セレンディピティ ダイアリー

映画とアートの感想、食のあれこれ、旅とおでかけ。お探しの記事は、上の検索窓か、カテゴリーの各INDEXをご利用ください。

My Best Films in 2023

2023年12月31日 | 映画

今朝は久しぶりの雨音に目を覚ましましたが、お昼頃、雨上がりの澄んだ空気に清々しさを感じました。今年の汚れをすべて洗い流してくれたような気がしました。

2023年に見た新作映画の中から特に心に残った3作品、旧作映画と本の中からそれぞれ1作品ずつ選んで、ブログ納めといたします。みなさま、よいお年をお迎えくださいませ。

*** 新作映画 ***

TAR ター (Tar)

決して楽しい作品ではないですが、権力の本質を描いていて、個人的にもっともガツンときた作品でした。自ら命じるのではなく、周囲に忖度させることによって支配するのは、今の時代の権力者が用いる手法そのものです。

しかし天才的指揮者であるターが、人の心を理解できないことで追い詰められていく様子は、頭脳や才能がすべてではないことを物語っていて、救いを覚えました。孤高の権力者を演じるケイト・ブランシェットの演技はすばらしいの一言で、圧倒されました。

フェイブルマンズ (The Fablemans)

ここ数年、映画監督による自伝映画がちょっとしたブーム?になっていますが、個人的にはこのフェイブルマンズが一番気に入りました。映画としての評価はあまり芳しくなかったようですが、これまた個人的にガツンときた作品です。

スピルバーグの映画愛、映画作りのテクニックや怖さを知ったのも興味深かったですが、一番切なく、心にずしりときたのはスピルバーグの両親のパートです。誰にもどうすることもできないつらい結末に、胸が締め付けられました。

ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE (Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One)

王道を行くエンターテイメント・ムービーで大いに楽しめました。トム・クルーズは相変わらずかっこよかったし、彼を取り巻くヒロインたちもそれぞれに魅力的でした。

トムには「あの年齢にしては」というただし書き抜きに、いつまでも第一線で輝いていて欲しい。そして私も、そんなトムを励みにして、自分の小さな世界でがんばっていけたら、と願っています。

*** 旧作映画 ***

サタデー・ナイト・フィーバー (Saturday Night Fever) 1977

公開時から47年ぶり?に再見しましたが、こういう映画だったんだ、と今さらながら驚きました。自分が年を重ね、経験を重ねたことによって、多くの気づきがあったということもありますし、時代の変化、社会の変化を感じ取ることができたのは収穫でした。

ひょっとしたら、ショッキングな場面は無意識に記憶から消していたのかもしれません。もう一度見たいとは思わないけれど、今あらためて見ることができてよかったです。

*** 本 ***

ディーリア・オーエンズ 友廣純訳「ザリガニの鳴くところ」(Where the Crawdads Sing)

映画もすばらしかったですが、原作もまたすばらしかったです。長編小説で読むのに時間がかかりましたが、アメリカ南部の豊かな自然を舞台にした壮大な人間ドラマを、じっくりと堪能しました。

作者が生物学者ということもあり、主人公の心情の描写や心の動きを、自然の営みを通じて描いているところがこの作品の最大の魅力であり、唯一無二の作品にしていると感じました。

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ガラスの森のクリスマス / Bubby's のクリスマス

2023年12月30日 | おでかけ

箱根ガラスの森美術館の続きです。

12月22・23・24日は、開館時間を1時間延長して18:30まで、クリスマス・イルミネーションのイベントが開催されていました。暗くなるまで館内のカフェ・レストランで待つことにしました。

ガトーショコラのケーキセットと紅茶のポットサービスでひと休みしました。ガトーショコラはフランボワーズとソルベとともに、大好きなジノリのお皿でサーヴされ、思わずわ~と歓声を上げました。うかいさんの経営なので、お味も間違いのないおいしさでした。

カフェ・レストランでは毎日、ライブ・ミュージックがあるようですが、この日はエンツォさんのピアノと、ルイスさんのボーカルによる、クリスマス・ミュージックの特別演奏でした。私たちは16:00の回と17:00の回と2回聴くことになりましたが

音楽が大好きなのでとても楽しめました。ラテンミュージック、シャンソン、ボサノヴァと、ちょっぴり大人のクリスマス。山下達郎さんのクリスマスイブまであってびっくりしました。ルイスさんの陽気な語りも楽しくて、お店を出る時に思わずお礼をお伝えしました。

最後の演奏が終わってお店を出ると、外はクリスタルのクリスマスツリーが燦然と輝いていました。このイルミネーションを見るために夕方からいらっしゃる方々もいて、昼間以上ににぎわっていました。

クリスタルのツリーは2本あり、高い方はロミオ、低い方はジュリエットという名前がついています。ガラスの森美術館はヴェネチアングラスにちなんで、すべてにおいてイタリアがテーマになっているようです。一日たっぷり楽しめました。

***

翌日のクリスマスイブは、招待状をいただいて、横浜にコンサートを聴きに行ってきました。この時期、やはり「くるみ割り人形」ははずせません。演奏もすばらしく、楽しい夜になりました。

コンサートの後、軽く食事でもと思いましたが、すでに夜遅くどこも閉まるところ。思い立ってランドマークプラザにあるアメリカン・ダイナーの Bubby's を訪れたところ、どうにかすべり込むことができました。

めずらしいブルックリンのクラフトビール。こちらはキンキンに冷えていましたが、私がたのんだスパークリングワインは、生ぬるくて気が抜けていたのが少々残念でした。きっとお店も一日忙しかったのでしょうね。

シーザーサラダ。これぞアメリカンなおいしさ。

いつもはランチに入ることが多いので、ハンバーガーか、プルドポークのサンドウィッチをいただくことが多いのですが、この日は大きなステーキをシェアしていただきました。やや硬めのガツンとしたお肉でしたが、焼き具合はミディアム・ウェルダンでした。

ここのお店のレッドキャベツを使った、ピンク色のコールスローが好きです。

デザートはアップルパイにしました。フレッシュアップルで作るアップルパイは、レア気味のりんごがごろごろと入っていて、アメリカンな感じがたまりません。コーヒーとともにおいしくいただきました。

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三都ガラス物語 @箱根ガラスの森美術館

2023年12月29日 | アート

箱根ガラスの森美術館の続きです。館内には2つの美術館があります。まずは、ヴェネチアン・グラス美術館で開催中の企画展を見ました。

ヴェネチア、プラハ、パリ 三都ガラス物語 ~歴史を駆け抜けた華麗なるガラスの世界~

15分のガイドツアーに参加しましたが、これがとてもよかったです。作品にはそれぞれ詳しい説明書きがついていて、解説映像も流れていますが、ガイドの方のお話が興味深く、見どころを押さえて鑑賞することができました。

エンジェル文蓋付ゴブレット(バカラ)1870-1910年頃
天使の模様がついた愛らしいグラス。

レース・グラス・コンポート(ヴェネチア)17世紀初
ヴェネチアングラスの初期の作品です。初期の頃は、透明と白いグラスを層状に重ね、ひねることによってレース模様を作り出す技法が多く使われたそうです。

美術館のドーム型の天井には優美なシャンデリア。

天使鹿文蓋付ダブルゴブレット(ボヘミア)18世紀
ボヘミアン・グラスというと、厚手のカットグラスが思い浮かびますが、こんなに繊細なグラスもあるのですね。淡いピンクが愛らしく、私は一番気に入りました。

エンジェル装飾台座付鉢 BAMBOUS TOUS(バカラ)1890年頃
天使の装飾を施した金属と組み合わせた美しい鉢。

アイリス文花器一対(バカラ)1900年頃
アール・ヌーヴォー全盛期に開催されたパリ万博に出品された作品。

金彩竹文花器一対(バカラ)1878年頃
竹のデザインが施され、19世紀後半のヨーロッパで流行したジャポニズムの影響が見て取れる作品です。

クリスマスにあわせて、ヴェネチアン・グラスのイエスの降誕セットが展示されていました。

ヴェネチアン・グラス美術館でクラシックでゴージャスなグラスの数々を鑑賞した後は、ガラスのローズガーデンを通って、隣接する現代ガラス美術館へ。

最初に見たのは、イタリアのリヴィオ・セグーゾさんという現代グラスアーティスの作品の数々。透明ガラスを組み合わせたシンプルで洗練された作品でした。

デイリ・チフーリさんという、アメリカ出身ヴェネチアに留学したというグラスアーティストの作品の数々。海の生物を思わせるカラフルで幻想的な作品でした。

庭園にもさまざまなガラスのアートが展示されています。上は芝生の上に無造作に置かれたガラスの風船。

日が暮れると明かりが灯り、これもまた幻想的な美しさでした。

長くなりましたが、クリスマスイルミネーションに続きます。

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箱根ドライヴ 芦ノ湖テラス ~ ガラスの森美術館

2023年12月25日 | おでかけ

クリスマスはいかがおすごしでしたか?

私たちは美術館の招待券をいただいたので、土曜日に箱根に行ってきました。東名高速道路の途中で下りて、駅伝コースで知られる海沿いの国道1号を走ると、冬晴れの空の青さ、海の青さが清々しく、快適なドライヴとなりました。

箱根湯本の手前から旧東海道の山道を抜けて、最初に訪れたのは、芦ノ湖畔にある芦ノ湖テラス。エッセイスト、画家、軽井沢にワイナリーを経営する実業家と多才な活躍をされている玉村豊男さんが、2007年に箱根に開館したレストランとギャラリーの複合施設です。

施設内にあるイタリアンレストラン La Terrazza Ashinoko(ラ・テラッツァ 芦ノ湖)でお昼をいただくことにしました。

【過去記事】ヴィラデスト &東御ワイナリーめぐり (2020-12-12)
      ヴィラデストカフェ (2020-12-14)

天井までガラス張りで冬の陽が燦々と差し込む店内は、サンルームのように明るく心地よい。店内には薪ストーヴが焚かれ、湖畔の別荘のようです。軽くてシンプルな北欧家具のテーブルと椅子は移動させやすく、室内が多目的に使えそうです

メニューはピッツァの種類が充実しているほか、前菜、パスタ、お肉料理などがありました。私たちはピッツァとパスタをシェアしていただくことにしました。

ピッツァは、プッタネスカ(トマトソース、ミニトマト、モッツァレラ、グラナ、バジリコ、黒オリーブ、ケイパー、イタリアンパセリ、オリーブオイル) 娼婦風と呼ばれるお料理で、私はよくパスタで作ります。

家にある材料だけでできるからこの名がついたという説があるようですが、適当に作っても絶対おいしくできる黄金の組合せです。フレッシュトマトが入り、瑞々しい仕上がりでした。

パスタは、いろいろキノコと燻製ベーコンのフェットチーネ。数種のきのことベーコンがクリームソースで和えてあります。

きのこはセミドライにしたものを使っているのかな?と思いました。 香り高いきのことベーコン。こくのあるクリームソースが平たいフェットチーネと具材によくからみ、冬にぴったりのおいしさでした。

食後にコーヒー(私はカプチーノ)をいただきました。コーヒーがエスプレッソ?というくらいコクがあり、しっかり泡立てたミルクとのコンビネーションが抜群。おいしくいただきました。

この後は、玉村さんのギャラリーとショップをのぞいてお買い物をしてから、すぐ目の前の芦ノ湖畔に出てみました。

寒い中、カラフルなスワンボートをこぎ出している人も。遠くに目をやれば、海賊船が桟橋に近づいてくるのが見えます。この日は息が凍るほどの寒さでしたが、それを感じさせない穏やかな冬の風景でした。

芦ノ湖テラスをあとにして、御殿場方面に向かいました。芦ノ湖に沿って高台の道を走ると、木立の間から時々雪を冠った富士山の姿が見えました。

途中で通りかかった仙石原では、ススキのの穂がすっかり抜け落ちていました。冬のすすき野を見るのは初めてかもしれません。これはこれでみごとでした。

【過去記事】箱根 仙石原のすすき (2017-10-08)

次に向かったのは、箱根ガラスの森美術館です。今回初めて知ったのですが、この美術館は料亭のうかいさんが経営されているのですね。館内にもうかいさんのレストラン・カフェが入っています。

1996年にできた当初は少々成金趣味のように感じて敬遠していたのですが、今回初めて入ったところ、コレクション、ホスピタリティともにすばらしい美術館でした。

エントランスにはガラスを使ったクリスマスディスプレイ。

みごとな生花のアレンジメント。クリスマスにもお正月にもいいですね。

館内のあちらこちらに飾られていたすりガラスを使ったぶどうの灯り。

高低差のある地形を生かした庭園に、ガラスを使ったさまざまなオブジェが展示されています。大涌谷を借景としているのも箱根ならでは壮観でした。

次は館内のコレクションをご紹介いたします。

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京都旅行記(2023・秋)京町家ランチと、圓通寺の庭園

2023年12月16日 | +京都

7月に京都に行ったばかりですが、11月にまたもや夫の京都出張に便乗し、私は東京から、息子は奈良から合流して、週末の京都旅行を楽しんできました。

まずは京都駅で息子と待合せして、二人でお昼をいただくことに。息子は特に食べたいものはないというので、その場でGoogle Mapsをチェックして、五条にある「食と森」という京町家のカフェに行くことにしました。

京都駅からは歩いて10分くらい。住宅街の縦横十字に続く小路を気持ちの赴くままに歩いて行きましたが、京都はなんでもない街並みも味わいがあって、おしゃべりしながら歩くだけでも楽しいです。

着いたお店はこじんまりとした、なんとも愛らしい佇まい。入ってすぐの土間がキッチンとなっています。靴を脱いで、二階のお部屋を案内していただきました。

細くて急な階段を上ると、昭和のレトロな空間が広がっています。ちゃぶ台席とテーブル席があって、私たちはテーブル席にすわりました。書棚には赤茶けた文学書もあれば、最近の画集もあり。オープンリールの録音機やラジオ、ナット・キング・コールのLPレコードなど。

古いもの7割に新しいもの3割くらいの、絶妙なバランスがいい感じ。

こちらのお部屋には古いタンスにテレビ、柳行李のバスケットに火鉢、姿見など。「三丁目の夕日」に出てきそうです。この他、廊下には古い書棚や、長持など。子どもの頃、母の実家に大きな長持があり、何が入っているんだろう、と怖かったことを思い出します。

ランチのセットはワンプレートで、この日は白身魚や野菜の天ぷらに、サラダや野菜のおかず数種がついていました。ごはんは十穀米か玄米が選べて、これにお味噌汁がつきました。ヘルシーながらボリュームたっぷりのおいしいランチでした。

***

この後、ホテルで夫と合流して向かったのは、京都市左京区にある圓通寺 (えんつうじ)です。これまで知らなかったお寺ですが、michiyoさんから「比叡を背景にした借景がすばらしい」とお聞きして、訪れたいと思っていました。

京阪電車と叡山電車を乗り継いで、木野という駅から約30分歩きました。郊外の住宅街をぶらぶら歩いて着いたお寺には、なぜか巴瓦に菊のご紋。この後、お寺で説明を受けて知ったのですが、このお寺はもとは後水尾天皇の山荘、幡枝離宮だったそうです。

その後、後水尾天皇が修学院離宮を造営したのにともない、こちらの幡枝離宮は後水尾天皇の希望により、禅寺として開基したということです。

【過去記事】修学院離宮(2018-06-13)

圓通寺の見どころは、比叡山を借景に取り入れた広大な枯山水の庭園です。境内ではこの庭園だけが撮影が許されています。枯山水といえば、水紋を描いた白砂利に石を配した石庭を思い浮かべますが、この庭園は、苔を主体に石を並べてあるのがユニークでした。

また立木の間から比叡山を望む風景に、私が思い出したのは葛飾北斎の「冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷」です。

神奈川県の今の保土ヶ谷から富士山を望んだ風景で、この絵が描かれたのは1830-33年。圓通寺のもととなる幡枝離宮が造営されたのは1639年ですから、後水尾天皇が北斎のこの作品を知る由もないのですが、不思議な偶然を思いました。

【過去記事】北斎とジャポニズム(2017-12-17)

四季折々の自然が美しい圓通寺。この時は紅葉にはやや早かったですが、実をつけた柿の木、赤い千両の実など、秋の風情をそこここに感じました。

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アラビア料理を楽しむ &青の洞窟

2023年12月10日 | グルメ

この日は夕方渋谷で待合せして、渋谷スクランブルスクエアで夕食をいただくことに。12階のレストラン街で、日頃保守的な夫が、めずらしくアラビア料理が食べたいというので、この貴重な機会を逃さじと^^ CARVAAN TOKYO (カールヴァーン・トウキョウ) に入りました。

黒を基調にしたエキゾチックで洗練された空間は、渋谷にはめずらしく、大人が静かに食事をするのにぴったりの雰囲気でした。ふだんなかなかいただく機会のないお料理ということもあって、非日常的な気分が楽しめました。

クラフトビールをはじめ、めずらしいビールもいろいろありました。アラビア料理でビール?と思いますが、お店のHPによると、紀元前6世紀にはチグリス・ユーフラテス河畔で、紀元前3世紀にはナイル河畔で小麦が栽培され、ビールが作られていたとか。

左は、ライムピールとカルダモンの香りが楽しめるアラビアン・ライム・エール。右は、クラシカル・IPA (18世紀にイギリス⇒インドに輸送され、最近人気が高いインディアン・ペールエール) 。どちらも存在感のあるお味ながら、クセが強すぎず飲みやすかったです。

クスクスサラダ。北アフリカ発祥のクスクスに、色鮮やかな野菜とギリシャのレーズン、ナッツをあわせたモロッコ風サラダ。甘いレーズンと香ばしいナッツがアクセントとなって、後を引くおいしさです。家でも作ってみたくなりました。

オマーンの白身魚タジン。蓋つきのタジン鍋で運ばれてきました。写真ではわかりにくいですが、白身魚の切り身が2つ入っていてボリュームたっぷり。カラフルな野菜が目に美しい。数々のスパイスを使った、複雑でデリケートでまろやかなお味です。

スパイスを使っているのでカレーにも若干似ていますが、全体的にマイルドなお味で、淡泊な白身魚を引き立てています。

ラム肉とざくろのタジン。骨付きのラム肉を、甘酸っぱいざくろとオレンジの果汁で柔らかく煮込んだラムのタジンです。ラム肉がほろほろと柔らかく、クセがほとんどありません。ビーフシチューに似たお味でした。

ラムの旨みをぎゅっと閉じ込めた、滋味あふれるおいしさ。添えられてあるお米のような小さなパスタがもシチューによく合いました。タジン料理は全部で9種類ありましたが、どれもおいしそうで全制覇したくなりました。

***

食事の後は、渋谷の公園通りから代々木公園にかけてのエリアで開催されている「青の洞窟 SHIBIYA」を見に行きました。2014年から目黒川沿い、2016年に渋谷に移転して (コロナ期を除いて) 毎年開催されているクリスマスイルミネーションです。

その名の通り、青一色で彩られていますが、スポンサーがパスタソース”青の洞窟”の日清製粉ウェルナと知って納得です。^^

公園通りの並木道は木がまだ若いので、灯りが少なくてちょっと寂しかったですが、NHKの横のけやき並木の辺りは、77万球の青いLEDライトが点灯し、青の洞窟とよぶのにふさわしい、大迫力の風景でした。

クリスマスマーケットも開かれていて、昼も夜も楽しめるようになっているようです。この日はまだ始まったばかりで、そこまでの混雑はなかったですが、これからだんだん賑わってくると思われますので、おでかけの際にはお気をつけて。12/25まで開催されています。

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ザリガニの鳴くところ(小説)

2023年12月02日 | 

植物学者ディーリア・オーエンズの小説で世界的ベストセラー。映画「ザリガニの鳴くところ」(Where the Crawdads Sing) の原作です。映画の感想はこちら。

ザリガニの鳴くところ(映画)

ディーリア・オーエンズ 友廣純訳「ザリガニの鳴くところ」(Where the Crawdads Sing)

原作を読み始めたところで先に映画を見て、その後に続きを読み終えました。決して難しい小説ではありませんが、時系列が激しく前後する上に (でも年号が入っているのでわかりやすい) ミステリー、ロマンス、ネイチャー、法廷劇、貧困・差別等の社会問題と

アメリカ特有のいろいろな題材が盛り込まれているので、映画を先に見ておくと、小説の世界に入っていきやすいかもしれません。長編なので読み終えるのに時間がかかりましたが、ゆっくりじっくり味わいながら読みました。

映画の行間を味わう

映画もとてもよくできていましたが、2時間の作品に収めるために、どうしても速足になってしまうのは否めない。映画では、テイトが去ってカイアがすぐにチェイスに心移りをしたように見えてしまいましたが、小説を読んで、彼女の中にはこれまでの長年の孤独と決別したい

という強い想いがあったのだと理解しました。それに映画を見ると、マリアはカイアを捨てたひどい母親のように思えましたが、それまでの、そしてそれからのマリアの壮絶な人生を小説によって知り、誰もマリアを責めることはできないと納得しました。

映画を見た時に感じた、カイアがテイトからちょっと読み書きを教わったくらいで、生物学の本が書けるようになるの?という疑問も、小説を読むと、カイアの湿地への愛と、自然への興味、学ぶことへの情熱が全編にわたってあり、自然なこととして理解できました。

カイアの心の中、心の動きなど、映画では描ききれない行間の部分が、小説ではていねいに描かれていて、自然と感情移入できました。

父への思い、母への思い

私が衝撃とともに一気に心をつかまれたのは、カイアの兄ジョディが帰ってくる場面です。映画では描かれていませんでしたが、ジョディの顔には大きく目立つ傷跡がありました。その傷跡を見てカイアはジョディだとひと目で知るのです。

そのとたん、カイアが封印していた壮絶な過去が、一気に記憶から蘇る描写は、圧巻のひとことでした。それからジョディによって明かされる、母のその後の人生も衝撃的でした。

しかし、どんなにひどい父親であっても、カイアが「ボートの乗り方を教えてくれた」と完全には憎んでいないことが意外でした。親を憎むことは、自分の存在を否定することだからかもしれない、と思いました。

一方カイアは、あれほど愛していた母親に対し「それでも迎えに来ることはできたはずだ」と批判の姿勢をくずしませんでした。しかしその後、カイアは母と同じ恐怖を味わったことで、初めて母が逃げざるを得なかったことを理解したのです。

殺意の芽生え

私はミステリーで一番大事なのは「動機」だと思っています。どんなにストーリーがおもしろくても、動機が弱いと共感できないから。その点、この作品は動機の描写もみごとでした。

カイアは、チェイスに追われ、抵抗できないほどの暴力を受けて、初めて母が味わった恐怖を理解します。その後、交尾をしかけてきたオスのカマキリを受け入れつつ、頭から食いちぎるメスのカマキリを目にして、カイアに初めて殺意が生まれたのでした。

***

もちろん、アメリカ南部の自然、ジャンピン夫婦との交流、人道的な弁護士トム・ミルトン、テイトの支えと愛情など、本作の魅力はたくさんあるのですが、ちょっと違った角度から感想を書いてみました。

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三島の定宿だった下田のホテル

2023年11月26日 | 日々のこと

作家の平野啓一郎さんのファンで、平野さんからのメールレターを読むのを楽しみにしています。11月24日に届いたメールレターに、三島由紀夫の定宿だった下田のホテルのことが書かれていて、思わず目を留めました。

ちなみに平野さんは小説の他に、三島由紀夫研究でも知られていて、2023年4月には大作「三島由紀夫論」を刊行されています。(表紙は、三島由紀夫の新潮文庫のデザイン!) 恐れ多いですが私も三島は好きな作家です。

三島のことですから、定宿はきっと老舗の日本旅館だろうと想像していたところ、なんと私たちが2か月前に宿泊した下田の東急ホテルだということです。(下田の東急ホテルに宿泊した時の記事をリンクします。写真は再掲ですが、その時撮ったものです。)

南伊豆 ビートリゾートの休日 & シュノーケリングを楽しむ (2023-09-18)

11月21日は、下田で三島由紀夫と海についての講演をしてきました。
三島は、1964年から亡くなる1970年まで、毎年夏に1ヵ月間、下田の東急ホテルに家族と滞在していました。(平野さんのメールレターより)

僕は、三島が執筆部屋に使っていた503号室に今回宿泊しました。(同メールレターより)

私たちが宿泊したのもたしか5階だったと記憶していますが、部屋番号までは覚えていなくて。でも503号室ではなかった気がします。次回宿泊する機会があったら、503号室に宿泊してみたいです。(内装は当時とまったく変わっているそうですが)

三島が日光浴をしたプールを見て(彼はカナヅチでした)、ビーチに降りてゆく階段も歩いてみました。(同メールレターより)

三島もこのプールサイドですごし、ビーチに降りていく階段を下りていったんだなーと思うと感慨深いです。

平野さんのインスタグラムを見たところ、このホテル、平野さん原作のNHKドラマ「空白を満たしなさい」(私は原作は読んでいますがドラマは未見) のロケ地にもなっていたとか。平野さん自身もご存知なかったそうです。^^

思いがけない偶然でしたが、このホテルに特別な思いを抱きました。

***

話はがらりと変わりますが、この秋に購入したコスメの話です。

ADDICTIONでアイシャドウを2色購入しました。左は Tamarindo Beach という色でほんのりピンクがかったブラウンです。タマリンド・ビーチというのはコスタリカにあるビーチだそうですが、そのビーチの砂の色に似ているのでしょうか。

右は Cassis という色で、ボルドーのような紫がかったピンク色。どちらも秋~冬にぴったりの色でとってもお気に入りです。

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GOOD MORNING CAFE & GRILL &愛宕山散策

2023年11月25日 | グルメ

11月初めのある休日、虎ノ門ヒルズの目の前にある GOOD MORNING CAFE & GRILL (以下GMC) にお昼を食べに行きました。

GMCは本店が千駄ヶ谷にあった頃、当時通っていた大学の社会人クラスの友人たちとよく行ったお気に入りのお店。クワトロフォルマッジとはちみつのピッツァというものを、初めて知ったのもこのお店でした。

虎ノ門のお店は車で前を通るたびに気になっていました。空きスペースに建てられたコンテナ造りのお店で、ずっと仮店舗だと思っているうちにいつの間にか10年ちかく経っていました。テラス席があり、休日のブランチやランチをのんびり楽しむのにぴったりの雰囲気です。

ランチメニューから私が選んだのはパスタのセット。食事の前にコンソメスープと、カポナータ、フリッタータ (イタリア風オムレツ)、きのこのオイル煮などの前菜盛り合わせ。

こちらはお店のシグネチャーメニューのグッドモーニングバーガー。グリルでぎゅっと焼き上げたパティが、シンプルながらとてもおいしい。細めに仕上げたフレンチフライもおいしくて手が止まらない。

この日のパスタは、シーフードのラグートマトスパゲティ。たたいて細かく刻んだシーフードは、ミートのラグーとはひと味違った食感でした。

食後にコーヒー (私はカフェラテ) をいただきました。ミルクのほのかな甘さが体に優しくしみわたります。

私たちは屋内の席にしましたが、壁が取り払われていて、テラス席のような解放感があるのが気持ちよかったです。

***

食事の後にすぐ近くの愛宕山まで散策しました。愛宕山は東京23区で一番高い山ですが、標高わずか25.7mです。江戸時代には眺めがよいというので浮世絵に描かれ、また日本で初めてのテレビ放送もこの山から発信されました。

虎ノ門ヒルズのレジデンス横の坂道を、のんびり10分くらい登ればそこが山頂です。^^

山頂には愛宕神社と、NHK放送博物館があります。愛宕神社は境内整備工事の真最中でしたが、お参りはできるようになっていました。境内の山茶花がきれいでした。

そして愛宕神社といえば有名なのが、出世の階段。

ひえ~っと言いたくなる急な階段ですが、ここは江戸時代に、徳川3代将軍家光公の命により馬にて階段を駆け上って梅の枝を取りに行って献上したという、曲垣平九郎 (くがき へいくろう) の故事にちなんで名づけられています。

階段を下りて見上げると、このような眺めとなっています。

この後は再び階段を上って、NHK放送博物館に寄りました。ラジオ・テレビ放送の歴史と、放送技術の変遷、昔の懐かしいテレビ番組、放送の最新技術の紹介と、無料ながらなかなか見応えがありました。

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ノッティングヒルの恋人 / サタデー・ナイト・フィーバー

2023年11月23日 | 映画

配信で、久しぶりに再見した2作品です。

ノッティングヒルの恋人 (Notting Hill) 1999

この映画は、公開時にアメリカの劇場で見て、その後日本のテレビで偶然見て、今回見るのが3度目でしたが、何度見てもおもしろい。そして最後の記者会見の場面では、何度見ても号泣してしまいます。序盤で、スパイクがTシャツ着て階段を下りてくるところから

オチがわかっているのに、にやにやが止まらない。アナの I am just a girl. は、いつか使いたいと思いながら、いまだに使うチャンスがない。ヒューが Horse & Hound を持ち出す度に笑い転げてしまう。それもこれも、リチャード・カーティスの脚本がすばらしいから。

主演のジュリア・ロバーツとヒュー・グラントはじめ、登場人物がみな魅力的で、ノッティング・ヒルという舞台が魅力的で、そして何よりエルヴィス・コステロの「She」が魅力的。私にはエターナル・ベストというべき、大好きな作品です。

サタデー・ナイト・フィーバー (Saturday Night Fever) 1977

公開時に劇場で見て以来の再見です。当時はビージーズの音楽とトラボルタのダンスばかりが印象に残っていましたが、年を重ね、経験を重ねた今改めて見ると、さまざまな気づきがありました。以下思いつくままに書いていきます。

ウエストサイド物語 (1961) へのオマージュ

ブルックリンの空撮からはじまるオープニング、プエルトリコ移民との確執など「ウエストサイド物語」を彷彿とさせる場面がいくつもありました。主人公の名前も同じくトニー。トニーは悪友たちとつきあっていますが、実はまじめで、頭がきれる青年です。

トニーが恋をするステファニーは、これまでトニーの周りにいた女性たちとはまったく違うタイプ。彼女の白いドレスは、ウエストサイドのマリアを彷彿とさせました。名前がマリアではないのは、上昇志向の強いステファニーが、自分のステップアップのために

有力者の愛人となっているからと理解しました。ステファニーの鼻持ちならない自慢話の数々は、実は劣等感の裏返しなのでしょう。でもトニーは彼女と出会ったことで、これまでの生き方を変える決心をするのです。

トニーの部屋と、狼たちの午後

ファラ・フォーセット、ブルース・リーなど、当時のスターたちのポスターが懐かしい。アル・パチーノに似ていると言われたトニーは、自室のアル・パチーノのポスターに向かって、似ているかな?と自問します。

そのあとの「アッティカ!アッティカ!」(映画ではアディゴ!アディゴ!と聞こえる) というセリフは、映画「狼たちの午後」(Dog Day Afternoon・1975) の一場面ですが、これも映画を見たからこそ、わかったことです。

イタリア系移民と、ブルックリンの今むかし

ブルックリンに住むイタリア系移民の物語といって思い出すのは、シェールの「月の輝く夜に」(Moonstruck・1987)。月の輝く~はイタリア系らしい大家族の心温まる物語でしたが、本作のトニーを取り巻く環境はあまり芳しいとはいえません。

口うるさく、いがみあってばかりの両親。お世辞にも素行がいいとはいえない友人たち。勤務先のペンキ店では仕事ぶりを評価されているけれど、長年働いたところでいいことなんてひとつもない。先の見えない閉塞感の中で、トニーが唯一誇れるものがダンスでした。

当時、白人といっても下層に位置していたイタリア系は、マンハッタンではなく下町のブルックリンに住んでいましたが、そのブルックリンも今は様変わりしています。マンハッタンの家賃の高騰により、ソーホーに住んでいたアーティストたちが

家賃の安いブルックリンに移り住むようになったのを機に、今ではすっかり人気のおしゃれエリアに。2015年の映画「マイ・インターン」(The Intern) ではアン・ハサウェイ演じるイーコマースの社長が、ブルックリンのれんが造りの倉庫をオフィスにしています。

***

人種差別、性差別、格差、暴力など、当時の社会問題 (と認識されていたかどうかわかりませんが) が生々しく描かれていて、単なるディスコ映画ではなかったことを、今さらながら知りました。それだけでも見る価値のある作品でした。

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