新聞の「読者の声」欄で、ベトナムから来日した19歳の日本語学校生の投書を見た。「ベトナムから来日して1年。ずいぶん慣れたが、疑問なのは日本女性の化粧が濃く、服装が派手すぎることだ」で始まるその投書は、次のように続く。
「口紅、おしろい、つけまつげなどできれいにした日本女性は化粧の前後でまったく変わってしまう。元々の顔は関係なく、モデルのようになり、美人になる」
確かに日本の女性の化粧は概して厚いと私も思う。特に私が老人のせいなのだろうが気になるのは、付け睫毛だ。少しくらいなら目がパッチリと見えもするのだが、中には真っ黒な草むらのようなものもあって、いささかげんなりさせられる。睫毛エクステンションとか言うらしいが、近頃通りすがりの商業ビルの中に開店したネイルアートの店でも、店頭の案内板にこのエクステンションが40本で3600円とか書いてある。片方で20本なら普通なのだろうか。あまり多い付け睫毛を見ると外したら相が変わってしまうのではないかと思ってしまう。
投書は続けて、
「私たちベトナム女性は特別な時以外、あまり化粧をしない。ふだんは日焼け止めクリーム、口紅だけ。濃い化粧の女性を見たベトナム男性はがっかりし、付き合いたくなくなるのが一般的だと思う」
濃い化粧をするのは、少々いかがわしい職業の女性と思われるのだろうか。前にテレビで何度かベトナムの街の風景を見たことがあるが、なるほど濃い化粧の女性は見当たらず、付けている口紅も目立たず素顔に近いようだった。それがまた民族衣装のアオザイによく似合っているように思ったものだ。
いったいなぜ近頃の女性、とくに若い人達の化粧が濃くなっているのだろうか。西安の友人の李真や謝俊麗などは勤めているが、クリームをつける程度でほとんど化粧はしていないようだし、他の中国の友人達もそうだ。上海人の施路敏は東京に住んでから6年になるが、先日会った時には相変わらず素顔に近い健康そうな顔で、日本語も含めて日本の生活にはずいぶん慣れたようだが、化粧ということでは以前と変わっていなかった。西安人で今は上海にいる邵利明が以前大阪に来たときに、化粧品を買いたいと言うので店に連れて行ったが、店員が次々にいろいろ出してくるので、クリームを買うくらいに考えていた彼女は面食らったようだった。化粧しないと顔色が良くないように見えると聞いたことがあるが、彼女達はそのようには見えない。李真は日本の女性は化粧が上手だと言っていたが、私は自然に近いほうがいいと思う。
上記の投書はこう結んでいる。
「日本の友だちに聞くと、日本女性は男性にほめられたい気持ちがあり、また、ほめられることが必要だからと教えてくれた。私は自然な顔を見せる方がいいと思います」
ベトナムであろうと中国であろうと若い女性が男性にほめられたい気持ちには変わりはないと思うが、それを濃い化粧で表現するのは日本独特なものなのか。それでも以前はそれほど化粧は濃くなかったと思う。いつ頃から今のように濃い化粧になってきたのか。化粧品会社の宣伝や、若い女性向けの雑誌などが書き立てるためなのかとも思ったりもする。