ヘクソカズラ(屁糞葛)とはなんとも強烈な名前を頂いたものですが、標準和名はヤイトバナのようです。
別名があまりにも強烈なので、今日では標準和名よりもこの名が普及してしまっています。
しかし、この別名も源流を辿ると、万葉時代には既に「くそかずら」と呼ばれていたようで、
万葉集に高宮王の「さう莢に 延ひおほとれるくそかずら 絶ゆることなく宮仕えせむ」の一首が
みられます。
「さう莢」は刺のあるノイバラのような灌木のことですが、その刺をも厭わず絡みついていく
ヘクソカズラのように絶えることなく宮仕えしましょう・・・という意味の一首だそうです。
宮仕えの厳しさ・・・今も昔も変わりませんね![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0199.gif)
追い打ちをかけるように「屁」が追加されたのは江戸時代のようですが、これはどうも悪ノリ?
のような気がします。
ヘクソカズラ <アカネ科 ヘクソカズラ属> 蔓性多年草
![ヘクソカズラ(果実)](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/bb/bde099e98054a0a8f6b7cd6640e23957.jpg)
さて、ところでヘクソカズラの名は悪臭がすることに由来するものですが、花などに鼻を近付けて
嗅いでみても悪臭がするわけではありません。
しかし、実際にやってみたことはありませんが、揉んだりすると不快な悪臭があるようです。
この臭いの元は、細胞に含まれるペデロシドという物質で、昆虫などの食害を受けた場合、
メルカブタンメルカプタンという揮発性のガスに分解されて悪臭を発します。
これは、この植物の天敵に対する防御機構の一種ですが、これを逆手にとって利用する
昆虫がいるというから、自然は面白いものです。
カタカナで書くと15文字と、少し長い名前ですが「ヘクソカズラヒゲナガアブラムシ」という
アブラムシの一種はヘクソカズラの汁を吸うことによってペデロシドを体内に取り込み、天敵の
テントウムシに捕食されるのを防いでいます。
また、スズメガの一種ホシホウジャクは他の蛾類との競合のないヘクソカズラを食草に
することによって食草の独占を計っていると考えられます。
何れも植物と昆虫の生きるための知恵・・・知れば知るほど不思議という他ありませんね。