畑の周辺など肥沃で日当たり良い所に普通に生えるヤブガラシです。
和名は藪を枯らしてしまうほど大繁殖することから「藪枯らし」なので、土地の管理者から
すれば除草にかなり手のかかる厄介な雑草といえます。
ヤブガラシ <ブドウ科 ヤブカラシ属>
花は小さくてあまり目立ちませんが、雌蕊の基部にある花盤と呼ばれる部分が開花すると
朱色を帯びてくるので、少し華やいだ雰囲気になります。
花弁と雄蕊はそれぞれ4個づつあり、開花後は自家受粉を避けるためか、早期に脱落します。
この花盤からは花弁や雄蕊の落下後も多量に蜜が分泌され、蜂、虻、蟻などが吸密のため
訪花しています。
先週UPしましたノササゲと花や葉の形がよく似ていますが、このヤブマメはもう少し
日当たりのよい場所を好んで生えるようです。
但し、ノササゲと同じ日陰の環境でも充分に育ちます。
花はマメ科特有の蝶形で、白をベースに旗弁の縁に淡紫色が混じる中々美しい花です。
この花は夏の終わりから秋にかけて咲く両性花で、普通に有性生殖を行い、花後は2㌢程の
豆果ができて、中に極小さな種子が数個入っています。
ところが、この花には茎の一部が地中に伸びて咲くもう一つの花、閉鎖花があります。
閉鎖花は単為生殖で自分と同じ遺伝子を持つ種子を一個だけ作りますが、ここでできる種子は
地上のものに比べ、かなり大きなものです。
地上の種子は遺伝子交換で様々な進化の可能性を秘め、新たな土地への進出を計る言わばエキスパート
の役割をはたしていますが、一方地下でできた種子はその場所での翌年の生存を保障する
種族保存の役割を担っています。
ヤブマメ <マメ科 ヤブマメ属> 蔓性1年草
イボクサは湿地に生える1年草で、特にこの時期、未だ水の残っている水田でよく見られます。
花や葉の形を見ると、同じツユクサ科のトキワツユクサに似ていますが、花の大きさは7~8㍉と
トキワツユクサに比べ、かなり小さな花です。
和名のイボクサはこの草の汁をイボに塗ると取れることによるとされていますが、実際には
そのような薬効があるとは認められていません。
茎が下部で枝分かれしてかなり増えることから、マメ科のクサネムなどと共に水田の主要な
害草の1つとされています。
イボクサ <ツユクサ科 イボクサ属> 1年草
御覧のように全く葉がついていません。
この日、この稜線で見たトリカブトのほとんどがこのような状態でした。
近づいてよく見ると、何者かによって食いちぎられたような形跡があります。
近年増え続けている鹿によって食べられた可能性が高いようですが、これまで
鹿は有毒のトリカブトやバイケイソウは決して食べないと聞かされてきたので
この現象はどうも合点がいきません。
今一つ考えられるのは、今夏の猛暑に対応して植物自身が対応して葉を落とした
のではないか?という点です。
しかしもしそうであれば、他の植物にもそういう現象が見られるはずです。
鹿が食べたのでは?というのは私だけの思い過ごしでしょうか。
兎に角、この夏の猛暑が生態系に及ぼした影響のひとつであることだけは間違い
なさそうですが・・・


水辺に生える熱帯アジア原産でイネ科の多年草。
その昔、薬用として渡来したと思われる史前帰化植物です。
ちょうど今、葉腋に多数の花穂を立てていますが、この固くて種のような形をしているのは
苞鞘(ほうしょう)と呼ばれ、葉鞘が変化したものです。
この中に雌性小穂があり、苞鞘の先からは雄性小穂が垂れ下がります。雄性小穂は早く脱落します。
その後、苞鞘は黒褐色、灰色、白色などに変化しますが、和名の「数珠玉」は、子供達がこれに
糸を通して数珠を作って遊んだことに由来するようです。
ジュズダマ <イネ科 ジュズダマ属>
鈴鹿山脈の最高峰、御池岳へ出かけました。
R306の鞍掛トンネルの近江側入り口の右側に登山者専用の無料駐車場があり、
その奥が登山口になっています。


しばらく人工林の急登が続き、高圧送電線鉄塔を過ぎて稜線に出た所が鞍掛峠、ここは
鈴ガ岳との分岐点で、左へ行けば鈴ガ岳で、鈴北岳を通って御池岳へ行くには右の道を
進みます。

鞍掛峠に祀られている地蔵尊です。

約1時間程で鈴北岳の頂上です。ここから御池岳の山頂がこんもりした形で見えています。


御池岳山頂に向かう道は高山湿地で、カルスト台地の地形には石灰岩の露岩が点在し
日本庭園のような美しい景観が見られます。
この季節、ここで見られる山野草で特に目立つのは、シロヨメナとトリカブトですが、
シロヨメナでは驚くほど大きな群落が見られます。


マンネンスギ <ヒカゲノカズラ科>







シロヨメナ <キク科 シオン属>

御池岳山頂に向かうブナ林では、鹿に樹皮を食害されたブナの樹が多く見られます

オオカメノキ <スイカズラ科 ガマズミ属>

御池岳の頂上に着きました。鈴鹿山脈の最高峰ですが、展望はあまりよくありません

展望を楽しむならボタンブチを往復するのが良いと思います。天気が良ければ
ここから鈴鹿南部の山々が一望できます。残念ながらこの日は曇りがちで展望は
今ひとつでしたが。


下山はサブコースのコグルミ谷を下ってみました。下っていくとR306へ出ますが、
出発地点の駐車場からはかなり離れる上、危険個所もありあまりお勧めできません。


コグルミ谷を下山中に出逢ったシマリス君です

里山を歩いていると、道端の藪で他の草に蔓を絡めているのがよく観察されます。
マメ科の蔓性多年草でノササゲといいます。
画像のものは花が咲く前の蕾の状態で、この後、先端が少し蝶形に開きますが
他のマメ科植物ほど目立つ咲き方はしません。
10月の中旬に豆果が美しい紫色に熟しますが、藪の中なので気付くことは稀です。
ノササゲ <マメ科 ノササゲ属>
この画像は一昨年の10月中旬のものですが、豆果の鞘は熟するとこのような美しい紫色になります。
果実に長い髭が生えたようで、躍動感のある中々面白い形ををした実ですが、
キンポウゲ科のセンニンソウの果実です。
長い髭は宿存する花柱が伸びて羽毛状になったものです。
センニンソウの名前の由来について「意味は不明」と記されている図鑑が多いようですが
英名の1つに"Old Man's Beard "(お爺さんの顎鬚)というのがあります。
日本語のセンニンソウも同じ発想だとすれば、恐らくはこの果実の髭を
仙人の髭に見立てたものと解釈できるのではないでしょうか。
ただ「お爺さん」とせずに「仙人」としたところが如何にも日本人的ですね。
センニンソウ <キンポウゲ科 センニンソウ属> 有毒植物
随分立派な名前が付けられていますが、別に取り立てていうほど目立つ花ではありません。
主に山地で中湿状態の草藪に他の草に混じって生えています。
和名は小さな黄色い花が穂状に並ぶ姿を結婚式などで祝いの品に付ける
豪華な金色の水引きに見立てたものです。
花の大きさは6~10㍉ぐらい、近づいて見るといかにも桜などと同じ
バラ科の花らしい雰囲気があります。
花が終わった後にできる果実は円錐形で、上縁に3㍉ほどの棘があり、
動物の毛や人の衣服にひっ付くことによって拡散する「ひっつき虫」です。
キンミズヒキ <バラ科 キンミズヒキ属> 多年草
これがキンミズヒキの果実、衣服にひっつきます
このホシホウジャクは昼間に飛びまわるスズメガの仲間で、吸密する時には花に止まることなく
ハチドリのようにホバリングしながら長い口を伸ばして吸密する特技をもっています。
一つの花で吸密する時間は、平均2秒位なので撮影するにはタイミングを上手く合わせる
必要があります。
主に都市の住宅街の花壇などで見られる普通種で、幼虫の食草はヘクソカズラ、
黄色で太い胴体や高速で羽ばたく姿は蜂に似せた擬態のようにも見えます。
ホシホウジャク <スズメガ科 ホウジャク亜科>



山林内の人に踏まれない道端でよく目にするキク科の多年草で、上部の葉の基部から出た
短い花柄の先に舌状花のない筒状花だけの花を下向きに付けます。
和名は「雁首草」で、その姿がちょうど煙管の雁首に似ているところからのようです。
しかしこの花の形や咲き方を見ていると生殖に必要な花粉を媒介してくれる昆虫を
誘引する上で有利だとはとても思えません。言わば看板のないお店のようなもの?
ボロギクなどに見られるセセリチョウなどの来訪もないようですし、何か他に花粉の媒介者が
いるのでしょうか?
美しい花とは言えませんが、この花の謎に満ちた咲き方には興味深いものがあります。
ガンクビソウ <キク科 ガンクビソウ属>
こちらは近似種のサジガンクビソウ。撮影のため花を指で起こしていますが、実際はこちらの花は
極端に下を向いていて、目線からは花の姿は全く見えません。花は一回り大きく扁平で、
煙管というよりパイプの雰囲気、花柄は長く10~15㎝で2~3枚ほど葉が付いています。
山野の日当たりのよい開けた場所に生えるマメ科の植物です。
見たところ同じマメ科の多年草、ハギの仲間のような雰囲気がありますが、こちらは1年草のため
ヤハズソウ属という別属に分類されています。
茎は立ち上がりますが、高さは10~20㌢ほどなので、成長競争の激しい草地では生きられず、
他の草本の生えにくい貧栄養の場所に小さな群落を作って生えています。
ヤハズソウ <マメ科 ヤハズソウ属> 1年草
草丈が低いため、他の植物との競合の激しい草地を避けた場所に群生します
葉脈が主脈から平行に出ているため、先端を摘まんで引っ張ると矢筈形に千切れます
これがヤハズソウの和名の由来になっているそうです
葉は長倒卵形の3小葉を持つ複葉で、葉の腋に小さな淡紅色の蝶形花をつけます
里山のあちこちにヒヨドリジョウゴの白い花が見られるようになりました。
花冠は1㌢弱と少し小さ目の花ですが、5裂した花弁が後に大きく反りかえっていて
中々面白い形をしています。
秋深くになって、果実が真っ赤に熟すと、途端に人目につくようになりますが、今咲いている
花は御覧のように小さくて色も地味なものです。
この果実は液果でソラニンという有毒物質を含みます。
ヒヨドリジョウゴの名前について、図鑑などの説明では「ヒヨドリがこの果実を好んで食べる」
などと記されているようですが、目撃例があまりないので疑問視する人も多いようです。
私も実際にヒヨドリがこの果実に群がっている姿は見たことがありません。
むしろこの時期はセンダンの樹の果実が熟するころなので、ヒヨドリの群はそちらに大挙して
押し寄せているようです。
センダンの果実にも哺乳動物が食べると10個位で致死量に達するほどの強力な有毒物質が
ありますが、ヒヨドリには全く無害のようです。
ヒヨドリジョウゴ <ナス科 ナス属> 蔓性多年草 全草有毒
花筒の入り口付近には緑色の斑紋があって、周りを囲むように円形に並んでいます。
合わさった形の雄蕊が花柱を取り囲み、花柱は大きく突出することで自家受粉を避けています。
平地の道端や空き地に生える北米原産、ナス科の帰化植物で淡紫色の花弁に黄色い雄蕊が
アクセントになった中々美しい花です。
しかし、”ワルナスビ”の名前でも分かるように、これが中々の曲者で、不用意に抜き取ろうと
して掴むと、茎や葉の両面などに生える固くて鋭い棘が手に刺さり痛い目に遭います。
刈り取りをする場合も、皮手袋などで手を保護する必要がありそうです
繁殖力が極めて強く、畑地などに侵入すると地下茎で繁殖するため根絶は困難です。
ある程度肥沃な土地を好むのか、河原などの砂礫の所や荒れ地では見られないようです。
ワルナスビ <ナス科 ナス属> 帰化植物・多年性 全草有毒
この可憐な姿からは想像もできない厄介者
茎には短い間隔で棘が螺旋状に並びます
葉の棘は主脈上に2~3本あります
葉の裏側も表と同様、主脈上に棘があります
日当たりのよい山の麓に生えるマメ科の多年草です。
和名は花が小豆に似ていることから、野原の小豆という意味でノアズキと呼ばれています。
しかしこの植物自体は農作物のアズキ(小豆)とは全くの別属で、アズキの原種はこのノアズキと
花の形がよく似たヤブツルアズキだそうです。
ノアズキとヤブツルアズキは、花の形だけではほとんど見分けが付きませんが、葉が1~3センチ位で
菱形をしていればノアズキ、3~10㎝で長卵形ならヤブツルアズキというのが見分ける上での
重用なポイントです。
別名のヒメクズは、葉がクズ(葛)に似て小さいことに由来します。
ノアズキ <マメ科 ノアズキ属> 別名 ヒメクズ
今日のような日差しの強い日には、葉を立てることで対応します。
花弁の構成は、旗弁と翼弁が左右に1枚づつ、雄蕊や雌蕊を包む竜骨弁が1枚で
他のマメ科植物と大きな違いはありませんが、竜骨弁を中心に全体を右に捻じったような
非対称の面白い形をしています。
左の翼弁は竜骨弁に覆い被さり、右の翼弁は前方へ付き出します。