だいぶ間が空いてしまいましたが、昨年11月に訪れた島根旅行記の続きです。久しぶりなので、これまでの2記事をリンクしておきます。
旅行2日目は、島根県安来市にある 足立美術館 を訪れました。2012年に赤瀬川原平さんの「個人美術館の愉しみ」を読んで以来、ずっと行きたいと願っていた憧れの美術館です。松江駅からJR山陰本線に乗って安来駅へ。駅前から美術館行きのシャトルバスが出ています。
美しい紅葉に迎えられて
足立美術館は安来出身の実業家、足立全康 (あだちぜんこう) 氏が1970年に創設した美術館です。横山大観の日本最大のコレクション (約130点) をはじめ、竹内栖鳳、河合玉堂らの日本画、北大路廬山人の陶芸など約1,500点を所蔵していますが
もうひとつの見どころは、なんといっても5万坪に及ぶみごとな日本庭園です。
中根金作氏が作庭し、足立氏が日本中から岩や松などを探し集めたという庭園は、枯山水庭、白砂青松庭、苔庭など6つのテーマに分かれています。毎日専属の庭師と美術館スタッフによってメンテナンスがなされ、常に完璧な状態が維持されています。
そしてこの庭園が、アメリカの日本庭園専門雑誌 Sukiya living : the journal of Japanese gardening が毎年発表しているランキングで、2003年から19年連続日本一に選出されているということです。
歴史的な価値や知名度ではなく、美術館が所蔵する芸術作品と日本庭園との調和、庭園も美術作品の一部であるという美術館の姿勢が、海外の研究者から理解され、評価されていることがすばらしいと思いました。
苔庭。赤松は山の斜面に生えていたのと同じ状態で、斜めに植栽されているそうです。
枯山水庭。美術館の主庭です。
すでに写真では何度も見ていましたが、実際にこの場に立つと、借景も含め精密に計算された完璧な風景に、圧倒される思いでした。美術館はこの借景を維持するために、周囲の山林も購入しているということです。
横の角度から。
建物の窓枠から見ると、そのまま額縁にふちどられた風景のようになっているのが、心憎い演出です。
坪庭。苔の緑と白砂のコントラストの美しさに目を奪われました。
喫茶室「大観」に面した池庭。お庭を見ながら優雅な気分でいただく島根和牛のビーフカレーは格別でした。
季節にあわせて展示されるコレクションの数々もみごとでした。この時はちょうど秋季特別展が開催されていて、横山大観画伯の「紅葉」が、やはり心に残りました。