやつがいるのだろうか。自分の限界をはるかに超えた無謀なことをやっているのではないか。諦めた方がいいのではないかなどと、これまで何度も頭をよぎったが、今までに何人かの人が開拓に入ってくれている。それを思うと簡単には諦めがつかない。


少しでも陰を求めて一息の私。

3ピッチ終了点に着いて荷上げすると、すぐにボトルを取り出しのどを潤す。とにかく暑く、のどが渇く。
3ピッチの終了点(肩の部分)で20分ほどの休憩の後、頭部のボルト設置に取り掛かる。
ボルトを設置後はやけに疲れたために、相方に代わって試登してもらう。
取り付から悪い。相方はすぐにあきらめ、A0で越える。彼も疲れている。最後はカムをかませて頭へ。
次にフォローする私も一部A0になる。それでなんとか頭へとたどり着いた。


やっと立てた。

今日はフリー化こそしてないが、当面の目標の頭に立つ事ができた。それが収穫だ。
後はフリー化。頭部はなんとかなりそうだが、3ピッチ目は出来る気がしない。それでもチャレンジはするつもりである。
次回はもう荷揚げをしなくともよい。しかし、長く放置してきたためにまた掃除をしなければならない。
良い時期に狙って取り付こう。

最後に、開拓に加わってくださった方々にこの場を借りて御礼を申し上げます。



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人形岩開拓

2016年05月01日 | 開拓
5月1日、なみさんが久しぶりに日曜日が休みというので比叡Ⅱ峰奥壁の人魚岩の開拓に誘った。彼女は九州ではクラックをする貴重な存在だ。彼女も開拓を楽しみにしてるようだ。後は天候。その天候が予報ではⅠ日は夏日になるという。
人魚岩は南面。その上、比叡では高い位置にあるために最後まで日が当たる。覚悟がいりそうだが、秋までには一度は行って、前回ボルトを打った箇所の可能性を探りたい。

10時前,久しぶりのクラックのため、いつもより多めにギアを持つ。それでも妙に緊張する。
やはり、定期的にクラックに行かなければと思うが、なかなかどうしてリードクライマーも少なくなっている九州の現状。
ましてはクラッカーとなると絶滅危惧種になりそうだ。そういう状況にあっては相手も簡単には見つからない。

1ピッチ登ると体も感覚も少しは戻ってきた。ホッとするのも束の間。重いホールバックを引き上げる。その後、セカンドがあっさりと上がってきた。セカンドとはいえ実にスピーディーだ。
2ピッチ目はクラックが真っ直ぐに伸び、ジャムがよく利く。ルート中、景色も見られ快適に登れる。だが、最後のトラバースが悪い。いや、悪くなった。前回、アンダーに使ったフレークが欠けて大ホールしたのである。その時の記憶が蘇り、入念にプロテクションをセットして終了点へ。


2ピッチ目。めったに来ないために来るたびに草木が生えている。

いよいよ核心の3ピッチ。核心部はクラックが途切れ、なおかつ唯一ナッツをセットでいる箇所をホールドとして使うため、前回、やむなくボルトを1箇所設置した。今日は最大の核心であるここを何としても攻略と思って来たが何度やってもホールドが遠く、しかもフットホールドが乏しいために解決できない。


核心部。フットホールドが乏しい。

そうこうするうち、暑さも相まって滑ってきた。荷揚げの疲れもあるのだろうか、いつになく力が入らない。
フレッシュなときならなんとかこなせるのではないかというムーブを探った時点で諦め今日は人口で越えることにした。
その上はどうかというと、うす被りのシンクラックでこれまたフットホールドが乏しく悪い。前回はフリーで越えたと思うが、今回はナッツをプロテクションに2度ほどホールした。


人形岩頭部。5m程の高さ。ここも簡単にはいかない。


どうも技術だけでなく、メンタル面もかなり落ちているようだ。
やっと肩にたどり着いたのが3時過ぎ。頭のフェース部分に後3本ボルトを打てば次回はボルトキットを持ち上げる必要がないと思ってきたが、疲れていてのグランドアップでは簡単には行かない。時間もない。日帰りでの開拓はなかなかすすまない。今日はここまでにしよう。
次回は秋だ。
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大崩偵察

2015年09月23日 | 開拓
連休に地元で登る事ほど情けないことはない。ということで登るのはあっさりと止めにした。代わりに大崩に新たなる
可能性を見つけようと、久しくやっていいないトレイルランニングを兼ねて偵察に入る計画を立てた。


峠を越えたあたりで撮影。
真ん中が小積。小積を中心に右奥が湧塚(重なっている)。少し離れて左が二枚ダキ。
そして、その左隣が大崩山頂。(左から二つ目のピーク)
左端に大崩ダキ。右端に馬の背。写真には写ってないがさらに右に広タキがある。

昼前に登山口に差し掛かると、かなりの車が止まっていて驚いた。ほとんどがハイカーのようだ。近くに止めるスペー
スが全く無い。幸い、私は林道を上がっていくから関係ないが、これから来る人はかなり下に止めなければならないだ
ろう。かつてない程のにぎわいだ。これも登山ブームの影響だろうか。


登山口の前後200mは駐車スペースなし。


今回も余裕があればボルダーでもしようとマットを持っては来たが。
そんな余力もなく、また、ボルダラーもいなかった。

崩壊してこれ以上進めない箇所に車を止めて、ザックを担ぐ。中身は飲料水、シリアルバー、カメラ、双眼鏡。これで
足りる。
林道は崩壊しているが走る分には問題ない。それも坊主尾根への分岐点を過ぎるとすぐに行き止まりになり、目印のと
ぼしい林へと下る。途中、何度も迷いながら下の林道と合流してホッとする。ここから沢を越えて大崩ダキを目指して
急登なる。身軽なのが幸いだ。沢を越えて30分くらい進んだだろうか。下にスラブをいただく岩塔直下に到着。
岩はでかい。全容が掴めないために一段上がらないとなんとも言えないが、今ひとつ食指が動かない。開拓した人から
情報を聞くことにしよう。


まさに秘境の雰囲気。
左端が大崩ダキ。


基部から大崩ダキ撮影。
宮崎登攀クラブが打ったものか、錆びたリングボルトがあった。


大崩ダキから馬の背(左)、広タキ(右)撮影。


馬の背。昨年、6ピッチのルートが開かれた。13cのピッチがある。
それ以前、何度か私も訪れたことがあるが、見る限り弱点の少ない壁であった。
左端にすっきりしたクラックがある。


広タキスラブ。白いきれいな壁だ。
最近は訪れる人も少ないようだ。アプローチも荒れているだろう。



20日(月曜日)
登山道近くにはテントを張る場所がなかったために美人の湯の下の駐車場に張った(申告済み)。秋の夜長は長い。積読
になったままになっていた本でもよもうと2冊持ってきた。ところが虫の音を聞きながらビールを飲んでいると読む気が
失せ、さりとて疲れで覚醒したのか、なかなか寝付けない。そのうち、まんじりとしないまま登山者の準備の音で4時に
目が覚めた。ある程度予測はしていたがここの登山客は早い。今日はつらくなりそうだ。


渡渉点から撮影の小積。
いつ見てもいい眺めだ。


大崩はこんなボルダーがごろごろしている。

7時過ぎ、昨日と同じ出で立ちで登山口から走り始める。足取りは重い。坊主尾根の渡渉点に来ると4,5人の登山者が途
方に暮れている様子。橋がないという。なるほど見事に消え去っている。ならばと、岩伝いに渡渉し、上から最適なル
ートを示すと皆さん安全にできてお礼を言われた。
気を良くしてまた走り出す。走るといっても今日は走るのが目的ではない。勾配がきつくなると直ぐに歩きに変える。
特に先行する登山者が20m先に現れれば歩きに切りかえて、こちらの息づかいで察知してもらうように近づく。そんな
ふうに登山道を走るときはいつも自転車に乗っているつもりで走る。そうすれば問題も起きないだろう。やはり、登山
道は登山者が優先と思う。
坊主尾根の道標からいよいよ小積谷へと入る。思いの外、水量が少ない。だが、ここから注意が必要だ。苔むした岩伝
いに進まなければならない。苔は濡れている。滑って頭でも打とうものなら一大事。映画「127時間」になりかねない。
ここは誰も来ないところ。映画のシーンを思い出しながら進んでいたら、意外に早く小積の基部に着いた。


でかすぎてカメラに収まりきれない。
ピークは見えない。


中央稜右隣のクラック。ここも可能性がある。

基部から見る小積はでかい。カメラには収まらない。早速、双眼鏡で壁を見るとラインを引けそうな箇所が何本か見て
取れる。ブッシュは多いが、北面特有の草木で剥がしやすそうだ。
実は、私の狙いはここではない。本命は湧塚下の岩塔。間近で見る岩塔は威圧感がある。それだけに開拓意欲をかき立
てられる。南面、北面ともに草木はなく、すっきりしている。すぐにでも取り付けそうだ。次にするのはここだ。


湧塚下の岩塔。林越しにしか見えないのが残念。


袖ダキより湧塚を撮影。
向かいの岩塔が狙いの壁。両面に可能性がある。見ての通りブッシュはない。


袖ダキにて。
来ればつい跨いでしまうオフィズス。股間がスースーする。
ここに上るルートを作るのも面白そうだ。
かなり難しいだろう。

岩を見ながら腹ごしらえをしたのち、沢を詰める。進むにつれて岩は小さくなり植生も変わってくる。もうそろそろか
と思われる頃、登山者の声が聞こえてきた。

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