初夏の頃、河原でよく見かけるイヌコモチナデシコの花です。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、秋に芽生え越冬して5~6月に花を咲かせます。
よく似た植物にコモチナデシコがありますが、数の上ではイヌコモチナデシコが
圧倒的に多いので、これも多分そちらの方ではないかと思われます。
図鑑などの解説では、葉の基部が合着した部分がコモチナデシコと比べ長いと記されて
いますが、基準となる長さには言及されていませんでした。
木津川河川敷で、かなり水分条件の悪い砂礫の上にも生えているところを見ると
かなり乾燥には強い性質を持っているようです。
ピンク色の目立つ色をした可愛い花ですが、開花時間が短く、午前中を外すと
綺麗に開花した状態では見られません。
イヌコモチナデシコ <ナデシコ科 イヌコモチナデシコ属>
この花の花弁は5枚あり、雄蕊は10個で、濃い紫色の花糸が合着して筒状になった上部の内側に
黄色い葯が見えています。
果実は10月頃に黄色く熟し、葉が落ちた後も枝に残ります。生薬で整腸薬などに使われますが、
「毒をもって毒を制する」類、基本的には有毒で、生の果実7~8個で致死量に達するとも言われています。
食べるのは避けるべきでしょう。
諺にある「栴檀は双葉より芳し」の栴檀はインドネシアから東南アジア原産の香木、白檀(ビャクダン)の
中国名で、本種とは全く別の植物です。
近くに居ても”香り”と言えるほどのものが無いこの植物に「センダン」の名前が付けられた背景は
よく分かりませんが、葉はアメリカセンダングサによく似ています。
センダン <センダン科 センダン属>



マンネングサという名前から多年草を連想してしまいそうですが、秋に芽を出して越年し
初夏に花を咲かせて終わる2年草です。
同属のツルマンネングサに比べると花の付き方は疎らで、全体が柔らかく弱弱しい印象です。
花は7~8㍉の黄色い星型で、小さいながらも目立ちますが、結実せず種も作りません。
この役に立たない花に代わって、繁殖を担っているのが、葉腋に付く珠芽(むかご)で、
和名の「子持ち万年草」は、この珠芽をつけることに由来しています。
花壇などに生えたものを取り除く場合、葉は多肉質のため、根は浅くて抜きやすい反面、
この珠芽が落下してすぐに根を出し、新しい個体を形成するので結構やっかいです。
コモチマンネングサ <ベンケイソウ科 キリンソウ属>
「アザミの同定は難しいが、春咲きのアザミはノアザミだけなので、間違えることはない」
花仲間の間でよく聞くセリフですが、これは川の土手などでよく見かける春咲きでアザミによく似た花です。
たしかに本種もアザミ属ではないので、この説は正しいと言えるかも知れません。
古い時代に稲作の伝来と共に大陸から渡来した史前帰化植物と考えられていますが
花の姿がアザミに似ていて、騙されることからキツネの名が冠されています。
ノアザミに見られるような葉の先端の鋭い棘などはなく、若葉は餅に入れて食べるなど、
山菜としてよく利用されます。
キツネアザミ <キク科 キツネアザミ属>
路傍や荒れ地に自生するナデシコ科の帰化植物です。原産地はヨーロッパで、日本への渡来は
19世紀中頃と古いのですが、日本語の名前は付けられていません。
マンテマは渡来持の名前”マンテマン”が訛ったものと言われていますが、よくは分かりません。
花弁の中央が紅紫色のマンテマに比べると目立ちませんが、自生しているのは圧倒的に本種の方が
多いようです。(学名上はシロバナマンテマが母種とされています)
茎の上部から花の萼部分にかけて多数、腺毛があり粘液が分泌されているので指で触れるとかなり
ネバネバしています。
これは比較的水分条件の悪い環境を好んで生えるため、乾燥に耐える特殊な機能を備えているのでは
ないかと思われます。
葉は下部では先端が丸くスプーン形ですが、上部の葉は先端が尖っています。
シロバナマンテマ <ナデシコ科 マンテマ属>
私の住んでいる京都府の南部地域には少ない木ですが、日当たりのよい山地で稀に見られます。
5~6月に白色または淡紅色のリンゴによく似た花を咲かせます。
果実は6~10㍉で赤く熟し、食べられるそうですが、名前からすると多分かなり酸っぱい
に違いありません。リキュールなどにして楽しむのがいいでしょう。
ズミ <バラ科 リンゴ属> 別名コリンゴ、コナシ、ミツバカイドウ
ジャケツイバラは日当たりの良い山の斜面などに生えるマメ科の蔓性植物です。
茎や葉の基部に多数の鉤型をした棘を持つため、藪漕ぎをする時など、衣服が引っかかると
状況からの脱出が非常に困難な植物です。(サルトリイバラどころではありません)
5~6月に鮮やかな黄色の美しい花を咲かせますが、花弁は5個で後方の1個には赤い筋があります。
雄蕊は10個あり、赤色で下部に縮れた毛が付きます。
和名のジャケツイバラは、漢字表記で「蛇結茨」、蛇が絡み合った姿で、茨のような棘を持つことから
ジャケツイバラ <マメ科 ジャケツイバラ属> 落葉蔓性
人里の近くでよく見られるシソ科の多年草です。ちょうど今頃、園芸種のセイヨウジュウニヒトエに似た
花が咲きますが、よく似た花を咲かせるニシキゴロモというのがあります。
ここでは、見分ける1つのポイントとして、両者の葉の違いを観察してみました。
キランソウ <シソ科 キランソウ属>
これがキランソウの葉ですが、全体に縮れた毛がはっきりと見られ、縁にはあらい鋸歯があります。
花に近い上部の葉が小型で縮んでいることと、ニシキゴロモでは見られる葉脈の赤紫色もキランソウでは
それほど目立ちません。葉全体はニシキゴロモと比べ、やや不規則な形をしています。
こちらはニシキゴロモの葉です。全体に細毛がみられますが、キランソウほど目立ちません。
全体の形や鈍い鋸歯も規則的で整った雰囲気です。葉脈の赤紫色もくっきりしていて、葉だけ
をとらえれば、こちらの方が美しいかも知れません。
やや湿り気のある山道の路傍や、林下でよく見かける植物ですが、
ヨーロッパからアジア大陸にかけての温帯に広く分布するイネ科の多年草です。
和名は小穂の形を米粒に見立てたものです。
”花”と呼ぶには少し地味かもしれませんが、下向きに行儀よく並んだ姿が可愛く、
造形的に面白いことから鉢植えなどで楽しむ人も多いようです。
普通、イネ科の植物はよく似たものが多くて同定が難しいのですが、このコメガヤには
これといった類似品種も見られないので、比較的分かり易いと思います。
コメガヤ <イネ科 コメガヤ属> 別名スズメノコメ
清楚な雰囲気のある花ですが名前がどうもいけません。
キイチゴの仲間ですが、あまりポピュラーな品種ではないようで、私の愛用している図鑑、山渓の「日本の樹木」には
掲載されていません。
何故コジキイチゴ(乞食苺)などという、如何にも不味そうな名前で呼ばれる様になったのかは諸説あるようですが、
夏に熟す果実(1枚目画像の左下)の中が空洞になっていて、弥生時代に蒸し器として使われた土器のこしき(甑)に
似ていることが語源で、そこから転訛してコシキイチゴ(甑苺)→コジキイチゴ(乞食苺)になったとする説が有力です。
しかしそれにしては語呂が悪すぎますね。コシキ(甑)とコジキ(乞食)じゃ大違いです。
このコジキイチゴは、2枚目の画像に見られるように、茎や枝全体に暗紫色の固い細毛状の棘が密生していているので
触る時には注意が必要です。
コジキイチゴ <バラ科 キイチゴ属>
かなり以前のことですが、「たんぽぽ戦争」という言葉が新聞紙上を賑わしたことがありました。
帰化植物のセイヨウタンポポが都市周辺を中心に分布を広げ、カントウタンポポなどの日本の在来種タンポポが
しだいに駆逐され姿を消しつつあることを危惧したものです。
しかし、これによく似た現象が今、カタバミの世界でも起きています。
画像の植物は一見、普通のカタバミのように見えますが、在来種のカタバミのように地面を這うのではなく、
地面から茎が20~30㌢立ち上がって花が咲いているのが見られます。
これは北アメリカ原産のオッタチカタバミで、比較的新しい帰化植物のようです。
これまであまり関心がなく、気付きませんでしたが、最近、路傍に咲いているカタバミをよく見るとほとんどが
本種のようで、私達の知らない間にカタバミ戦争が進行しているようです。
普通のカタバミは一体何処へ行ったのでしょうか?
オッタチカタバミ <カタバミ科 カタバミ属> 帰化植物 原産地北アメリカ
現在、近畿を中心にして全国的に分布を広げつつあるようです。
樹の幹をゆっくりと這っているのを見ることがあります。
なんとも奇妙な姿の昆虫ですが、名前をヨコヅナサシガメと言います。
中国原産の外来昆虫で、カメムシの仲間です。”サシガメ”とは名前が示す通り「刺すカメムシ」という意味で、
針のような口吻を蝶や蛾の幼虫の体にブスリッと突き刺し体液を吸います。
葉を食べる毛虫を主食にしているので、一応”益虫”ということになりますが、まれに蝶や蛾の幼虫ではなく、人を刺す
こともあるので注意が必要です。私は刺された経験はありませんが、刺されるとムカデの数倍も痛いそうです。
ヨコヅナサシガメ <カメムシ目(半翅目) サシガメ科>



4か月ぶりの赤坂山へ行ってきました。その様子をデジブックにまとめましたのでご覧下さい。
※ロードに少し時間がかかりますがよろしくお願いします。
カマツカの花が咲いている姿を遠くから眺めると、ガマズミなどと外観よくにていますが、ガマズミは
スイカズラ科に属し、花冠の先端が5裂した合弁花であるのに対し、このカマツカは梅や桜と同じバラ科で、
5枚の花弁が1枚づつ離れた離弁花となっている点が異なります。
和名は材があまり太くならず、他のものには使えないが、鎌の柄や槌の柄ぐらいなら使えるという意味、
また別名をウシコロシとも言いますが、これは、材に粘りがあるため、牛の鼻輪を作ったことによるものです。
丸い花弁の花や、球形の蕾には独特の可愛い雰囲気があります。
カマツカ<バラ科 カマツカ属> 別名ウシコロシ
○○ウツギと呼ばれる花木には、ウツギ(別名ウノハナ)やヒメウツギなど、ユキノシタ科に分類されるものと、
ツクバネウツギやタニウツギなどの様にスイカズラ科に分類されるものがあります。
簡単に見分けるポイントとしては、花が離弁花(花弁が1個づつ離れている花)であればユキノシタ科、
合弁花(花弁の全部、または一部が合着した花冠となっている花)であればスイカズラ科ということで良いと思います。
そこで、今日の花のツクバネウツギですが、ご覧の様に合弁花なので、これはスイカズラ科ということになります。
日当たりの良い山地で咲き始めましたが、画像を見て頂くと花冠の基部にプロペラ形の萼が5個見えています。
この萼は花後も果実の先端に付いて残り、種子が風で運ばれるのを助ける役割を果たしています。
和名は果実に萼の付いた形を、羽根衝きの追羽根に見立てたものです。
少し小ぶりの花を咲かすコツクバネウツギという種類がありますが、萼の数が2~3個と少ないことで見分けできます。
またオオツクバネウツギという種類では、萼は5個ありますが、その内の1個が極端に小さいのが特徴です。
いずれも本年枝の先に淡黄色の花を2個付けますから、花よりは萼の形を見て判断するのが確かです。
ツクバネウツギ<スイカズラ科 ツクバネウツギ属>