「生態系ってなに?」 江崎保男著 (中公新書) 定価:740円
【この本を読んだ理由】
環境問題が盛んに取り沙汰されている昨今、『生態系ってなに?』、「生きものたちの意外な連鎖」、「終わらないドラマ」という見出し群に目を惹かれた。
【読後感】
著者は理学博士で専攻は、動物生態学、動物社会学である。
著者は“まえがき”で、本書の目的を紹介している。
『ごみのリサイクル、食品の安全性保持、・・・食料自給率の低下と農地の荒廃、・・・そして誰もが気になる地球温暖化・・・
これらの身近な課題から大きな環境問題まで、すべてのことは生体系に関係しています。
つまり、現在世界各地で生態系は病んでいると考えられます。だからエコロジーにかかわる活動・運動をしている人々はみんな、生態系の保全と復元に役立とうとしているに違いありません。
しかし、その一方、生態系(エコシステム)のことをきちんと理解している人はそれほど多くないでしょう。
自然破壊という言葉がありますが、これは生態系の崩壊と同じことを意味しているのでしょうか?生態系が病む、あるいは崩壊するとはどういうことなのでしょうか?そもそも生態系ってなぜシステムなのでしょうか?
本書を書こうと思った動機は誰にでも理解できる生態系の物語を書いてみようと思ったのです。』
そして、著者は第1章のおわりで生態系について、いったんまとめている。
『まず、地球上の生物は太陽のエネルギーで生きています。太陽は生態系というシステムのバッテリーです。
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太陽のエネルギーをつかまえるのは植物です。光合成という反応により、太陽エネルギーを有機物の炭素結合のなかに取り込みます。他のすべての生物は、直接・間接に植物がつくりあげた有機物に依存して生きていきます。したがって、これらの生物は植物やみずからの餌となる生物の存在なしには生きていけません。一人では生きていけないのです。しかし、植物は一人で生きていけるかというと、そんなことはありません。みずからがつくった有機物が回りまわって最終的に、分解者によって二酸化炭素やアンモニアに分解されないと、光合成の材料が無くなって、生きていくことができないのです。
したがって、この地球上に一人で生きていける生物なんてどこにもいないのです。みんな食物連鎖・物質循環というつながりのなかで生きています。
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最後に、生態系のなかに多様な生物がいることは大切です。私たち人が、適切な食料を手に入れることができ、廃棄物を処理できるのは、生態系が多様な生物で構成されているからだと考えられます。』
私は生態系について、今まで漠然とは分かっていたつもりであったが、この本を読んでより理解が深まった気がした。
そして、『この地球上に一人で生きていける生物なんてどこにもいないのです。』という著者の言葉が身に沁みてきた。
・オオヨシキリの一夫多妻のメカニズム
・カッコウは巧妙な詐欺師
など、後半に楽しい鳥の世界のはなしも紹介されていた。