ワサビ平小屋を出発して暫くすると、小池新道はゴーロ状の弓折尾根に入る。ゴーロといっても、
登山道はよく整備されていて歩き易い。特に道に迷う様な箇所もない。
弓折尾根を登る間、雨は間断なく降り続いていた。体力を消耗しない様に小刻みに休憩をとり、
汗で失われた水分を補給する様に心がける。とても落ち着いて食事をする気にはなれない。
食べたのはロールパン一個だけだ。
午後一時にシシウドガ原に到着。この頃より雨足は弱まり、視界も良好になってきた。左に大ノマ岳が見える。
ここで後方から登ってきた単独行の女性と合流する。
予定が遅れているので今夜は私達と同じ、鏡平山荘に泊まるとのことで意気投合する。
これより一時間半ほど登って、ようやく雨も小降りになってきた鏡池に到着した。
信じられない! ガスは全く無い。目の前に槍や穂高が堂々と姿を現しているではないか。
小雨の残る鏡池に到着
東の空が少し明るくなってきた
とりあえず鏡平山荘に入り、雨具を脱いでくつろぐことにする。
しかし最近の雨具はよくできていて思ったほど衣類は濡れていない。
汗で湿っている程度だ。改めて技術の進歩に気付く。
衣類を着替えてまず何はともあれ

だ。ここまでの健闘にカンパーイ
土曜日にしては宿泊する人は少ない。大雨予想でキャンセルする人が多かった様だ。
寝る場所に案内してもらったが、3人用のスペースを2人で自由に使ってよいとのこと、
雨で得をすることもあるもんだ。
午後4時頃、雨がほとんど止んだので、鏡池に戻ってみる。
池は名前の通り「鏡」の状態を取り戻していた。名物の逆さ槍が見えている。
左から南岳・大キレット・北穂高岳・涸沢岳・奥穂高岳・ジャンダルム・木に隠れている部分に天狗の頭
・一番右に間ノ岳さらに右には西穂高岳も見えたがこの写真には写っていない
北穂高岳・涸沢岳・奥穂高岳・ジャンダルム・・・穂高連峰の核心部が一望できる豪華さ
北アルプスの盟主、槍ヶ岳・・・何処から見ても美しいその姿に魅かれる
小屋の前で槍ヶ岳を見上げる女房、二年前に登った時のことを想いだしていた。
午後五時「食事の用意ができました」という放送があり食堂に集まる。
普段なら混み合う山小屋の食堂も今日は空いている。入れ替えがないのでゆっくり7時まで同席の人達との
登山談義に花が咲き、

がはかどる。
今日一日「雨が降って厭だった」とか」「辛かった」とか昼間の雨の話をする人はここには居ない。
皆が分かっていることなのだ。そしてこの時間、ここに居る皆が幸せだった。
ところで、この小屋の食道は珍しく椅子がない。それがかえって家庭的なくつろぎを与えてくれるようだ。
ディナープレートに載った多国籍料理?もおいしい。一昔前の「食べられたらいい」という山小屋の夕食とは
隔世の感がある。
午後7時過ぎまで同席の人たちと飲みながら経験を交流したり、雑談を楽しみ
午後8時前、明日の天気を祈りながら就寝する。
続きはまた明日