中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

高速鉄道の事故から1ヶ月

2011-09-01 10:02:26 | 中国のこと

 死者40人を出した中国の事故から1ヶ月以上たったが、中国国内では発生後 1ヶ月の日に事故の発生時刻に合わせて犠牲者を追悼する動きなどもみられず、また事故の発生当初、政府の対応を批判してきた国内メディアも国営の新華社通信がけがをした乗客のうち108人が温州市内の病院を退院したことや、入院中の47人についても順調に容態が回復していることを伝えたほかは、目立った報道はみられず、事故を巡る報道もほとんどないらしい。これは早期の収z束を図りたい政府の思惑が映し出されているとのことだ。

 

 前にも書いたが、毛沢東が言い、現在の政権もスローガンにしている「為人民服務」(人民のために奉仕する)はこのようなニュースをみると、何か空々しく思えてくる。人民の批判を恐れ、何とかしてそれを抑えようとする政府や中国共産党の姿勢は、人民を大切にするという姿勢から程遠いものだと思う。事故車両を地中に埋めた後、掘り起こすなどの事故後の処理について不適当な発言で更迭された鉄道省報道官が、処分も受けないままポーランド勤務のポストが与えられたとのことで、利権と腐敗の温床である鉄道省の性懲りもない甘さも呆れるほどだし、それを看過している政府のありようも理解できない。もちろん鉄道省の幹部はすべて中国共産党員だから、結局は身内をかばうことに終始し、事故報道を規制して人民の怒りが収まるのを待っているのだろう。そこには人民に奉仕するという誠実さのかけらも見られない。

 

 さすがに頑固な鉄道当局も安全性を高めるため、全土の路線で高速列車の速度を減らすことを柱とするダイヤ改正を行った。今回の改正で中国の高速鉄道の最高時速は350キロから300キロに減速し、最高320キロのフランスTGVを下回ることになった。卑小で過剰な「大国意識」で安全を二の次にして世界最高速を目指したが頓挫し、正常になったようだ。中国版新幹線と言われる北京ー上海間の路線は中国共産党創立90周年祝典に合わせて闇雲に工事を進めたが、開業当初から遅れなどの事故が続いた。それを日本の新幹線も開業直後は事故が頻発したなどと強弁していたし、日本の技術を取り入れているのに中国独自の技術で世界一だと言っていた。まったく小児病的な態度だ。それで結局は大きな事故を引き起こしたが、政府、鉄道省は本当に誠実に検証しているか疑問だ。相変わらずの隠蔽体質はどうしようもないのだろう。

 

 私は「中国迷爺爺」と自称するように中国好きで、中国の歴史、風土には惹かれる。知的財産権などどこ吹く風かというような風潮や、何事につけ賄賂が横行する体質など一部の中国人のありようはどうにも嫌いだが、それでも信頼し合える親しい友人がいて、独り身の侘しさが慰められるし、西安の李真や謝俊麗の子ども達は自分の曾孫のように可愛く思う。しかし最近の中国という国のあり方や振る舞いは違和感を通り越して嫌悪を覚えることが少なくない。そして、やはり一党支配の政治体制というものには問題があるのではないかと思わされ、かつて貴州省に行ったときにガイドの女性が、「こんな体制は20年もちませんよ」と吐き捨てるように言ったことを思い出す。