「タンパク質の一生」 永田和宏著 (岩波新書) 定価:740円
【この本を読んだ理由】
新聞の文庫・新書の紹介欄の宣伝文句に興味を持った。
“細胞という極小宇宙で繰り広げられる生命活動の主役はタンパク質である。
それぞれに個性的なタンパク質には、その誕生から死まで、私たちヒトの一生にも似た波乱に富んだ興味深いドラマがある。
数々の遺伝病やプリオン病・アルツハイマー病など、タンパク質の異常が引き起こす病気の問題も含め、最先端の科学の現場からレポートする。”
【読後感】
著者は、
“現在、京都大学再生医科学研究所教授であり、専攻は細胞生物学(元日本細胞生物学会会長)。
さらに、宮中歌会始詠進歌選者、朝日新聞歌壇選者など、歌人としての活躍も知られる。”
と紹介されていた。
本書には、細胞内におけるタンパク質の誕生、成長、輸送、死、そして品質管理の仕組みが、専門外の読者にもわかりやすく、読みやすい文体で記述されてるとのことだが、私には、この本の内容は、かなり専門書に近く難しかった。
本書の中の気になった記述を二、三紹介する。
“60兆の細胞(ヒトの身体をつくっている細胞の数)の一個一個の中では、毎秒毎秒恐ろしい勢いでタンパク質が作られ続けている。
私たちは普段そんなことを意識したこともないが、私たちの知らないところで、そんな忙しい、そしてひそかな営みがあってはじめて、私たちという存在があるのである。”(はじめに、p.)
“山中伸弥氏(iPS細胞の発見者)の研究室は、実は私の隣にあり、この数年、何十年に一度とも言える世界を震撼させるような発見を、間近でリアルタイムで見ることができたのは、個人的には大きな喜びでもあった。”(本文、p.28)
“余談ながら、美容や健康に効果があるとしてコラーゲン入りの健康食品等が多く販売されているけれども、それは本当に効果があるのだろうか。
コラーゲンを摂取することで、それがそのままコラーゲンの補充(サプリメント)でもあるかのような宣伝をよく見かけるが、食品として摂取したところで、それは消化器官を通じていったんアミノ酸へと分解されたのちに栄養素として再利用されるので、コラーゲンの形のままで吸収されることはありえないのである。”(本文、p.134)
“私たちが海外に行って時差ボケになるのも、このタンパク質合成サイクルの変調によるもので、市販されている時差ボケの薬には、このタンパク質を調整することで体内時計を調節しようとするものがある。”(本文、p.158)
“たとえば、白内障は、レンズの構成タンパク質であるクスタリンが変性して、目の水晶体が濁ってしまう病気で、一種のフォールディング異常病である。”(本文、p.195)