歯車
2011年04月27日 | 他
歯車
とまりぎ
芥川竜之介の小説「歯車」の一節、
「・・・のみならずボクの視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?-----というのは絶えずまわっている半透明の歯車だった。僕はこういう経験を前にも何度か持ち合わせていた。歯車は次第に数を増やし、半ば僕の視野を塞いでしまう、が、それも長いことではない、暫くの後には消え失せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、-----それはいつも同じことだった。眼科の医者はこの錯覚(?)のために度々僕に節煙を命じた。しかしこういう歯車は僕の煙草に親まない二十前にも見えないことはなかった。僕はまたはじまったなと思い、左の視力をためすために片手に右の目を塞いで見た。左の目は果して何ともなかった。しかし右の目の瞼の裏には歯車が幾つもまわっていた。・・・」
最後の方にも歯車や「・・・銀色の羽を鱗のように畳んだ翼が一つ見えはじめた。・・・」ということを書いている。
これは芥川竜之介の実体験であろう。
亡くなったとまりぎの先生が芥川竜之介と夏目漱石の比較では、
夏目漱石は文科系、芥川竜之介は理科系に近い文章だと言っていたが、そうかもしれない。
これだけ書くと、小説「歯車」の紹介で終ってしまう。
実は、歯車が廻る同じような体験をしている。
ただし、歯車はひとつだけだ。