「イチローの脳を科学する」 西野仁雄著 (幻冬舎新書) 定価:720円
【この本を読んだ理由】
WBCの開幕が間近かである。
イチローが日本にいて、試合に出る。
グッド・タイミングなので、この本を読んだ。
【読後感】
期待したほど面白くはなかった。
裏表紙より、著者の紹介。
“名古屋市立大学学長・理事長。
1941年、大阪府堺市生まれ。”
“はじめに”の中での著者の自己紹介によれば、
“専門は生理学。基礎医学の一分野。専攻は大脳生理学。
中学で2年間、大学では6年間、準硬式の野球部に所属。
60歳まで試合にでていた。
野球は観戦するのもプレーするのも大好き。”
とのこと。
イチローの父親との親交はあるようだが、イチローとの関係は不明。
本書を読んで得られた知識を若干紹介する。
脳は、20歳過ぎまでかかって構造的に完成されるようだ。
イチローの脳が完成されていった経緯に関する記述を参考までに抜き出すと、
“父親の宣之氏は元高校球児、3年生のとき夏の愛知県大会のベスト4まで進んだ方で、運動センスは豊かです。
この父の遺伝子を受け継いだイチローが中学校を卒業するまで、父は毎日午後3時半頃には家業を切り上げ、野球の練習を指導しました。
それは献身というより溺愛といえるほど子供のために野球環境を整えたといえるでしょう。”
“父とマンツーマンの二人三脚
・・・・・父の宣之氏は立派な野球道具一式を買い与え・・・・
3年から6年までの4年間、・・・・自営する会社の仕事を中断し、・・・
・・・・・・正月の元日二日、バッティングセンターが休みなので、この日を除く一年363日、一日7、8ゲームの球、球数にして約250球を打ち込みました。
このように、小学生の時にすでに高校野球部の選手以上の密度の濃い、激しい練習をしていたことになります。”
“イチローの素晴らしい反射神経、動体視力、瞬間視力、柔軟な反応性、人一倍の負けず嫌いなどは、天から与えられた才能であり、遺伝子に基づくところが大きいと思われます。
その才能の上に、父親の厳しいけれども愛情に満ちた指導のもとに幼少期、青年期を徹底した野球づけという環境に身を置いたこと、その後も高校野球、プロ野球、メジャーリーグというさらにレベルの高い環境に身を置き、常に人一倍努力してきたこと。
すなわち、受け継いだ遺伝子、最高の環境、大きな愛情、そして何よりも誰にも負けない、たゆまぬ努力があって、現在のイチローが生み出されているのです。”
“3歳からボール遊びを始め、小学校3年から中学校3年という、脳が発達し、神経細胞が枝ぶりを広げる時期に、毎日徹底的に打つ・投げる・走るという野球の基本動作を繰り返し訓練したことによって、野球の運動に必要な神経回路が、他人よりも、より蜜により強く形成されているのです。”
“ですからイチローの脳は投げる、打つ、走るという体の動きを調節する脳部位やこれらと関連する脳部位が非常に発達しているのです。”
“イチローは、本拠地のシアトルのセーフコ球場で試合が行われるときは、試合開始の約6時間前に動き始めるようです。
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イチローは高い目標を立て、それを達成するため、常に練習を積み重ねています。
すなわち<強い意志→行動→脳の変化>というサイクルを通して、自分自身の脳を常に鍛え、創り変えているといえるでしょう。”
本書のテーマは、『心の持ち方によって脳は創り変えることができる』ということだと著者は言う。
この本で、唯一、イチローには遠く及ばないわれわれ凡人に希望を持たせてくれたのは、以下の文章でした。
“しかし、成人や高齢者でも、脳の中に神経幹細胞が存在しているという事実は、大きな可能性を秘めています。
それは、神経幹細胞を活性化させ、神経細胞に分化させることによって、脳の働きを高められる可能性があるからです。
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ドーパミンは大きな感動を受けたときや、物事を積極的に行うときに分泌されることがわかっています。
したがって、家や部屋の中に閉じこもるのではなくて、外に出て人と交わること、何事も楽しく、意欲を持って前向きに取り組むことが大事です。
このようなとき、ドーパミン系が活性化され、脳の働きを高め、神経幹細胞の働きを活発にします。”