Hr君、Hg君夫妻と映画を観に行った。『ライフ』という英国のBBCが撮影した野生生物のドキュメンタリーだ。
6年の歳月と35億円の制作費をかけて作ったと言うだけあって、素晴らしい作品で堪能した。よくもこのような映像が撮れたものだと感嘆したが、カメラも最新鋭のもので,撮影者の技術も最高級なのだろう。撮影地は世界18カ国、24ヶ所、収められた生物は24種類に及び、日本でも温泉に浸かるニホンザルが取り上げられている。映画を観た後でパンフレットを購入したが、これには24種の生物すべての写真が収められ解説されていて、なかなか見ごたえがある。そのいくつかを紹介したいのだが、残念ながら無断複写、複製が禁止されている。
泥沼にはまり込んだ生後間もないアフリカゾウの赤ん坊を必死になって救い出そうとする母親象など感動する場面もあったが、とくに印象に残ったのは、南米コスタリカのジャングルに棲むイチゴヤドクガエル(矢毒蛙)という10グラム程度の赤色の小型のカエルだった。このカエルは、落ち葉の水溜りで孵ったオタマジャクシを天敵から守るために1匹ずつ湿った自分の背中に乗せて、樹上10メートルの高さに生えているアナナスの葉に溜まった水の中に運び込む。小さな体で一生懸命に木を上っていく姿には胸を打たれるものがあった。それだけでも驚異なのに、安全な場所に移した後、子どものために2週間にわたって何回も登って行き、そこに無精卵を1個産んで子どもの餌にする。どうして最初に運んだ場所を記憶しているのか、とにかく驚くべき生態だ。この他の映像もすべて感嘆するようなものばかりだが、取り上げられた生物は皆、「名優」揃いで、なまじっかなドラマは及びも付かない。それに生物たちの棲む環境の風景がまた素晴らしく、主役、舞台ともに最高のものだ。
Hr君たちとは先月の末にも映画を観に行ったが、これは『シャンハイ』という、日米戦争開始頃の上海租界を舞台にした米中合作のサスペンス、アクション映画で、日本の渡辺謙や、中国の女優コン・リー、香港の俳優チョウ・ユンファが出演していたが、つまらない映画だった。去年は同じメンバーで、三国志の赤壁の戦いを題材にした中国映画の『レッド・クリフ』を観に行ったが、超大作ということだが、まったくの愚作だと思った。このような映画に比べると、今回観た『ライフ』の方がはるかに見ごたえがあり、純粋に感動する。映画はあまり仰々しく騒がしくないのがいい。その点先日観た『さんざしの樹の下で』という中国映画(監督はチャン・イイモウ)は、文化大革命時代の高校生の女の子の悲恋を描いたもので、主役の新人の女の子が可愛らしくひたむきで、これはよかった。私達は皆老人料金で1,000円で観られるが、いくら安く観られても、やはり鑑賞後の印象が良いに越したことはない。